第66話 完全に江戸時代じゃん……
「忍者? なんだそりゃ?」
朝ご飯を食べながら、私は二人に昨夜あったことを説明した。
「ご、ごめんね……。全然気づかなかった……」
「ううん。私もなんともなかったし、大丈夫だよ」
サビーがパンを食いちぎりながら、呆れた視線を向けてくる。
「『なんともなかったし』って、お前、地面でしびれてたじゃねぇか」
「あ、あれは、自分で作ったデバフ料理のせいだから!」
ステッキがぱたぱたと飛びながら、警戒するように私の周りをくるくる回る。
「なんにしても、このパーティーが誰かに見張られていたのは確かだ。油断はできないぞ」
「そうだよね。それにあの人、まんぷく号のことを『変な荷車』って言ってたし。やっぱり目立つよね、これ」
かまどから湯気を上げるまんぷく号を見る。
パンを飲み込んだサビーが口を開く。
「だけどよ、そいつ、『危険はないって報告する』って言ってたんだろ? なら、大丈夫じゃないか?」
「まんぷく号はね。だけど私は妖術使いだから、監視は続けるんだって。今もどこからか見られてるかと思うと、落ち着かないよ」
つい、あたりをきょろきょろと見回してしまう。
「け、けど、突然攻撃される……とかじゃないんだよね? キメラのこともあるし……い、いままでどおり、警戒しながらで、いいんじゃないかな?」
ラセンはそう言いながらも、背後を気にした。
「うん。ただ、野営のときはもうちょっと警戒したほうがいいかも。これからはできるだけ、ひとりにならないようにしようよ」
「う、うん……。私も、寝るときは枕元にラムネを置いておくよ」
「そうだな。特に、茉歩瑠が変な料理を作ってるときは注意だな!」
「そこ!?」
でもまあ、サビーの言うことも間違ってはいないか。
料理の匂いに誘われて、変な人が寄ってくることもあるってわかったし。
それから私たちは食事の片づけを済ませ、いつもより少しだけ周囲を警戒しながら、野営地をあとにした。
◇
「完全に江戸時代じゃん……」
たどり着いた街には、今までとはまるで違う光景が広がっていた。
長屋が軒を連ね、その向こうには街を見下ろすように天守閣までそびえている。
「すげぇな」
「す、すごい」
私の隣で、二人もぽかんと口をあけている。
異世界ファンタジーのつもりだったのに、急に時代劇が始まったよ。
あれ? 私、タイムリープしてないよね?
突然、カンッ! と甲高い音が耳に飛び込んできた。
その音で、混乱しかけた頭が現実に戻る。
気づけば街中のあちこちから、カンカンと金属を叩くような音が響いていた。
そっか。サビーが言ってた刀鍛冶の街って、こういうことだったんだ。
「茉歩瑠、まずはギルドだ。こんだけ鍛冶屋があると、どこに頼めばいいかわからねぇからな。ギルドなら、腕のいい店を知ってるだろ」




