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料理魔法のバフ飯屋台~食べた仲間が強くなるごはん、作ります~  作者: たこやき風味


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第16話 まんぷく亭

〝バフおにぎりあります まんぷく亭〟


 木の板に筆で書いた看板を立てかける。


 八百屋さんにもらった木箱に布をかぶせ、その上におにぎりを並べた。

 簡素だけど、私のお店。


 店名は〝まんぷく亭〟。


 露店が並ぶ路地の、少しだけ空いていたスペース。

 そこに、私は小さな店を構えた。


「なんかどきどきするね。おにぎり、売れるかな」


「さてな」


「ぷいぷい」


 値段はおにぎりひとつで銀貨一枚。

 少し高い気もするけど、これでも原価すれすれだ。


 商売って難しい。



「さてと、黙ってても始まらないよね」


 気合を入れて、通りに向かって声を張る。


「いらっしゃいませー! 食べれば力が湧くおにぎりでーす! ひとつ銀貨一枚! 戦闘のおともにいかがですかー!」


 通行人がちらりとこちらを見るものの、誰ひとり足を止めてくれない。

 うーん、これは思ったよりも手ごわいかも。


「いらっしゃいませー! おにぎりいかがですかー!」


 そのときだった。

 鎧をカチャリと鳴らしながら、兵士らしき男がこちらへ歩いてくる。

 茶色い髭をたくわえた顔は、どこか訝しげだ。


「いらっしゃいませ! おにぎりひとつで銀貨一枚です!」


「……お前、このへんじゃ見ない顔だな」


 なーんだ、お客さんじゃないのか。


「あ、はい。今日この街に来たばかりで」


「今日来たばかりだと?」


 男の表情がさらに曇る。

 ……あ、これ、なんかやばいかも。


「お前、出店許可証は持っているのか?」


「しゅってんきょかしょう?」


 首をかしげる。


「どうやら持っていないようだな。この街で露店を開くには、商人ギルドに登録し、出店許可証をもらう必要がある」


「えっ、そうなんですか!?」


「知らなかったのか……。とはいえ、許可のない出店を認めるわけにはいかん。すぐに店をたため」


 呆れたように注意されてしまった……。


「……はい……」


 力なく返事をする。

 同時に、立てかけていた看板が、ぱたりと倒れた。


 言われるまま、おにぎりの包みをかばんにしまう。

 私は木の看板と箱を抱えて、とぼとぼとその場をあとにした。


        ◇


「ここが商人ギルドかな」


 天秤みたいな看板の建物の前で、足を止めた。

 ほかの店とは違って、どことなくお役所っぽい空気が漂っている。


「バフ飯屋のためにも、入るしかないよね」


 意を決して、重厚な扉をゆっくりと押し開ける。


 中は、まるで銀行みたいだった。

 ついたて越しに職員と話す人たち。

 待合用のソファーには、順番待ちの人が何人か座っている。


 きょろきょろしていると、案内係らしき女性が声をかけてきた。


「本日はどのようなご用件でしょうか」


「あ、えっと……露店を出すために、ギルドに登録したいんですけど」


「かしこまりました。こちらの用紙に必要事項をご記入のうえ、登録金をご用意してお待ちください」


「登録金? 登録するのにお金がかかるんですか?」


「はい。登録費用と一年間の会費として、金貨十枚を頂戴しております」


「金貨十枚!?」


 十枚って、十万円ってことだよね? 高っ!

 おにぎり一個を銀貨一枚で売ろうとしてるのに、初期費用が金貨十枚って!


「あー、その、えーっと……また来ます!」


 私は、逃げるように商人ギルドを飛び出した。

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