第24話 サビー、よろしくね!
「あーもーっ! なんなの、あいつ! 『二度と関わるな!』とか言ってたじゃん!」
むしゃくしゃしたまま、チキンをむしゃむしゃと食べる。
私たちは、ついさっき晩ごはんを食べたばかりのレストランに戻ってきていた。
腹が立ちすぎて、このままじゃ気が済まない。
つまり、やけ食いだ。
「ごめんな、俺のせいで……。それに飯まで……。さっきの飯代も返せてないのに……」
「いいのいいの! 今は私のやけ食いに付き合ってもらってるだけなんだから、気にせずどんどん食べて! お兄さーん! チキン追加で!」
しょんぼりしながらチキンをかじる少年を元気づけたくて、私はわざと明るくふるまった。
「そういえば、自己紹介がまだだったよね。私は星咲茉歩瑠。あなたは?」
少年は口いっぱいに頬張っていたチキンを、もぐもぐしてからこくりと飲み込む。
「俺はサヴェル・ヴァン・ヴィアンドレ。……堅っ苦しい名前だろ? 気にせず、サビーって呼んでくれ」
なんか、思ってたよりカッコいい名前だな。
「サビーね、わかった。よろしくね!」
「よろしくな、茉歩瑠!」
そうだ、残りの二人(?)も紹介しておこう。
「えっと、私にはあと二人仲間がいるんだけど……」
腰のステッキを外す。
ステッキは羽をぱたぱたさせながら、ひょいとテーブルの上に乗った。
「へぇ。それ、魔道具か?」
「魔道具?」
ステッキを紹介するつもりが、逆に知らない言葉が返ってきた。
ぽかんとしている私をよそに、ステッキが先に口を開く。
「そうだ。俺は魔道具だ。よろしくな」
「ああ、よろしく!」
あっさり挨拶を交わす二人に、私だけ置いて行かれた気分になる。
「それと、ウリ坊がいるんだけど、お店には入れないから、あとで紹介するね」
「昼間連れてたボウリルか? 茉歩瑠って、魔物の使役もできるのか。すげーな」
「いやー……、それほどでもー……」
……完全に偶然だったから、全然すごくない。
「お前たち、賑やかで楽しそうだな。俺なんて、クビになってまたひとりになっちまった」
「また? あっ、ごめん……」
「いいって。今のパーティー……いや、さっきまでのパーティーで三組目だったんだ。クビになる理由は毎回同じ。飯ばっかり食って戦力にならない、ってな」
「そっか……」
なんか大変だな。
けど、魔物と戦う以上、そういうシビアさも仕方ないんだろうな。
私もさっき、本気で死ぬかと思ったし。
お互いの自己紹介を終えたところで、追加注文していたチキンが湯気を立てて運ばれてきた。
「さ、熱いうちに食べよう!」
◇
サビーと別れて宿に戻った私は、ぽんぽこりんになったお腹をさすりながら、ベッドに転がっていた。
「たべすぎたー。全部あいつのせいだー」
「いや、単にお前とサビーが食いすぎただけだろう」
だって、あのレストランのチキン、やたら美味しいんだもん。カーネルもびっくりすると思うよ。
「それにしても、あのサビーという少年……」
急にステッキの声が真面目になる。
「剣の腕は、相当なものかもしれんな」
「そうなの? 私のバフおにぎりのおかげで、魔物を倒せたんじゃなくて?」
サビーにあげたおにぎりは、ランドルフさんに食べさせた〝火竜の実入りおにぎり〟と同じものだ。
もちろん、私の〝美味しくなる魔法〟もかけてある。
「お前のバフおにぎりの効果は、攻撃力上昇ではなく、正確には〝筋力強化〟だ。ランドルフからもらった食材辞典に書いてあっただろう」
「うん。書いてあった」
「つまり、強化されるのは筋力だけで、技量は強化されない」
「筋力? 技量? どういうこと?」
「サビーは、剣の扱いは上手い。だが、身体能力が足りないために、その能力を発揮しきれていない。その不足分をお前のバフが補ったことで、高ランクの魔物を倒せた……そういうことだ」
「わかった! バフ飯屋のために大量に買い込みすぎて持て余してる〝おにぎりの材料〟を使えば、在庫も減るし、サビーも強くなれるしで、一石二鳥ってことだ!」
「お前、こういう話になると、本当に頭の回転が速いな……」
「今日はご飯代で赤字になっちゃったからね。明日ギルドでサビーに会えたら、キノコ狩りの護衛をお願いしよう」




