第60話 パーティーって、本当に全滅したりするんだ!?
彼女に案内され、私たちはこの街のギルドへやって来た。
錨の看板の建物に入り、そのまま奥の部屋へ通される。
赤い絨毯に、ふかふかのソファー。
そこは、応接室だった。
促されるまま、私たちは三人並んで腰を下ろす。
「なんなんだろう?」
小声で二人に話しかける。
「間違いなく、キメラ絡みだろうな」
サビーが小声で返す。
「あ、あのっ。き、聞こうと思ってたんだけど……その、キメラって、なに?」
ラセンが小さく疑問符を浮かべる。
三人でこそこそ話していると、貫禄のある男性が二人、部屋に入ってきた。
私たちは軽く会釈した。
二人が、私たちの向かいに腰を下ろす。
「長旅で疲れてるところ、急に呼び出して悪かったな。俺がここのギルド長のバルガだ。そして彼が――」
「私が、銀の海燕号の船長、アーネストだ。よろしく」
「私は星咲茉歩瑠っていいます」
「俺はサビー」
「わ、私は……ラセンと、申します」
ギルド長に、船長。
こうなると、やっぱりあのキメラの件で間違いないよね。
何を聞かれるんだろう。
まさか、私たちが疑われてるとか!?
あれこれ考えていると、アーネストさんがふいに頭を下げた。
「まずは礼を言わせてくれ。あの日、君たちが偶然乗り合わせてくれていたおかげで、船は救われた。本当にありがとう」
「あ、いえ。私たちもいっぱいいっぱいで……」
つられるように頭を下げる。
サビーとラセンも、少し遅れて頭を下げた。
「そこでなんだが、少しばかり礼をさせてほしい」
彼がそう言うと、さっき私たちを案内してくれた職員のお姉さんが、トレイを持ってやって来た。
そして、私たちの前にそれを置き、一礼する。
トレイの上には、大きな袋がひとつ載っていた。
「船を助けてもらった礼にしては少ないかもしれんが、受け取ってくれ」
突然の展開に、私たちは思わず顔を見合わせる。
「で、でも、あの魔物を倒せたのは、船員さんたちも一緒に戦ってくれたおかげで……」
私の言葉に、アーネストさんが笑顔でうなずく。
「船員たちから話は聞いている。あなたの強化魔法がなければ、魔物は倒せなかったそうだ。ラセンさんの氷魔法の援護にも助けられた。最後にサビー君がとどめを刺してくれたこともな」
サビーが得意げに鼻の下をこすり、その横でラセンが照れたように下を向いた。
「とにかく、これを受け取ってほしい」
「わかりました。それなら……」
トレイの上の袋を手に取る。
袋はずっしりと重かった。
突然の報酬にちょっと頬が緩みかけた、そのときだった。
バルガさんがソファーから身を起こした。
「俺からも話があってな。船を襲った魔物の件なんだが――」
きた。やっぱりキメラの件だ。
「アーネストや船員たちが、今まであのような魔物は見たことがないと言っていた。キミたちも、見るのは初めてか?」
「あ、はい。というか、船に乗るのも初めてだったので」
「そうか……。実は、ほかのギルドからも、今まで見たことのない魔物の出現報告が相次いでいるのだ」
……たぶん、メリアの作ったキメラだよね。
けど、私もあの子のことはよくわからない。
名前を知っているだけで、どこから来たのかも、何をしたいのかも知らない。
ここで変に話して、私たちまで事件の関係者扱いされたらたまったものじゃない。
私は何も知らないふりをして、バルガさんに尋ねた。
「ほかにも、というのは?」
「魔物と魔物が合わさったような姿、という報告が多い。だが、人語を話す魔物にパーティーが全滅させられた、という報告もある。これは、唯一生き残ったメンバーの証言だ」
ぜっ、全滅!? やっぱりパーティーって、本当に全滅したりするんだ!?
震え上がる私の隣で、サビーとラセンは真剣な表情で話を聞いている。
バルガさんが再びソファーの背にもたれた。
「なにか新しい情報が得られるかもしれないと思ったんだがな……」
「すみません、お役に立てなくて……」
「いや、いいんだ。時間を取らせて悪かった」




