第31話 料理のおかげなんだ
「遅くなっちゃった」
きょろきょろとあたりを見回していると、ギルドの扉が開いて、ちょうどサビーが出てきた。
私は荷物を足元に下ろし、大きく手を振る。
「サビー! 結果はどうだっ……た……」
ぶんぶんと振っていた手をゆっくりと下ろす。
こっちへ向かってくるサビーの足取りが、見るからに重い。
その時点で、私はだいたい察してしまった。
うーん、もしかしたら、とは思ったんだけど……。
やがて、サビーは私の前まで来ると、うつむいたままぼそっと言った。
「わりぃ。ダメだった。俺、Eランクのままだ……」
「大丈夫だって! ランクなんて、ギルドが勝手に決めてるだけでしょ? 私、サビーが魔物を倒すところ、二回も見たんだから!」
「それは……そうだけど……」
いつものような勢いがない。相当へこんでるみたいだ。
やっぱり、バフ飯のことを早く話したほうがいいかも。
「とにかく、ご飯いこ!」
いつものチキンが美味しいレストランじゃなくて、今日は少し落ち着いた、ピザみたいな料理が食べられる店に入った。
「さ、食べて」
「いただきます……」
しゅんとしたまま小さく口を動かしているサビーを見ていると、申し訳ない気持になる。
でも、だからこそ、ちゃんと説明しないと。
「ねえ、サビー。聞いてほしいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「実はね。サビーが魔物を倒せたのって、私の料理のおかげなんだ」
それから、ステッキがこれまでのことを順番に説明してくれた。
私が話さなかったのは、うまく説明できる自信がなかったから。
サビーはピザをつまみながら、黙って聞いている。
ステッキがひととおりの説明を終えると、サビーはピザを飲み込んだ。
「つまり、体が剣の腕についてきてなかった、ってことか。それを、茉歩瑠のバフ飯ってやつが補ってくれて……」
「そういうことだ」
「そっか……」
サビーは短く返すと、ふっと視線を落とす。
私はたまらず、声をかける。
「ごめん。最初に説明すればよかったんだけど……」
「いや、大丈夫だ」
サビーは私を見て、にかっと笑った。
「茉歩瑠のうまい飯が食えて、さらにバフで強くなれるんだろ? そんなの、最高すぎるだろ!」
さっきまでの落ち込みはどこへやら。
サビーはピザにかぶりつき、もぐもぐと頬張る。
「それにさ。俺、もともとギルドランクにはそこまでこだわってないんだ。茉歩瑠とパーティーを組むなら、ちょっとでも上の依頼を受けられたらいいなって思っただけでさ。だから、昇格試験を受けたんだ」
「サビー……」
突然、目頭が熱くなる。
バフ飯のことをちゃんと話していなかっただけでも申し訳ないのに、サビーは私のことを考えて、昇格試験を受けてくれていたなんて……。
「……ありがとう……」
こらえきれず、ぽろっと涙がこぼれた。
私は慌てて顔を伏せる。
「お、おい! なんで茉歩瑠が泣くんだよ! 試験に落ちたの、俺だぜ!?」
サビーはあたふたしながらナプキンを差し出した。
私はそれを受け取って、そっと目元をぬぐう。
「うん、そうだよね……。よし、今日はサビーの残念会だ! いっぱい食べよう!」
……なんだか、毎晩パーティーしてる気がする。
けど、いいよね。




