第12話 お金になるってことだ!
部屋に戻ると、そっと扉を閉めた。
高ぶる気持ちを落ち着かせようと、ひとまず大きく息を吸って、吐く。
「ふぅ……。なんか、急にお金が手に入っちゃったんだけど」
「そうだな。これでしばらくは旅費に困らないな」
「しばらくって、これ、私の世界だとどれくらいの額になるの?」
「金貨十五枚だったな……。お前の国の通貨価値に置き換えるなら……十五万円ほどだな」
「じゅ、じゅうごっ!?」
十五万円って、メイドカフェの時給何時間分!?
とたんに手の中の小袋がずしりと重みを増した気がして、危うく落としかける。
私は慌ててぎゅっと握り直した。
小袋様を慎重にテーブルの上に置くと、夢見心地のまま椅子に腰を下ろす。
さっきまで一文無しだったのに、バフ付きおにぎりを握っただけであっという間に大金持ちだよ。
魔法ってすごいなー。
って、そうそう!
「『バフについてあとで説明してやる』って言ってたよね。早く教えてよ!」
「ああ、そうだったな」
ステッキがひらりとテーブルの上に飛び乗る。
すると宝石が輝きはじめ、そこから伸びた光が壁に当たった。
次の瞬間、まるでプロジェクターのように映像が映し出される。
「すごい! そんなことできるの!?」
「まあな」
壁には、棒人間が赤い実を食べてムキムキになる様子が映っている。
そうして、ステッキ先生による、料理魔法とバフについての講義が始まった。
ひととおりの説明を受けた私は――
「なるほどね。食材にはもともと何かしらの効果がある。でも、普通に食べただけじゃほとんど効かない。私の料理魔法をかけると、その効果をぐっと強められるってことか」
「そうだ。良い効果は強力なバフに、悪い効果は最悪のデバフになる、ということだ。……俺も驚いたが、お前の魔法にはその力があるようだ」
「全部わかった! つまりこれ、お金になるってことだ!」
「おい! そういうことじゃないだろ!」
「そういうことだよ。今回は偶然おにぎりにバフがついて、お金をもらえたけどさ。これ、最初から〝攻撃力アップおにぎり〟として売り出したら、絶対みんな欲しがるよね!」
「そうかもしれんが……」
「それに、お金を稼げば馬車だって乗り継げるし、もっと早く王都にたどり着けるじゃん!」
「ま、まあ、そうだな……」
「そうと決まれば! お客さんがいっぱいいる大きな町に行こう!」
やばい。いける気しかしない。
◇
翌朝。
すっかり体力が回復した私は、ヘイゼルさんが作ってくれた朝食をもりもり食べていた。
今日の目標は売れるバフ食材探し。
まずは事前調査からだ。
「ランドルフさん、この村に火竜の実みたいな、何か特別な食材ってありませんか?」
「特別な食材? 火竜の実みたいな、どこにでもある食材が、か?」
「あ、そっか。えっとですね――」
私は、食材がもともと持つ効果と料理魔法の関係について、二人に説明した。
「つまり、お前さんが火竜の実の持つ力を引き出して、それを食った俺に攻撃力上昇のバフがかかった。そういうことだったんだな。それなら……ちょっと待っていろ。いいものをやろう」
ランドルフさんが席を立つ。
残ったヘイゼルさんが、感心したように口を開いた。
「火竜の実なんて、森にいくらでも実ってるから、別に珍しいものじゃないのよ。でも、あれに魔物を倒せるほどの力があったなんてね。驚いたわ。これからはもっと大切に扱わなくちゃ」
そうなんだ。
ランドルフさんがあれだけ興奮してたから、てっきり貴重な食材なのかと思ってた。
ありふれた食材にも効果があるとなると、むしろ探すのが大変そう。
そこへ、ランドルフさんが戻ってきた。
手には、一冊の古びた本がある。




