第85話 なんか、後味が悪いな
「それでね、さっきの話。私、ラセンが元気ないのが気になってるんだ」
「ご、ごめんね……心配かけて」
ラセンがしゅんと下を向いた。
「それは全然いいんだけど……。もし、私たちでラセンの力になれることがあるなら、言ってほしくてさ」
ラセンが唇に人差し指を当てて、しばらく考えこむ。
そして――
「ふ、ふたりに友達って言ってもらえただけで、ちょっと元気になったかも……」
ラセンは私たちに向けてほほ笑んだ。けどすぐに、何かを思い出したように言う。
「あっ。でも、それなら――」
食後のドリンクを片手に、私は高らかに宣言した。
「第七回、目指せ王都! 止めろ王様! 作戦会議!」
ぱちぱちぱちと、乾いた拍手が鳴る。
「さて、今日の議題ですが、この街でやりたいことがあります。茉歩瑠さん、どうぞ。――はい、それは魔力回復料理の研究です」
サビーがずぞぞぞ……とストローを吸った。
ラセンはにこにこと私を見ている。
「ラセンさんたっての願い、デバフ効果のない魔力回復料理。その完成に向けて、お時間をいただきたいのです! ……というわけで、明日から別行動にしたいんだけど」
「俺はいいぜ。毎回ラセンがぶっ倒れるのは困るしな」
「ぜひ、お願い!」
ラセンがすごい目力で私を見る。
「私も、魔力回復料理を早く完成させなきゃって思ってたからね。頑張るよ!」
◇
翌日。
私は宿の部屋で、さっそく研究を始めていた。
「まずは、現状の確認からだよね」
ラムネを一粒つまんで、口に放り込む。
一瞬、体が内側から熱くなるような感覚があり、すぐに収まる。
バフが吸収されるせいか、疲労のデバフも感じない。体にも、特に異変はなさそう。
さらに、もう何粒か食べてみる。……ん?
「なんか、後味が悪いな」
前に試食したときには気づかなかったけど、一度にたくさん食べると、口の中に少しえぐみが残る。
これ、どこかで覚えがある……。
あー、ごぼうとか山菜とか、ちゃんと下処理しないと残る、あの感じだ。
食材辞典を開き、宇創樹の根を調べる。
「宇創樹の根。魔法の効果を高める、精神的負担大。……ほかには何も書いてないよなー」
食材辞典とにらめっこしていると、ぱたぱたとステッキが飛んできた。そして、横から開いたページをのぞき込む。
「どうかしたのか?」
「なんかね、ラムネを一度にたくさん食べると、えぐみを感じるんだよね。リン仁豆腐ではそんなことなかったから、宇創樹の根が原因かと思って調べたんだけど……何も書いてなくて」
「俺も食材の知識はないからな。ここに書かれていること以外はわからないな」
「うーん」
それから数日間、私とステッキは市場に行ったり、まんぷく号で試作品を作ったりして、ラセンのために魔力回復料理の研究に明け暮れた。




