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【毎日更新】亡霊の罠で女になった万年D級探索者、拾われた先で頭角を現す ~灯火の輪のリオ~  作者: アサトン


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第80話 リオ、フィエル、アレッタ

フィエルの復帰と、アレッタの正式加入が決まってから数日。


蒼天の軌跡の面々は、五十六階層以降の探索に向け、それぞれの準備を進めていた。


セレナは情報収集を。


レオルとドルクは、さらなる戦技の向上を。


ミアは支援魔法に加え、攻撃魔法の訓練を。


フィエルは、失っていた時間を取り戻すように剣を振るい。


アレッタは探索用のポーションや、深層で戦うための武器を用意していた。


そして、リオは――。


フィエルと同じ訓練所で、剣を握っていた。


蒼い魔力を剣へ集める。


刃が淡く輝いた次の瞬間、リオは踏み込み、訓練用の的へ剣を叩き込んだ。


「ブレーク・エッジ!」


乾いた破砕音とともに、的の表面が大きく抉れる。


王都のAランクパーティに所属する純剣士、カイゼルの必殺技。


それを、リオはすでに形にしていた。


「おいおい、リオちゃん」


隣で踏み込みの感覚を確かめていたフィエルが、呆れたように笑う。


「すでに剣技で俺が教えることはないように見えるんだが……」


「そんなことはありません」


リオは首を振った。


「今の剣技は、王都Aランクパーティのカイゼルさんの剣を真似ただけです」


「真似ただけで、あれか」


フィエルが苦笑する。


「けど、カイゼルさんと同じ威力は出せていません。俺はまだ、剣の基礎が足りないんです」


リオは、手の中の剣へ視線を落とした。


「フィエルさんの訓練を見ているだけでも、参考になるところはたくさんあります」


フィエルは再び苦笑して言った。


「まぁ、参考になるならいくらでも見てくれればいいが……」


そこで、フィエルは改めてリオを見る。


「リオちゃんは、ほんと凄いんだな」


リオは少し迷ってから、口を開いた。


「あの……フィエルさん」


「フィエルでいいぞ」


「あの、それなら、俺のこともリオちゃんじゃなく、リオと呼び捨てにしてもらえると嬉しいです」


「そうか。そうしよう」


「ありがとうございます」


そうしているところに、訓練場の入り口から声がかかった。


「フィエルさん、リオさん」


振り返ると、そこに立っていたのはアレッタだった。


「訓練はどうですか?」


「まぁ、問題ない。だいぶ勘を取り戻せた気はするな」


フィエルは軽く右脚を動かしてみせる。


「それは良かったです」


アレッタはほっとしたように笑ったあと、少しだけ表情を引き締めた。


「隣で、新しい武器のテストをしてもいいですか?」


「新しい武器?」


「はい。蒼天の軌跡の倉庫にあった素材をいくつか使わせてもらって、深層用に作ってみました」


「ほう。それはすごいな」


フィエルが興味深そうに目を細める。


「見せてもらっていいか?」


「はい。もちろんです」


アレッタは何もない空間に手を入れた。


次の瞬間、以前使っていたものより一回り大きなボウガンが現れる。


続けて取り出したのは、見慣れない大型の鏃を持つ矢だった。


リオは、その矢を見た瞬間、わずかに眉を寄せた。


矢というより、小さな爆弾に近い。


そんな危険な気配が、鏃の内側に閉じ込められていた。


「少し、音が大きいかもしれません」


アレッタはそう断ってから、訓練場の端にある強化標的へ狙いを定めた。


弦が鳴る。


放たれた矢は一直線に飛び、標的へ突き刺さった。


次の瞬間。


轟音が、訓練場を揺らした。


爆炎が標的を包み込み、砕けた破片が地面に転がる。


「……うん」


煙が薄れていくのを見ながら、アレッタは小さく頷いた。


「これなら、深層の敵にもある程度ダメージは与えられますかね」


「ある程度というか……」


フィエルが、半ば呆れたように標的を見る。


「雑魚なら倒せるんじゃないか? すごいな」


リオも頷いた。


「普通の矢じゃないですね。鏃の中に、何か仕込んであるんですか?」


「はい。爆裂薬と火属性の結晶石です。命中時の衝撃で内部の隔壁が割れて、反応するようにしてあります」


アレッタは少し照れたようにボウガンを下ろす。


「いつもは切り札として数本だけ持ってましたが、深層ではこれくらいを使わないと厳しいと思って」


「問題は、何本持っていけるかだな」


フィエルがそう言うと、アレッタは少しだけ胸を張った。


「爆裂矢だけなら、今のところ百本以上は用意できます」


「……それはすごい。自分のことは自分で守れるというだけのことはあるな」


フィエルが呆れたように笑う。


リオは、アレッタの背後に揺れる亜空間の気配を感じながら、改めて思った。


彼女は、単なる荷物持ちでも、調合役でもない。


深層で生き残るための手段を、自分の手で作り出せる。


アレッタもまた、蒼天の軌跡に加わるだけの力を持った探索者なのだ。


「リオ、アレッタ」


フィエルが呼び掛けた。


「二人には、俺の固有スキルも見せておこう」


爆裂矢の威力を確認したあと、フィエルがふと思い出したように言った。


「固有スキル、ですか?」


「ああ。深層、特に階層主戦では何度も使うことになるだろうからな」


フィエルは左腕の聖盾を構え、その縁を地面へ突き立てるように下ろした。


「聖域の檻――サンクチュアリ・ケイジ」


淡い光が地面を走る。


フィエルを中心に円が描かれ、そこから透明な膜が半球状に立ち上がった。


訓練場の一角が、静かに切り離される。


アレッタは息を呑んだ。


「……これが、俺がよく使っていた結界だ」


「魔物は通れず、俺達は通れる」


フィエルの説明は、それだけだった。


「すごい……これがあれば、45階層の階層主戦もかなり楽になる」


リオは初めて見るフィエルの結界に驚き、呟いた。


そして――アレッタは結界の縁に近づき、何もない空間を見つめるように目を細める。


「これがあれば、安全に素材の採取もできますね」


「そういう使い方もできるだろうな」


「罠の解除や、魔導装置の解析にも使えますね」


フィエルは小さく笑った。


「リオが違和感を感知する。俺が時間を作る。アレッタが解く。そういう場面も増えそうだな」


「そうですね」


リオが頷く。


「俺が先に違和感を拾えれば、アレッタさんが触る前に危険を減らせます」


「俺もウォー・オークエンペラー戦で深く広く感知をするようにしてからは、罠やダンジョンの違和感なんかも感知できるようになりました。」


「何かを感知したらアレッタさんに伝えますね」


「はい」


アレッタも、結界の縁を見つめたまま頷いた。


「時間さえ作ってもらえれば、解ける仕掛けは多いはずです」


そして、彼女ははっきりと言った。


「任せてください」

本編も遂に80話です!


ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

よろしければブクマか☆で評価いただければ作者のモチベーションが上がります!

よろしくお願いします。


明日も朝夜2話公開です!よろしく!

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