第63話 絶対いいダシが取れるよ!
港町の朝市は、驚くほど活気に満ちていた。
鮮魚に干物、乾物まで、ありとあらゆる海産物がずらりと並んでいる。
「この昆布みたいなやつ、絶対いいダシが取れるよ! それにこの干物……うっわ! すごい匂い!」
思いがけず手に入った報酬で、私は食材辞典を片手に、気になる食材を次々と買い込んでいた。
海産物は陸の食材とは少し勝手が違って、しびれや毒みたいな、なぜかデバフ寄りの効果が多い。
前からデバフ料理も研究してみたかった私は、そういう食材もいくつか選んで買うことにした。
両手に買い物袋をぶら下げて、朝市の隣にある食堂に駆け込む。
「ごめーん! 遅くなった!」
朝食だというのに、サビーの前には空になった皿が積み上がっていた。
その横で、ラセンは小さなどんぶりを控えめにつついている。
「ずいぶん買い込んだな」
サビーが、ぱんぱんに膨らんだ買い物袋に目を丸くする。
「珍しい食材がいっぱいあったんだよ。美味しいデバフ料理を作るから、楽しみにしてて!」
「で、デバフ……?」
ラセンの顔がひきつる。
「冗談だって。二人には食べさせないって。あ、ラセンが食べてるそれ、美味しそう! 私もそれにしよっと!」
私が海鮮丼を食べていると、すっかり満腹になったサビーが、一枚の地図を広げた。
「次の目的地なんだけどさ、ここを経由するのはどうだ?」
サビーが指さしたのは、海岸線から離れた平野のど真ん中にある街。
「ここって、何かあるの?」
「この街、刀鍛冶が盛んなんだ。ここで、俺の短剣を鍛え直してもらいたくてさ」
サビーはそう言って、腰の短剣を抜いた。
光を受けた刃は、かなりくすんでいるように見える。
「今までの戦いで、だいぶくたびれてきちまった」
たしかに、サビーの武器が壊れるのは困るよね。
ラセンの魔法は強力だけど、それはサビーの前衛があってこそだし。
「よしっ! それじゃ、この街に向かおう!」
朝食を食べ終えたあと、私は買いこんだ食材をまんぷく号に積み込み、出発の準備を整えた。
「それじゃ、いこっか!」
私たちは、磯の匂いがする港町をあとにして、次の目的地――刀鍛冶の街へ向かった。




