第14話 魔物の食欲にも通用するんだ!
私のお尻を執拗に突き続けてきた、あのボウリルだ。
一騎打ちした相手だ、見間違えるはずがない。
声を上げた私に気づいたウリ坊が、顔を上げた。
その目が、あのときと同じ、敵意むき出しのものに変わる。
「やばい! また突かれる!」
そう思った瞬間、ウリ坊がこっちに向かって飛びかかってきた!
けれど、私の目の前にぽとりと落ちた。
「あ、あれ?」
ウリ坊の横にしゃがみ込む。
目がバッテンになったウリ坊が、「きゅぅぅぅ」とお腹を鳴らした。
「ん? お腹がすいてる?」
近くに落ちていた木の枝で、つんつん、とつついてみる。
すると、また「きゅぅぅぅ」と鳴った。
「もしかしてだけど……ランドルフさんが倒した魔物って、ウリ坊の、親?」
「かもしれんな。こいつのために、食い物を探して村に入り込んでいたのかもしれん」
「そっか……」
ランドルフさんの一撃で致命傷を負って、ここまで逃げてきたけど、とうとう力尽きたのかもしれない。
なんだか、急にウリ坊がかわいそうになってきた。
間接的とはいえ、私のせいでウリ坊が親を失ったってことだよね……。
このまま放っておくのは、さすがにかわいそうだな。
そうだ!
かばんから包みを取り出し、団子をひとつ、ぐったりしているウリ坊の鼻先に置く。
「ほら、お食べ」
団子の香りに気づいたのか、ウリ坊の鼻がぴくぴくと動く。
けれど、食べようとしない。
「やっぱり、人の食べ物じゃダメかな……それなら」
腰からステッキを外し、呪文を唱える。
「レーナ! クーシ! イオ!」
ピンクの閃光が団子に当たり、ぱっと弾ける。
次の瞬間、ウリ坊が団子にがぶりとかぶりついた。
「すごい、効いた! 私の魔法って、魔物の食欲にも通用するんだ!」
ウリ坊はぴょんと飛び起きると、夢中になって団子にかぶりつく。
そして、あっというまに平らげてしまった。
「お腹いっぱいになった? ……うーん、なんかごめんね。とにかく、元気でね」
短い尻尾をぶんぶん振るウリ坊に未練を引かれつつ、私はその場を離れた。
来た道を引き返す。
私が草をかき分ける度にガサガサと音が鳴る。
それとは別に、後ろでカサカサと音が鳴る気がした。
……まさかね。
しばらく進んで、昼休憩した木の下まで戻ってきた。
体についた草を払い、「ふぅ」とひと息つく。
その瞬間、茂みの中から何かが飛び出してきた!
「うわっ! って……やっぱり」
「ぷいぷい」
短い尻尾を振りながら、私のほうへ寄ってくるウリ坊。
「なんでついてきたの?」
しゃがみ込んで声をかける。
けれど、もちろん言葉が通じるわけがない。
どうしようかな、と考えた矢先、ウリ坊がいきなり私に向かって飛んだ!
またやられる!
反射的に両腕で顔をかばう。
……あれ?
「ぷいぷい」
耳元で鳴き声がする。
そっと目を開けると、なんと、ウリ坊が私の肩にちょこんと乗っていた。
「なんで!?」
「お前、こいつに懐かれたんじゃないか?」
「そんな! お団子あげただけだよ!?」
「団子……たしか、夏草を練り込んだ、とか言っていたな。おい、食材辞典を開け。〝夏草〟を調べるんだ」
「わかった。ちょっとまってて」
肩にウリ坊をのせたまま、かばんから食材辞典を取り出す。
道すがらステッキに辞典の引き方を教わったので、そのとおりにページをめくる。
「なつくさ、だから……、な、な、な……、あった!」
「どれ、見せてみろ」
ステッキに向けて、そのページを開いてみせる。
「……なるほどな。そういうことか」
「どういうこと? 教えてよ」
「これは、別名・懐草だ。〝テイマーが魔物を使役するときに使う〟と書いてある」
「テイマー?」
「魔物使いだ」
「もしかして、私が魔法で懐草の効果を引き出して、ウリ坊がそれを食べたから……」
「そういうことだ。お前は無意識のうちに、こいつを使役してしまったようだな」
「夏草……懐草……懐くさ……ダジャレじゃん!」
「ぷいぷい!」
「どうしよう……こうなったら連れて行くしかないよね……」
こうして、ひとりと一本、そして一匹の旅が始まった……。
って、餌は何をあげればいいの!? 全然わかんないんだけど!




