第25話 クスイルの実
翌日。
ギルドでサビーの姿を見つけると、私はすぐに護衛を頼んだ。
「別にいいぜ。またうまいのが食えるんだろ?」
「もちろん! ほら、いっぱい作ってきたよ!」
サビーにバスケットを開いて見せる。
今朝は早起きして、バスケットいっぱいにおにぎりを作った。
材料なら、まだ余るほどあるからね。
「依頼は森でキノコを採るだけなんだけど、またあんな魔物に出くわしたらたまったもんじゃないしさ。サビーが一緒に来てくれるなら、すごく心強いよ」
「俺、Eランクだぜ? 期待しすぎだろ」
「いいのいいの。それじゃ、行こ!」
昨日と同じ森の中を、ぷいぷいと進むウリ坊の後についていく。
キノコはウリ坊が見つけてくれるし、魔物が出てきてもサビーがいてくれる。
つまり私は、おにぎりを作るだけでキノコ採取の依頼をこなせるわけだ。
なんて画期的なシステムなんだろう。
やがて、ウリ坊がぴたりと足を止めた。
ウリ坊をひょいと抱えて脇にどけると、スコップで慎重に土を掘り始める。
「あった!」
柔らかい土の中から、立派なキノコが顔をのぞかせた。
慣れた手つきで、そっと引き抜く。
「依頼完了! って、あれ?」
顔を上げると、さっき横に置いたはずのウリ坊の姿がない。
「どこいっちゃったんだろ?」
きょろきょろとあたりを見回す。
すると、すぐそばの草むらがかさりと揺れた。
のぞき込むと、ぷりっとしたお尻が見える。
「いたいた。もぉ、勝手に離れたら迷子になっちゃうよ。……ん? なにそれ?」
ウリ坊が、見慣れない木の実を咥えている。
手を差し出すと、ウリ坊はその実をぽとりと掌に落とした。
「なんだろ、これ」
食材辞典をぱらぱらとめくる。
見た目は、大きなどんぐりみたいな感じ。
木の実のページを追っていくと、よく似た絵が目に入った。
「あった! 〝クスイルの実〟」
効果は〝敏捷強化〟。
〝まるで小動物のようにすばしっこく動けるようになる〟か。
食材辞典をぱたんと閉じる。
すると、得意げに鼻を鳴らしたウリ坊が、こっちを見上げてきた。
「あなた、キノコ以外の食材も見つけられるんだ。すごいじゃん!」
私は、ウリ坊の頭をわしわしと撫でた。
木陰でひと休み。
バスケットからおにぎりを取り出してサビーに渡す。
サビーはそれを受け取ると、さっそくもぐもぐと食べ始める。
「これ、本当にうまいな」
サビーがほっぺたをぱんぱんにしながら、目を輝かせた。
「ありがと」
美味しくなる魔法をかけているとはいえ、料理を褒めてもらえるのはやっぱりうれしい。
「俺、茉歩瑠のほかの料理も食ってみたいな。こんな単純なもんがこんなにうまいんだ。ほかのも絶対にうまいに決まってる」
たしかに、毎回梅干しのおにぎりだけっていうのも味気ないかも。
さっきウリ坊が見つけてくれたクスイルの実で、何か作ってみようかな。
「明日はおにぎりのほかに、何かもう一品作ってくるよ」
「ほんとか! 楽しみだなー」
サビーは満面の笑みで、おにぎりにかぶりついた。




