第18話 こっちのギルドに来ればよかったよ
「書けました」
「はーい。どれどれ?」
お姉さんは申請用紙に目を落とし、無言で確認していく。
しばらくして、ふぅと小さく息をはいた。
「うーん、一応登録はできるんだけどぉ」
少し言いにくそうに、彼女が続ける。
「魔法使いってところは問題ないのよ。ただ、属性がね。あなた、料理魔法以外に使える魔法はないの?」
「はい。料理魔法だけです」
「そっかー。まあ、仕方ないか……」
彼女は苦笑いのまま、大きなスタンプを申請用紙にばんっと押した。
続けて、机の引き出しから、五センチほどの木札がついたペンダントを取り出す。
「はい、これが登録証ね。なくさないでよ?」
受け取った木札には、見慣れない文字が刻まれている。
私はそれを首から下げた。
「登録はこれでおしまい。壁の掲示板に貼ってあるのが依頼書ね。受けたい依頼があったら、剥がして持ってきて。ただし、そのプレートに書かれたランク以下の依頼しか受けられないから気を付けてね。えっと……、とにかく、がんばって!」
お姉さんが、胸元でグーをにぎる。
「ありがとうございます!」
やった、登録できた!
しかもお金もかかんなかったし、最初からこっちのギルドに来ればよかったよ。
私はぺこりと頭を下げると、さっそく掲示板へ向かった。
掲示板には、びっしりと依頼書が貼られていた。
ドラゴンに、槍を持った魔物、それに……うわっ、なにこれ? オバケ!?
初めて目にする依頼書の数々に、私はすっかり夢中になっていた。
そんなとき、ふと隣に立つ、いかにも強そうな冒険者の胸元が目に入った。
あれ? この人のプレート、金ぴかだ。
気になって周囲を見回すと、色こそ違うものの、みんな金属製のプレートを下げている。
じゃあ、私のは……。
その瞬間、なんだか急に恥ずかしくなって、自分のプレートを服の中へ押し込んだ。
冒険者ギルドからの帰り道。
傾いた陽が差す石畳を、うつむき加減で歩く。
結局、私のランクで受けられる依頼はひとつもなかった。
ステッキの話では、私のランクはG。普通は最低でもFかららしい。
なんで、G……。
あのお姉さんが微妙な顔をしていた理由が、今ならわかる。
「『とにかく、がんばって!』って、そういうことだったんだ……」
「あまり気にするな。それに、依頼はすぐに入れ替わる。また明日、見に行けばいい」
「うん……」
石畳の上に長く伸びた自分の影まで、しょんぼりして見えた。
◇
翌日。
早朝の冒険者ギルド。
「あった! 見て! これ!」
他の冒険者が見向きもしない、掲示板の端っこ。
キノコの絵が描かれた依頼書を指さして、ぴょんぴょんと跳ねる。
「キノコの採取、報酬は金貨二枚か。悪くないんじゃないか?」
ステッキも納得のご様子。
「だよね! だよね!」
私は依頼書を勢いよく剥がし、受付カウンターへ走った。




