第15話 答えはバフ飯屋です!
「止まれ! お前、何者だ?」
ですよねー。
門番の間をしれっと抜けようとしたけど、やっぱりだめだった。
ピンクの魔法少女衣装に、肩乗りボウリルなんて、こんなの誰が見たって怪しすぎる。
「あー……その、私、道化師なんです。この子は芸をするようにしつけたボウリルで、お客さんの前で芸とか、その、いろいろ……」
自分でもひどい言い訳だと思う。
というか、何を言ってるんだ、私は。
「そうか。ウケるといいな。よし、通れ」
通れるんだ。
ランドルフさんの勘違いから生まれた〝道化師〟という設定が、まさかの大成功。
私は門番に軽く会釈して、そそくさと街へと続く門をくぐった。
「うわぁ!」
門を抜けた瞬間、街のざわめきがどっと押し寄せてきた。
石畳の大通りを荷車や馬車が行き交い、両脇には商店がずらりと並んでいる。
遠くには、いかにも偉い人が住んでいそうな大きなお屋敷が見える。
「すごい……これ、完全にファンタジーの街じゃん! よーし、まずは観光――」
「待て! 先に宿だ。宿が取れなければ野宿になるぞ」
今にも駆け出しそうだった私を、ステッキが冷静に引きとめた。
そっか。昨日まではランドルフさんの家にタダで泊めてもらってたけど、今日からは自分で宿を確保しないといけないんだ。
宿、宿っと……あれかな?
私は、ベッドの描かれた看板の建物へ向かった。
十日分の宿泊代を前払いして確保した部屋は、豪華ではないけど、きちんと掃除の行き届いた小綺麗なシングルルームだった。
窓を開けると、眼下には大通りが広がっている。
私の世界で言えば、駅前のビジネスホテルみたいな感じ。
うん、思ったより悪くない。
食事は付いてないけど、自由に使える自炊場がある。
料理ができるのは、かなりありがたい。
荷物を置いて、ベッドに腰かける。
さてと――
「第二回、目指せ王都! 止めろ王様! 作戦会議!」
ぱちぱちぱちと、乾いた拍手が部屋に響く。
「本日の議題。どうやって旅費を稼ぐか。はい、ステッキさん!」
「……いや、お前、バフ飯屋をやると張り切っていただろう」
「はい、正解。答えはバフ飯屋です!」
ついに、このときが来た。
畑仕事で振り回したクワをしゃもじに持ち替えて、私の華麗なるバフ飯屋ライフが始まるのです!
たぶん。
◇
「よいしょっと……ふぅ、重かった」
買い出しから戻った私は、大きな袋をふたつ、どさっとテーブルに置いた。
さっそく、中身を取り出していく。
「まずはこれ! 服! 普通の服!」
魔法少女の衣装を脱ぎ捨て、買ったばかりの服に着替える。
胸元を紐で編み上げた生成りの素朴な長袖ワンピースに、ぺたんこの革靴。
派手さなんてどこにもない、この街ではありふれた服装だ。
やっと。やっとだよ……普通の服……普通、最高。
次はバフ飯屋をやるための、お米と塩。それから火竜の実。
でもこの火竜の実、村では「森にいくらでも実ってる」なんて話だったから、てっきり安く買えるんだと思ってた。
なのに、街ではびっくりするくらい普通に高い。
私の世界でも、梅干しってスーパーで買うと地味に高いし、たぶん、そういう感じなんだと思う。
あとは、おにぎりを包むための包装紙。
紙というより、乾かした葉っぱみたいなやつ。
よくわからないけど、店の人に聞いたら、食品を包むならこれが定番らしい。
そんなこんなで、買い物の出費は合計で金貨四枚。
宿代は十日間の素泊まりで金貨三枚……うん、なかなかいいペースでお金が減っている。
これは、一刻も早く稼がなければ!




