第73話 うわぁ、やり方……
ニセ盗賊たちは別のトカゲたちと剣を交えている。けれど、押され気味で状況はよくない。
サビーはサーベルをぎりぎりでかわしながら、拳で盾を砕く。
ラセンも、ラムネを噛み砕きながら氷魔法の詠唱を続けている。その顔には疲れがにじんでいる。
いくらサビーの持久力をバフで上げているとはいえ、このまま持久戦になれば分が悪い。
私がさっき、まんぷく号の戸棚から取り出したのは、〝ドエリナチップス〟。
ドエリナをスライスして、油で揚げたもの。
ぱりぱりのチップス状にしてあるから食べやすいし、すぐに効果が現れる。
まだ試作品だけど、これをみんなに食べさせれば、体力を回復できるはず。
でも、私の足じゃ戦っているみんなに配って回れない。
かといって、ここまで取りに来てもらう余裕もない。
どうしよう……。
私は、袋に入ったチップスを見つめた。
「それを、みなに食べさせたいのですか?」
そう言って、横から袋をのぞき込んできた影が……って!
いつのまにか、私の隣にあの忍者が立っていた!
「貸してください。私がみなに配ってきましょう」
あっけに取られている私の手からチップスの袋をさらうと、彼女はすぐに駆け出した。
まずはサビーのところへ行き、問答無用でチップスを口に押し込む。
続けてニセ盗賊たちの口にも、強制的に詰め込んでく。
うわぁ、やり方……。
最後はラセン。
ラセンは詠唱しながら、ぶんぶんと首を横に振る。
さすがの忍者も、詠唱中の口に突っ込むのはまずいと思ったのか、いったん手を止めた。
「フリーズ・バインド! んがっ!」
けれど、詠唱が終わった瞬間、ラセンの口にチップスを押し込んだ。
配るって、そういう意味じゃないんだけど……。
けれど、そこから戦況は一気にこちらに傾いた。
体力を取り戻したみんなが、魔物たちを次々と倒していく。
最後に残った二匹はじりじりと後退し、そのまま暗闇の中へ消えていった。
「終わったぁ!」
サビーが叫んで、地面に大の字で倒れ込んだ。
男たちもその場にへたり込む。
ラセンは切り株に腰を下ろし、ぐったりとうなだれている。
忍者は……あれ? 忍者は?
気づけば、彼女の姿はもうどこにもなかった。
お礼、言いたかったのに……。
白み始めた空へ、まんぷく号から立ちのぼる湯気がふわりと消えていく。
私はみんなのために、朝食を作っていた。
メニューは、ドエリナおじや。
徹夜明けのお腹にも優しくて、体力回復効果もばっちり!
最後に美味しくなる呪文をかけて、お椀によそっていく。
「うまい! お前たち、いっつもこんなにうまいもん食ってるのか?」
ニセ盗賊のひとりが至福の顔でおじやをすする。
「茉歩瑠の飯はめちゃくちゃうまいんだぜ! うらやましいだろ?」
お世辞抜きで言い切るサビーの言葉が、ちょっとくすぐったい。
「お、おいしい……」
ラセンは両手でお椀を持ち、ちびちびとおじやをすすった。
ごめんね、ラセン。宇創樹の根のデバフがあるもんね……。
帰りはまんぷく号の荷台で寝てていいからね。




