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料理魔法のバフ飯屋台~食べた仲間が強くなるごはん、作ります~  作者: たこやき風味


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第20話 はい、おにぎり。食べて

「お前がいつまでも弁当なんか食ってるから、見失ったじゃねぇか!」


「だって、腹が減ってたら戦えないし……」


「お前、腹が減ってなくても戦えねぇだろ!」


「それは……」


 なにか揉めている?

 ウリ坊の口を押さえたまま、耳をそばだてる。


「一度街に戻って作戦を練り直すぞ。お前はここで弁当でも食ってろ!」


「もう弁当は食っちまったし……」


「うるせぇ! なら草でも食ってろ! お前ら、行くぞ!」


 怒鳴り声を残して、複数の足音が遠ざかっていく。



 そっと茂みから顔を出して周囲を見回す。

 すると、ひとりの少年が地面に転がっていた。


 えっ? まさか、置いていかれたの!?


 私は茂みを抜けると、少年のそばへ駆け寄った。


「だ、大丈夫?」


「ぐぅぅぅぅ」


 返事の代わりみたいに、少年のお腹が盛大に鳴る。


「腹、減った……」


「お腹すいてるの? ちょっと待ってて」


 かばんから昼食用のおにぎりを取り出して、少年に差し出す。


「はい、おにぎり。食べて」


 少年はむくりと起き上がると、おにぎりを受け取る。


「おにぎり? 聞いたことがない食い物だな。けど、ありがたくもらうぜ!」


 言いながら包みを開くと、なんと、ひと口でぱくりと平らげてしまった。

 私用に小さめに作ったとはいえ、まさかひと口でいくなんて。


「うまかった。ありがとうな」


「いえいえ。……あの、何があったのか、聞いてもいい?」


 米粒のついた指をぺろりと舐める少年に尋ねる。


「実は、俺が弁当を食ってる間に、討伐対象の魔物を見失っちまったんだ」


「お弁当を食べてる間に?」


「俺さ、腹が減ると全然だめなんだ。いや、リーダーが言ってたみたいに、腹が減ってなくてもだめなんだけどさ」


 少年は自嘲気味に笑った。


「俺のギルドランク、いくつだと思う? Eだぜ。笑っちゃうだろ?」


 Eで笑っちゃうなら、私のGランクなんて笑い死にするレベルだ……。


「ほかの人たちはそんなに強いの?」


「ああ。リーダーがAランクで、ほかの仲間は全員Bだ。今回の討伐依頼はBランク。俺なんかじゃ太刀打ちできない相手なんだ」


 私のキノコ採取とは、もう世界が違う。

 うん。私はこれからも地道にキノコを探して生きていこう。


 そんなことを考えていると、少年が自分の体の具合を気にするように、手を握ったり開いたり、ぐるりと腕を回したりしはじめた。


「……お前のくれたおにぎりってやつを食ってから、なんか体が妙なんだよな……変なもん入ったりしてないよな?」


「そんなわけないじゃん! 〝美味しくなるおまじない〟はかけてあるけどさー」


 今回のおにぎりにも、ちゃんと魔法はかけてある。

 どうせ食べるなら、美味しいほうがいいし。


 さてと。

 キノコも見つかったし、そろそろ街に戻ろうかな。


「それじゃ、私は街に戻るね。あなたはどうするの?」


「俺のせいで魔物を見失っちまったからな。もう少し探してから戻るよ」


「そっか」


 立ち上がって、お尻についた土を払う。


「じゃあね!」


 私は少年に軽く手を振って、元来た道を戻ろうとした。

 そのとき――茂みが大きく揺れた。


「ん?」


 がざがざと揺れる茂みに目を凝らす。

 次の瞬間、枝をへし折りながら、巨大な影がぬっと現れた。


 熊のような巨体。

 両腕を持ち上げ、口からだらりとよだれを垂らしている。


 鋭い目が、私を見下ろす。


「わ……わ、……うわぁ!」


 逃げなきゃ!


 そう思ったのに、膝が笑ってその場から動けない。


 魔物が地面を踏み鳴らし、一歩、また一歩と近づいてくる。

 そして目の前までくると、鋭い爪を振り上げた。

 

 もうだめっ!


 とっさに両腕で顔をかばう。

 ……けれど、いつまで経っても魔物の一撃はこない。


 恐る恐る薄目を開けると、少年が短剣で魔物の爪を受け止めていた。


「今のうちに逃げろ!」


「逃げろって、あなたは!?」


「いいから早く!」


 私はなんとか足を動かすと、森の外へ向かって必死に駆け出した。

 けれど、木の根に足を取られて、派手に転んでしまう。


「いったぁ!」


 起き上がろうとするけど、全身を打ちつけた痛みで、うまく体に力が入らない。


 魔物は!?


 倒れたまま、後ろを振り返る。


 魔物は少年に向きを変え、巨大な腕を振り上げていた。


 あの子がやられちゃう!


 そう思った瞬間――


「グアァァァァァァ!」


 魔物の絶叫が、森の空気を震わせた。

 巨大な影が、ゆっくりと崩れ落ちる。


「え……?」


 森が、しんと静まり返る。

 倒れた魔物の向こうに立っていたのは、血まみれの少年だった。

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