↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
料理魔法のバフ飯屋台~食べた仲間が強くなるごはん、作ります~  作者: たこやき風味


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/59

第3話 異世界に来て、秒で詰んだんだけど……

 お菓子を食べる手が止まる。


 何? 何の話?


「街の冒険者ギルドに依頼していた、魔物討伐の件だ」


 焼き菓子を両手で持ったまま、首をこてんとかしげる。

 その反応を見て、彼の表情が変化した。

 眉をよせながら、私のスカートを指さす。


「お前さん、その格好……〝討伐依頼を受けた魔法使い〟じゃないのか?」


 ここで、ようやく気がついた。

 これ、完全に勘違いされてるやつだ。


「えーと……たぶん、違います……」


 誰と間違われてるかはわかんないけど、少なくとも、私じゃないことだけは確かだ。


「……やはりそうだったか。少し変だと思っていたんだ。本物の魔法使いなら、ボウリル程度の魔物にやられて気絶するはずがないからな」


「えっと、その……見てました?」


「ああ。ちょうど、ボウリルがお前さんの顔面を捉えたところをな」


「あー、そうですか。ですよね。でないと私、ここにいないですもんね。あははは……」


 あーあ、よりにもよって一番見られたくないところを見られてた。

 このままだと、かき捨てた恥でゴミ箱がぱんぱんになる。

 いや、今もピンクでフリフリの魔法少女コスのままなんだから、もうとっくにぱんぱんか。


 ……ま、いっか。ここ、異世界だし。


 雑に納得した私は、また焼き菓子をさくさくと食べ始めた。



 それにしても、魔物討伐かぁ。

 さっきは凶暴なウリ坊にお尻を突かれたし、いよいよ異世界に来た実感が湧いてくるな。


「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はこの村の村長、ランドルフ。それと、妻のヘイゼルだ」


 そっか、この人、村長だったんだ。


「えっと、星咲ほしさき茉歩瑠まほるって言います」


 二人にぺこりと頭を下げる。


「さっきの話ですけど。魔物討伐って、畑にイノシシが出たりするんですか?」


「イノシシ? その魔物は知らんが、違うな。畑ではなく、村の中に魔物が入り込むようになったんだ。家畜たちも、そいつにぜんぶやられたよ」


 あ、思ってたのと違う。これ、想像よりもずっと深刻なやつだ。


 もちろん、畑を荒らされるのも十分深刻だよ?

 だけど、家畜が襲われるって……。

 それ、かなり本気で危ない魔物だよね。


「なんか……大変ですね……」


 急に気軽な空気じゃなくなって、私は無難な言葉を返した。



 何気なく額に指先を当てる。

 うん。さっきよりも、痛みがだいぶましになった気がする。


 ――それにしても、すっかり長居しちゃったな。

 お茶もお菓子もたくさんごちそうになったし、そろそろ帰らないと。


 ……あれ?

 帰るって、どこへ?

 

 魔物が出るなら野宿は無理そうだし、そもそもテントなんて持ってない。

 唯一の持ち物は、ステッキいっぽん……。


 見ると、窓の外はうっすらと紫がかっている。


 嘘でしょ……。

 異世界に来て、秒で詰んだんだけど……。


 能面みたいな顔で、呆然と宙を見つめる。

 そんな私の様子に何かを察したのか、ランドルフさんが口を開く。


「お前さんさえよければ、泊まっていけ。魔物は一度現れると、その後数日は現れない。村もしばらくは安全だ。さっきの部屋を使ってくれていい」


 あ、私が詰んでるの完全にバレてる。

 間違いなく気を使わせちゃってる。


 でも正直、助かった!


「ありがとうございます!」


 私は嬉しさを隠そうともせず、満面の笑みでぺこりと頭を下げた。


「なに、困ったときはお互い様だ」


        ◇


 その夜。

 私はベッドにひっくり返って、ぼんやりと天井を見上げた。


 泊めてもらえたのは助かった。

 だけど、突然こっちの世界に来ちゃったし、なんにも持ってきてないから、やることがない。


 ごろりと寝返りを打つ。

 すると、テーブルの上のステッキが目に入った。


 このステッキのせいで、こんなことになってるんだよなー。

 ウリ坊にお尻をつつかれたり、ピンクでフリフリの格好のまま過ごすことになったり……。


 そもそも、なんで私がステッキと一緒に、この世界へ来ることになったのか――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。