第49話 この感じ、譲ってもらえないやつだ
息を切らせながら坂道を上る。
この街は丘陵地帯にあるせいで、とにかく坂が多い。
「はぁはぁ……ここだ」
山小屋みたいな建物に、大きな煙突。窓の向こうには、皿やカップがずらりと並んでいるのが見える。
そのとき――
「だめだあぁぁぁ!」
突然、耳をつんざくような叫び声が響いた。
続けて、食器が砕ける甲高い音が重なる。
驚いて肩をすくめる。
「きいぇぇぇ!」
再び、悲鳴のような声が響く。
「なに!? なんなの!?」
怖すぎて、このまま中に入らず引き返そうとしたところで、カランカラン、と音を立てて店の扉が開いた。
そこから現れたのは――
「ラセン!?」
ラセンに手招きされて、私は怯えながら店の中へ足を踏み入れた。
中には、きれいな皿やカップがずらりと並んでいて、素敵! と思った、次の瞬間。
「うわぁぁぁぁ!」
また叫び声が響き渡る。
鍛冶屋のおじさんが言ってた「工房のオヤジがうるさい」って、こういうこと!?
そのままの意味でうるさい!
素敵な店内と絶叫の落差がひどすぎて、頭がおかしくなりそう!
「ラセン、なんで平気なの!?」
「え……? だって、どれも素敵だから……」
そう言って、ひとつのカップをそっと手に取る。
「こ、これなんて……ほかのカップよりも、白がずっと深くて……見ていると、吸い込まれそうになるよ……」
うっとりとカップを見つめるラセン。
「お前さんっ! その良さがわかるのかっ!」
怒鳴るような声と一緒に、長い髭をたくわえた小柄なおじいさんが、ものすごい勢いで駆け寄ってきた。
「うわぁぁぁぁ!」
突然のことに、今度は私が悲鳴をあげた。
「――なるほどのう。お前さんたち、ウシカルムが欲しいんじゃな。分けてやりたいのは山々じゃが……」
あ、この感じ、譲ってもらえないやつだ。
「それは難しいのぅ」
やっぱり。
「あの、どうしても必要なんです」
食い下がるように、もう一度頭を下げる。
「いやいや、意地悪で言っとるわけじゃない。うちも在庫が減っとってな。くれてやる分がないんじゃよ」
「そんなに貴重な鉱石なんですか?」
「いや、そこまで珍しいもんじゃない。じゃが、採掘場に問題があってな……」
私とラセンは、おじいさんから採掘場で何が起きているかを聞かせてもらった。
工房をあとにした私たちは、街の広場でサビーと合流した。
サビーは、焼きもろこしみたいなものをもしゃもしゃ頬張りながら、私たちに片手を挙げる。
「よう。二人とも、一緒だったのか」
「うん。偶然、同じお店で合流してね」
広場には食欲をそそる匂いが漂っていた。
見ると、食べ物の屋台がいくつも並んでいる。
「サビー、さっきから何食べてるの?」
「これか? あの屋台で買ったやつだ」
サビーが指さした先には〝焼きモウトロコシ〟の文字が。
「……あ」




