第42話 完全に屋台ですよね
それから一週間。
ラセンは一度も私たちの前に姿を見せなかった。
キノコを掘りながら、サビーに話しかける。
「ラセン、どうしてるかな」
「さあな。あいつ、悩むとひとりになりたがるところがあるんだ。今回も、たぶんそんな感じだろ」
悩ませちゃったのは、間違いなく私だ。
胸の奥が、ずんと重くなる。
「今日、改造をお願いしていた荷車を取りに行くんだ。お金も貯まったし、ラセンの返事はまだだけど……そろそろこの街を出ようと思ってる」
「そうか。いよいよか」
サビーはそう言うと、掘り出したキノコをひょいとつまみ上げた。
ギルドにキノコを納品して、私はその足で荷車屋へ向かった。
「おう、来たか嬢ちゃん。ばっちり仕上がってるぜ!」
店のおじさんが、得意げに親指で店の奥をさす。
その先に見えたのは、すっかり生まれ変わった私の荷車だった。
「あれですか!?」
たまらず駆け寄る。
銀色に輝くかまどに、ぴかぴかの調理台。
その下には、たっぷり入りそうな水樽。
それらを守る、立派な屋根。
ところどころに彫られた装飾が、妙に格好いい。
「……すごい……」
「だろ?」
おじさんの提案で付けてもらった棚もいい感じ。
大きな戸棚に、細かく分かれた引き出しがついて、かなり使い勝手がよさそう。
それに、荷台の広さも十分に確保されている。
これだけ広ければ、雨が降ったときとかに三人で休めそう。
休憩用にクッションを置くのもありかも。
私は「へー」だの「すごい!」だの声をあげながら、荷車のまわりをくるくると回った。
「そんなに喜んでもらえると、俺も作った甲斐があったぜ」
それから私は、かまどの使い方をひととおり教わった。
魔力石を入れて扉を閉め、上についているつまみを右にひねると火がつく。
あとはつまみで火力を調節して……なんだか、既視感がハンパない。
「どうだ? 使えそうか?」
「あ、はい。これなら普通に使えそうです」
青白い炎を見ているだけで、なんだか胸がわくわくしてくる。
早くこのかまどでいろんな料理を作って、みんなに食べてもらいたいな。
それにしても……。
「これ、もう荷車っていうより、完全に屋台ですよね」
「そうだな。どう見ても屋台だな」
これを引いて街を歩いたら、うっかりお客さんが声をかけてきそう。
やっぱり、商人ルートもありだったりするかも!?




