第11話 バフがかかったみたいです
「おにぎりに、バフがかかったみたいです」
たった今ステッキから聞いた言葉を、そのままランドルフさんに伝える。
「ばふ?」
私と同じ反応だ。
「あ、えっと……食べた人の力を強くする魔法、みたいなものです」
「なるほど……そういうわけか」
彼は小さくうなずき、顎に指を添えたまま険しい顔で考え込んだ。
「ということは、お前さんはやはり魔法使いだった、ということか。『ギルドから派遣されてきたわけじゃない』と言っていたから、てっきり道化師あたりだと思い込んでいた。普通の人はそんな格好をしないからな」
ど、道化師!?
それに、ナチュラルに魔法少女の格好をディスられてる!?
「ちょ、ランドルフさん! それって――」
抗議の声を上げようとした、そのときだった。
ランドルフさんが深く頭を下げた。
「だが、村を守れたのはお前のおかげだ。ありがとう」
「……え?」
「自警団じゃ、魔物を追い払うので精一杯だった。あいつ、皮膚が鎧みたいに硬くてな。槍で突いても、ろくに効きやしない。それを倒せたのは、お前がかけてくれた魔法のおかげだ。……本当に助かった。ありがとう」
ランドルフさんが再び深々と頭を下げた。
「え、あ、いや、それは、よかったです。はは……」
いままでとは別人みたいな態度に、思わずぽかんとしてしまう。
「――ってわけでな、ちょっと待っててくれ」
そう言い残して、ランドルフさんは席を立ち、そのまま部屋を出て行った。
よくわからないけど、村が助かったならよかった。
私も寝不足になった甲斐があったってものだ。
うんうんとうなずきながらパンをもそもそ食べていると、ランドルフさんが小さな袋を手に戻ってきた。
「これは礼だ。受け取ってくれ」
言うなり、その袋を私の前に置く。
同時に、カチャリ、と重たそうな音がした。
「これは?」
「魔法使いに支払うはずだった報酬だ。代わりに、お前さんが受け取ってくれ」
「えっ? 報酬ってことは、もしかして、もしかしなくても、お金!?」
「何を言っている。報酬といえば金だろう。ほら、間違いがないように、中身を確認してくれ」
「あ、はい」
小袋を手に取った瞬間、ずしりとした重みが右手にのしかかった。
慎重に紐をほどいて袋を逆さにすると、見慣れない金貨がじゃらじゃらとテーブルの上にこぼれ落ちる。
あっという間に、小さな黄金の山ができた。
「全部で十五枚あるはずだ。確認してくれ」
ランドルフさんに促されるまま、私は震える指で一枚ずつ数えていく。
金貨は十五枚あった。
「た、確かにありました。いいんですか? もらっちゃって……」
「村が平和になったんだ。これくらい安いもんだ」
そこへ、ヘイゼルさんが食後のお茶を持ってやってきて、くすっと笑った。
「本当にありがとうね。この人ったら、まるで子供みたいに興奮しちゃって。魔物を倒した話を、朝まで何度も何度もしてたのよ」
「おい! やめろって!」
ランドルフさんが顔を真っ赤にする。
ちょっとかわいい。
「さあ、お金をしまってちょうだい。食後のお茶にしましょう」
テーブルから落とさないように気をつけながら硬貨を小袋へ戻し、口をきつく縛る。
金貨十五枚か。
これで、王都へ向かう道が少しだけ見えてきた気がする。
それに、もしかして、私の魔法って……。
あとでステッキから詳しく聞かないと!




