第47話 絶対美味しいやつ!
門番に冒険者ギルドの登録証を見せると、あっさりと門を通してもらえた。
その先に広がっていたのは、前の街よりものんびりとした雰囲気の街並みだった。
山が近いせいか、空気も澄んでいる気がする。
通りのあちこちに、ミルク缶の看板を掲げた店が見える。どうやらこのあたりは酪農が盛んらしい。
「なんだか、高原にある道の駅みたい。ソフトクリーム食べたいなー」
「みちのえき? ソフトクリーム?」
サビーが首をかしげる。
「あーっと、私の地元にあるの。そういうやつ」
適当に言葉をにごす。
「そうなのか。ソフトクリームなんて聞いたことないけど、うまそうだな」
さすがサビー。語感だけで美味しさを見抜くとは。
宿を取った私たちは、そのまま街を見て回ることにした。
ラベンダーみたいな花があちこちに咲いていて、燻製やチーズを並べた店が軒を連ねている。
なんだか、観光地に来たみたいでわくわくする。
「この街、楽しい!」
「うまそうなもんだらけだな!」
私とサビーは気になる店を次々とのぞき込み、ラセンはそんな私たちを少し困ったように見守っていた。
そんな中、ひとつの看板が目に入った。
〝しぼりたてミルク〟
「これ、絶対美味しいやつだ! 飲もう!」
私とサビーは冷たいミルク、ラセンはホットミルクを選んだ。
店先のベンチに腰を下ろし、三人そろって口を付ける。
「……」「……」「……」
しばらく無言で飲み続けたあと、口元を白くしたサビーがぽつりと言った。
「……なんか、普通だな」
「ふ、普通より……少し、薄い?」
ラセンも不思議そうに首をかしげる。
美味しくないわけじゃない。
だけど、なんだろう。思っていたのとはちょっと違った。
もっとこう、コクのある味を想像してたんだけど。
黙ってカップを見つめていると、店の奥から店員のお姉さんが出てきた。
「やっぱり、いまいちだったよね」
彼女は気まずそうに笑って、空のカップを下げていく。
「あ、いえ、美味しかったです!」
慌てて取りつくろう。
「無理しなくていいよ。実際、味は落ちてるんだ。前はもっとおいしかったんだから」
「前は?」
思わず聞き返す。
「数か月くらい前かな。乳牛がだんだん元気をなくしてきてね。採れるミルクの質も、日に日に落ちてきて……まいっちゃうよね」
腰のステッキへ目をやる。ステッキは無言のまま、小さくうなずいた。
◇
「第五回、目指せ王都! 止めろ王様! 作戦会議!」
ぱちぱちぱち、と三人分の拍手が部屋に響く。
まさか、この会議がこんなに賑やかになるなんて。
私はひとりで、じんわりと感動していた。
「あ、あのぉ……」
ラセンが遠慮がちに手を挙げる。
「はい! ラセンさん、どうぞ!」
「こ、この会議って……なに……?」
「はい! まずはそこからですね!」
そりゃそうだ。宿に戻るなり、いきなり私が会議を始めたんだから。
勢いで二人も拍手してくれたけど、頭の上に疑問符が浮かんでるのは気づいてた。
「これは、私とステッキがこれまでやってきた会議なの。お互いの気持ちを話したり、今の状況を整理したりする、とっても大切な会議なんだよ」
「そ、そうなんだ……わかった」
「はい。サビーさんは何かありますか?」
「いや、俺は大丈夫だ。で、何を話し合うんだ?」
「それは、この街の状況についてです! ステッキさん、お願いします!」
ステッキがぴょんとテーブルに飛び乗り、例のプロジェクターで状況を映し出す。
二人は目を丸くしながらも、真剣な表情でステッキの話に耳を傾けた。




