閑話:ミアの努力
リオ達がフィエルの説得に出かけていた頃……
ミアは焦っていた。
王都ではリオとすごく良い雰囲気だったのに。
ベルグランに帰ってからはリオはセレナとばかり仲良くしている。
いや、実際はお土産を渡したり、共鳴魔法の訓練をしたりしていただけなのかもしれない。
でも、わたしにはそう見えてしまった。
リオもちょっとひどい。
わたしと仲良く王都観光してる中でセレナに似合うペンダントを探していたなんて……
それに……あの言葉……
『中央の結晶も透明感のある美しい赤色で、セレナさんの炎魔法を思い出したんですけど』
『周りの装飾も、それを引き立たせていて凄く綺麗じゃないですか』
『なんというか……』
『ペンダント自体がまるでセレナさんみたいだなって』
あれじゃあ完全にセレナに綺麗だって……
セレナに惹かれているって……
言ってるのと同じじゃない……
それに、セレナもセレナだわ。
リオの言葉にあんなに顔を赤くして……
あれじゃあセレナもリオに気があるって言ってるようなもんじゃないの……
まぁそれはいいの……
良くないけど……今はそれは置いておくとして……
なんだかんだでリオはセレナと一緒にいることが多い。
そして、共鳴魔法。
リオとセレナの共鳴魔法は確かにすごかった。
アレクシアさんとの共鳴魔法をはるかに上回るあの威力。
本当に、リオとセレナさんは息があっていた。
単にセレナが先生役でリオにずっと教えていたから息が合ったのだと思いたい。
でも……それだけじゃない気もする……
それもこれも、わたしが攻撃魔法をろくに使えないからいけないんだ。
わたしが超級魔法を使えたら。
リオもわたしと共鳴魔法を使ってくれるはずだ。
そう。
支援魔法が得意だからそれでいいと思っていた。
でも、今のままじゃそのうちリオの一番はセレナになってしまう。
そんな気がする。
だから……
わたしも攻撃魔法を特訓する。
火属性はないけれど、水属性ならある。
頑張ってわたしもニブルヘイム・レクイエムを使えるようになるんだ。
まずは上級魔法、ハイドロ・ブレードを習得する。
それができたら超級魔法にも挑戦するんだ。
「よし。頑張れ!わたし!」
◇
上級魔法、ハイドロ・ブレード。
ウォーターカッターよりはるかに強力な水の刃で単体の敵を切り刻む魔法。
幸い、アレクシアさんやリオが使う魔法を何度も見ている。
これならばいけそうな気がする。
何度も聞いて覚えている呪文を唱える。
「集え、静寂なる一滴」
詠唱を始める。
「渦を巻き、速度を上げ、限界を超えて研ぎ澄まされよ」
「鋼をも断ち切る高圧の刃、荒れ狂う激流の化身となりて、標的の命を刈り取れ」
「逃避を許さぬ絶対の速度を以て、一閃の下に切り刻め!」
「ハイドロ・ブレード!!」
しかし。
魔法は発動しない。
形だけまねてもダメだ。
上級攻撃魔法を発動させるには、深く集中し、淀みなく、素早く、安定して魔力を圧縮し、放出する必要がある。
それができていない。
もっと集中するんだ。深く、深く。
そう考えて何度も何度も詠唱を重ねる。
しかし。
発動しない。
「うーん」
「支援魔法特化とか言って、攻撃魔法を訓練してこなかったツケかなぁ……」
「全然発動する感じがない」
「どうすればいいのかな……?」
◇
翌日、その翌日もミアは特訓を重ねる。
魔力切れが起きたら、マナポーションを飲み。
何度も何度も。
そして、リオ達が帰ってくるその前日……
ミアは今日も特訓を続けていた。
(思い出すんだ、リオのハイドロブレードを!)
「リオ………」
リオがハイドロブレードを発動する、その姿を心に思い浮かべ、呪文を唱える。
「集え、静寂なる一滴」
詠唱を始める。
「渦を巻き、速度を上げ、限界を超えて研ぎ澄まされよ」
魔力が圧縮されていく。
「鋼をも断ち切る高圧の刃、荒れ狂う激流の化身となりて、標的の命を刈り取れ」
魔力が細く、鋭く、密度を増しながら、一点へと収束していく。
「逃避を許さぬ絶対の速度を以て、一閃の下に切り刻め!」
いける!ミアは確信をもって最後の詠唱を唱えた。
「ハイドロ・ブレード!!」
その瞬間――
幾つもの鋭い水の刃が、的に向かって襲い掛かり、
的を粉砕した。
「で……できた!」
「できたわ!上級攻撃魔法ハイドロ・ブレード」
よし!
何とか上級魔法……
わたしは水属性特化じゃない。
ハイドロ・ブレードは出来ても、超級魔法ニブルヘイム・レクイエムには届かないかもしれない。
でも、いつかリオと共鳴魔法を唱えるんだ。
リオと息を合わせて。
「リオ、わたし頑張ってるよ」
「リオの一番でいるために」
そう言ってミアは、
いまはここにいないリオを思って微笑んだ。




