第82話 再戦!ウォー・オーク・エンペラー①
宿へ戻った頃には、空はすでに茜色に染まり始めていた。
食堂に全員が集まると、セレナが話し始めた。
「フィエルの結界はやはり強力ね。それに、アレッタも爆裂矢を使えば深層でも十分に戦力になるわね」
「次は、ウォー・オーク・エンペラーですね」
リオが言うと、セレナは頷いた。
「ウォー・オーク・エンペラー戦の作戦を伝えるわ」
セレナは次に、ドルクとフィエルへ視線を向けた。
「ウォー・オーク・エンペラー戦では、前衛は真っ先に玉座からウォー・オーク・エンペラーを引き離して。うまく引き離せたら、フィエルは《聖域の檻》を使って。本体を結界で囲えば、壁の奥にある宝珠からの魔力供給を遮断できる可能性があるわ」
「なるほどな」
フィエルはすぐに頷いた。
「本体と宝珠を切り離せるか試すわけか」
「ええ。それで魔力供給を断てるなら、かなり楽になる。それに、仮に魔力供給を断てないとしても、ウォー・オーク・エンペラーを結界内に封じ込めればアレッタは安全に爆弾を設置できる」
セレナはそこで、アレッタへ視線を移した。
「前回は私とリオの共鳴魔法の連発で押し切った形だけど、壁をアレッタの爆弾で破壊できるなら、そのタイミングに合わせて壁の奥にある宝珠を共鳴魔法一発で破壊できる。宝珠の破壊後に、私も余力を残せるわ」
アレッタが真剣な表情で頷く。
「よほど分厚い壁でない限り、壁は僕の爆弾で壊せると思います」
「もし駄目なら?」
セレナが尋ねる。
「その時は……すみません。リオさんとセレナさんの共鳴魔法で押し切る形になります」
アレッタは苦笑しながら答える。
「分かったわ」
セレナも小さく微笑んだ。
「万が一、爆弾での壁の破壊に失敗したら、前回同様、私とリオの共鳴魔法で破壊ね」
「はい」
リオは頷いた。
「爆弾の設置は僕がやります。十秒程度で自動起爆するように設定できます」
アレッタの声には、確かな自信があった。
セレナは全員を見回す。
「明日は休息と準備にあてるわ。ウォー・オーク・エンペラー戦は、その翌日」
その言葉に、全員が頷いた。
レッド・サイクロプス・ギガントは倒した。
フィエルの《聖域の檻》は、確かに戻ってきた。
アレッタの存在も、大きな力になり始めている。
次は、ウォー・オーク・エンペラー。
そして、その先に待つのは――。
まだ誰も踏み込んでいない、未踏破領域――五十六階層だ。
◇
翌日。
ベルグランの宿の一室で、アレッタは小さな金属箱を机の上に置いた。
表面には細かな刻印が走り、その中心には、前日にレッド・サイクロプス・ギガントから得た炎の属性結晶が埋め込まれている。
「これが、昨日の炎の属性結晶を使って作った爆弾です」
見た目は小さい。
だが、リオの感覚には、その内側に圧縮された危険な魔力がはっきりと伝わっていた。
「今回使うのは、周囲を吹き飛ばすための爆弾ではありません。壁を壊すための爆弾です」
アレッタは真面目な顔で説明する。
「爆発を広げるのではなく、一方向へ叩きつけるように調整してあります」
「一点突破用、ということね」
セレナが言うと、アレッタは頷いた。
レオルが金属箱を見て、少しだけ身を引く。
「おいおい、そんなものを宿の部屋で出して大丈夫なのか?」
「大丈夫です。今は爆発しないようにしています」
「本当だろうな……宿で事故死とか勘弁してくれよ」
「安全装置もありますし、衝撃だけでは爆発しませんので大丈夫ですよ」
アレッタは不思議そうに首を傾げる。
「お師様は、もっと危険なものを普通に机に並べてましたよ?」
「いや。そんなのは参考にしないでくれ。頼むから」
レオルが呆れたように言うと、ミアが小さく笑った。
張り詰めすぎない空気。
だが、今日の目的ははっきりしている。
ウォー・オーク・エンペラー。
前回、蒼天の軌跡が苦戦した階層主。
けれど、今回は違う。
フィエルの《聖域の檻》がある。
アレッタの爆弾がある。
ギミックも、最初から分かっている。
セレナは全員を見回した。
「作戦は昨日確認した通りよ」
全員が頷く。
セレナは最後に、机の上の爆弾へ視線を落とした。
「前回と同じ相手。けれど、私達は前回とは違う。圧勝しましょう!」
その声に、全員の表情が引き締まる。
「行きましょう」
読んでいただきありがとうございます!!!
さて、読んでくださった素敵なあなた!
ページ下部の**【ブックマーク登録】や【評価(★★★★★)】**はお済みでしょうか?
あなたの小さな応援が、執筆の大きな原動力になります!
「続きが気になる!」「面白かった!」と思っていただけたら、ぜひポチッと応援よろしくお願いします! <(_ _)>




