第26話 私もその依頼受けたいです!
翌日。
バスケットに、大量のおにぎりと、クスイルの実を使った焼き菓子を詰めこむ。
昨日サビーに約束した、おにぎり以外の料理。
いろいろ悩んだ末、クスイルの実と米粉で、素朴な焼き菓子を作ってみた。
もちろん、美味しくなる魔法つき。
サビー、喜んでくれるかな。
「今日も楽しくキノコ狩り♪」
鼻歌まじりでギルドの扉をくぐった私は、すぐに異変に気づいた。
掲示板に貼られた依頼書の上から、さらに大きな紙がどんっ! と貼られていて、冒険者たちがそれを見上げてざわついている。
「なにかあったのかな?」
ステッキが張り紙を見上げる。
「〝緊急依頼〟と書いてあるな。救援を求めているパーティーの探索らしい」
「えっ、大変じゃん!」
とは言っても、私はキノコ狩りの依頼しか受けられないし、関係ないか。
いつものように受付へ向かい、顔なじみのお姉さんに声をかける。
「キノコ狩りの依頼を受けたいんですけど」
彼女は、少し困ったように眉を下げた。
「ごめんね。今は緊急依頼が出ているから、ほかの依頼は受けられないのよ」
「ええっ!? そうなんですか!?」
「ギルドには互助の仕組みもあってね。誰かが救援要請を出したら、ほかの冒険者が助けに向かうことになっているの。もちろん報酬は出るけど、互助だから相場よりかなり安いわ。今回も金貨五枚よ」
金貨五枚。
私のキノコ依頼の倍以上だ。
「それって、私のランクでも受けられるんですか? その人たちを見つければいいんですよね?」
「ええ。緊急依頼はランクに関係なく受けられるわ。場所もだいたいわかってるから、そのあたりへ行って当人たちを見つければいいのよ」
要するに、探す相手がキノコか人かの違いってことか。
それで報酬は倍!
「私もその依頼受けたいです!」
「それは助かるわ。あ、でも、報酬は最初に見つけた人に支払われるの。つまりは、早い者勝ちってことね。それでもいい?」
そっか。周りのパーティーはみんなライバルってことか。
それなら、偶然見つけられたらラッキー、くらいのつもりで受けたほうがよさそうかも。
そこで、ふと気づいた。
さっきまでいた冒険者たちが、いつの間にか、かなり減っている。
「あれ? ほかの人たちは受けないんですか?」
「依頼料が安いっていうのもあるけど……今回、助けを求めてるパーティーっていうのが、ちょっとね」
受付のお姉さんは声をひそめた。
「みんなから、あまりよく思われてないのよ……」
なるほど。
報酬は安いし、好かれてもいない相手を助けに行くとなれば、みんな乗り気にならないわけだ。
「ちなみに、そのパーティーって……誰なんですか?」
「それは……あなたもよく知ってるわよ」
「?」
私はもう一度、緊急依頼の張り紙を見に行った。
「なるほどな……そういうことか」
隣でステッキが、ひとり納得したようにつぶやく。
「どういうこと?」
「お前がやけ食いする羽目になった相手だ」
「それって、もしかして、ガーク!?」
よりによって、あいつか。
あー、受けるんじゃなかった……。
でも今日はキノコ狩りの依頼を受けられないし、おにぎりも焼き菓子もたっぷり作ってきちゃったし。
……まあ、しょうがない。ピクニックだと思って、行くだけ行ってみるか。
私はギルドの前でサビーと合流すると、探索エリアへ向かった。




