第32話 荷車、買えばいいよね
日を追うごとに、私の荷物は着実に増えていた。
サビーと食べるお弁当。これが一番大きい。
依頼で採ったものを入れる袋。これも結構かさばる。
そしてウリ坊。
いや、あなたは私の肩に乗ってないで自分で歩きなさいよ。
二泊くらいなら余裕でいけそうなリュックを背負い、息を切らせながら森の中を進む。
「ちょ、ちょっと待ってよ……サビー、速いってぇ……」
すると、先を歩いていたサビーが私のところまで引き返してきた。
「大丈夫か? 半分持つぜ?」
サビーは護衛役だ。大荷物なんて持たせるわけにはいかない。
草むらから魔物が飛び出してきたとき、すぐ動けなくちゃ困るし。
「いや……だいじょう……ぶ……」
そう答えて、また歩きだす。
けれど、サビーとの距離がじわじわと開いていく。
やっぱり全然大丈夫じゃない。
こんなの、筋力強化のバフでもかかってなきゃ無理でしょ。
――あ。
私はその場にリュックを下ろし、中をがさごそと探る。
「すっぱ! うぉぉぉぉぉ!」
火竜の実をしゃぶりながら、全力でサビーの背中を追う。
「サビー! ぐずぐずしてると置いてくよ!」
そうだ。私自身が、バフのかかったものを食べればよかったんだ。
なんで今まで気づかなかったんだろう。
「はぁ……はぁ……あれ? おかしいな……」
ところが、サビーを追い抜いたあたりで、急にリュックがずしっと重くなる。
えっ、バフの効果、もう切れちゃったの!?
「サビーにはけっこう長く効いてるのに、なんで!?」
息を切らしながら、ステッキに尋ねる。
「お前自身が術者だからかもしれんな。体内に入ったバフが、そのまま魔力に戻ってしまうのだろう」
それって、一周して自分に戻ってるってこと!?
「じゃあ、バフ飯で私自身が超人になったりはできないんだ……」
「そうだな。なれたとしても一瞬だな」
つまり私は、サビーにバフをかける係に徹しろってことか。
まぁいいけど。
自分で魔物と戦うとか普通に怖いし。
けど、荷物が重いのだけは何とかしないとなー。
◇
ギルドに山ほどキノコを納品したあと、私たちは晩ご飯を食べに、いつものレストランに来ていた。
「大量のおにぎりを背負って歩くの、もう限界かも……」
ぐったりとテーブルに突っ伏す。
自分にはバフが効かないし、サビーに持たせるわけにもいかない。
かといって、荷物運びを雇う余裕もない。
「でも、茉歩瑠の飯がないと、俺、戦えないしなー」
「そこなんだよねー」
そこへ、湯気を立てたチキンが運ばれてきた。
私はむくっと起き上がり、ひと口かじる。
「大量の荷物を運べる何かがあればいいのに。荷車みたいなやつ」
「だったら、それを買えばいいんじゃないか?」
サビーは、何をそんなに悩んでるんだ? って顔のまま、もぐもぐしながら当然みたいに言った。
……そりゃそうだ。
「だよね。荷車、買えばいいよね」
「そうだ、荷車を買えばいい」
それから私たちは、無言でチキンを頬張った。




