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料理魔法のバフ飯屋台~食べた仲間が強くなるごはん、作ります~  作者: たこやき風味


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第21話 揉め事ばっかりだな……

 そのあと私は、少年をあの場に残したまま、半ば逃げるように街へ戻った。

 何度も振り返ったけど、戻る勇気は出なかった。


 思い出すだけで、今でも膝がかすかに震える。

 自分が本気で魔物に殺されかけて、ようやく思い知った。


 この世界は、ゲームみたいに気楽に遊ぶような場所じゃない。


 肩の上のウリ坊をちらりと見る。

 この子にお尻を突かれた程度で済んだから、まだよかったけれど……。


 もし、最初からさっきみたいな魔物に出くわしていたら。


 そう考えた瞬間、背筋がすうっと冷えた。

 ……だめだ。余計なことは考えないようにしよう。



 黄色く染まり始めた空を見上げる。


「私、ちゃんと元の世界に帰れるのかな……」


 ぽつりとつぶやく。


「お前を連れてきたのは俺だ。なんとかする」


「なんとかって? 私の使える魔法なんて、料理を美味しくするだけだよ? さっきの熊みたいな魔物なんて、倒せないよ?」


「それは……そうだが……」


 それきり会話は途切れて、私たちは黙ったままとぼとぼと歩いた。


「ぷいぷい」


 肩に乗ったウリ坊が、私に頬ずりする。


「……そうだ、キノコ……。とにかく、納品だけはしないと」


 ほんの少しだけ気を取り直して、私は冒険者ギルドへ向かった。



「はい、たしかに! 報酬は金貨二枚ね。がんばったわね」


 さっきまでしょんぼりしていたぶん、「がんばったわね」の一言に少しだけ救われる。


「キノコ採取の依頼って、一見地味に見えるけど……まあ、実際ちょっと地味なんだけど、意外と難しいのよ? それをいきなり達成しちゃうなんて、ほんとすごいわ」


 それは、なんとなくわかる。

 だって、土に埋まってるなんて依頼書に書いてなかったし。

 いや、そこは最初に教えてくれてもよくない?


 トレイから金貨二枚をそっと受け取り、財布にしまう。


「ありがとうございました」


 お礼を言って背を向けかけたところで、受付のお姉さんが思い出したように両手を打った。


「あっ、そう言えば! あなた、魔力石は足りてる? また値上がりするから、今のうちに買っておいたほうがいいわよ」


「値上がり?」


 首をかしげる。

 そもそも、魔力石がなんなのかわからない。


 そんな私の困惑を置いてけぼりにしたまま、お姉さんは話を続ける。


「明日から金貨一枚になるのよ。ほんと、急に高くなっちゃったわよね。この前まで銀貨一枚だったのに」


 やっぱりよくわからないけど、何かの石の値段が跳ね上がるらしい。


「今日までは銀貨八枚だし、今のところ在庫もたっぷりあるから、慌てなくても大丈夫よ」



 ギルドを出るなり、ステッキに尋ねる。


「魔力石ってなに?」


「魔力石とは、魔力を蓄えた石だ。魔法使いたちは、それを使って魔力を回復している」


「そうなんだ。私、ご飯食べて寝たら元気になってるけど」


「言っただろう。お前はこの世界で唯一、魔力を自然回復できる魔法使いだ。王が魔力を奪うまでは、皆そうだった」


 唯一の魔法使いって、そういう意味だったんだ。


「それじゃ、魔力石は買わなくてもいいよね?」


「ああ」


「それにしても、ずいぶん高くなってるんだね。ひとつ一万円でしょ?」


「そのようだな。需要に対して、採掘が追いついていないんだろう」


 魔法使いの人たち、大変そう。

 依頼をこなしても、魔力石を買ってたら全然儲からないじゃん。


 いや、今は他人の心配をしてる場合じゃないか。

 私だって、そんなに余裕あるわけじゃないし。


「さてと、お金ももらったし、宿に戻ろっか。晩ご飯、何食べよっかなー」


 もう少しで宿、というところで、前方に人だかりができているのが見えた。

 どうやら何か揉めているらしく、誰かの怒鳴り声まで聞こえてくる。


 森でも街でも、ほんと、揉め事ばっかりだな……。


 気にせず通り過ぎようとした、そのときだった。

 人だかりの隙間から、見覚えのある顔がちらりとのぞく。


 あっ! あの子!


 私は慌てて人垣をかき分け、その場へ駆け寄った。

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