第40話 魔力のかまどにしてください
翌日。
今日は依頼を受けず、それぞれ別行動にすることにした。
二人とは、夜にレストランで落ち合う約束になっている。
私は朝早くから、荷車を買った店に来ていた。
目的はもちろん、荷台にキッチンを取り付ける相談だ。
「問題なく載せられるぜ。この荷車を屋台に改造して商売してるやつもいるからな。ちょっと待ってろ」
おじさんはそう言うと、作業台の上に荷台の図面を広げた。
「調理が目的で、商売をするわけじゃねえんだろ? なら、客用の台は要らねぇな。必要なのは調理台とかまど……水回りはどうする?」
「水場まで載せると、荷物を積む場所が減っちゃいますよね? 水の樽を積んで、そこにコックを付けたりできますか?」
おじさんが、図面にすらすらと線を引いていく。
「側面のここに調理台とかまど。で、調理台の下に水樽。と。こんな感じでどうだ?」
身を乗り出して図面をのぞき込む。
荷台の三分の一くらいは設備で埋まりそうだけど、それでも荷物を積む余裕は十分にありそうだ。
「俺から提案なんだが、食器や調味料を入れる棚も付けたらどうだ? 縦に収納できるから、そのぶん荷物を積む場所を広く取れる」
「それ、いいですね! ぜひお願いします!」
棚があれば便利そう。
見た目はちょっとラーメン屋台っぽくなりそうだけど。
なんなら、そのままラーメン屋を始められそうだ。
って、いやいや、私は冒険者ルートを進んでるんだから、ここで商人ルートに戻っちゃだめでしょ。
自分にツッコんでいると、おじさんが一冊のカタログを差し出してきた。
「かまどなんだが、薪のかまどと魔力のかまど、どっちにする?」
カタログを受け取り、見比べる。
うん、よくわかんない!
「これって、何が違うんですか?」
「薪のかまどは、そのまんま、薪を燃やす。魔力のかまどは、魔力石を燃料にするんだ。石ひとつで丸一日は煮炊きできるし、薪と違って煙も煤も出ねえ。重い薪を積まなくても済むし、手入れも楽だ。だがな……今は魔力石が高騰してるだろ。燃料代はかなりかかるぞ」
なるほどね。
話を聞く限りじゃ便利なのは魔力のかまどのほうだ。
でも、魔力石か……。
そこで、ふと思いつく。
「あの、魔力を含んでるものなら何でもいいんですか? たとえば、リウタンの種とか」
「ああ、あれか。使えはする。ただ、含まれてる魔力量が少ねえから、効率は悪いな。ひとつで一時間ってところだ」
それだけ使えるなら、悪くないかも。
そもそもこれで商売するわけじゃないし、それに、試してみたいこともある。
「それじゃ、魔力のかまどにしてください」
「よし、わかった。それと、予算に余裕があるなら、屋根も付けたほうがいい。雨ざらしだとかまどが痛むからな」
「そっか……。じゃあ、屋根も込みで、見積もりをお願いします」
おじさんが、そろばんみたいな道具をかちゃかちゃと鳴らしながら計算を始めた。
材料代や工賃が、図面の端に次々と書き込まれていく。
「ざっと見積もって、金貨十五枚と、銀貨二枚だな。……ま、お嬢ちゃんは前に荷車を買ってくれたし、銀貨二枚はまけて、きっちり金貨十五枚でいい」
なかなかのお値段だ。
なんなら、荷車より高い。
でも、最近は討伐依頼でばっちり稼げてるし、それくらいなら十分払える。
「わかりました。それでお願いします!」
「よし、任せとけ。一週間後に取りに来な。きっちり仕上げておくからよ!」




