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【毎日更新】亡霊の罠で女になった万年D級探索者、拾われた先で頭角を現す ~灯火の輪のリオ~  作者: アサトン


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第78話 フィエル③

その頃、セレナの部屋では、レオルとセレナが向かい合って座っていた。


机の上には、昼間フィエルへ渡せなかった霊薬の瓶が置かれている。


セレナは深く息を吐いた。


「……やっぱり、簡単にはいかないわね」


レオルも苦笑する。


「まぁ、予想通りではある。あいつ、昔から変なところ頑固だからな」


セレナは霊薬へ視線を落とした。


「どうすれば飲んでくれるかしら……正直、私にもいい考えは浮かばないわ」


レオルは腕を組みながら、小さく肩を竦める。


「無理やり飲ませる訳にもいかねぇしな。下手に押せば、余計意固地になるだけだ」


部屋に重たい沈黙が落ちる。


その時だった。


――ドンッ!!


突然、勢いよく扉が開いた。


「セレナさん!」


「……っ!?」


驚いて振り返る二人の前に、息を切らしたリオが立っていた。


「あ、レオルさんも!」


「やりました!」


セレナが目を丸くする。


「リオ!? どうしたの!?」


リオは興奮した様子のまま、勢いよく言った。


「フィエルさんが!」


「霊薬を飲んでくれることになりました!!」


一瞬、部屋の時間が止まる。


「……は?」


レオルが間の抜けた声を漏らした。


セレナも呆然としている。


「え……?ほ、本当なの……?」


リオは何度も頷いた。


「はい!今、フィエルさんと話してきました!」


「条件付きですけど、霊薬を飲んでくれるって!」


セレナとレオルは顔を見合わせた。


二人とも、まだ信じられないという表情をしていた。



その後、リオから話を聞いたセレナとレオルはリオに問いかけていた。


「つまり」


「明日、霊薬を持っていけばフィエルは霊薬を飲んでくれる」


「もし、脚が完全に治ったら」


「蒼天の軌跡にも復帰してくれるってことね?」


「リオ、でかしたわ!一人でフィエルのところに行ったのはちょっと問題だけど」


「最高の結果を持ってきてくれたわね。ありがとう。リオ!」


リオは躊躇いながら……


「でも、条件をつけられてしまいましたけど」


「脚が治らない場合はそのまま帰れ……と」


セレナは笑う。


「それは……しょうがないわね。もしそうなっても、物事が悪化するわけじゃない。また冒険を続けて創世の雫を取ってくればいいだけだわ。そうでしょ、レオル」


レオルもまた笑顔で答えた。


「ああ、そうだな。俺たちが取ってくる霊薬をフィエルが使ってくれる。その約束をしてもらったと思えば、最高の結果だ」


「ほんとにありがとう、リオ」


セレナがいう。


「リオ、アレッタにも話をしておいて。明日、フィエルが霊薬を飲んでくれるようになったって」



そして翌朝、再び《蒼狼亭》を訪れた四人は、フィエルと共に酒場のテーブルを囲むように座っていた。


フィエルが口を開く。


「本当に俺なんかが飲んでいいんだな?売れば全員遊んで暮らせるくらいのものだぞ?」


セレナが笑いながら答えた。


「今更馬鹿なことを聞かないで」


「決意してくれてありがとう、フィエル」


フィエルは苦笑いをしながら


「礼ならそこの可愛いお嬢ちゃんに言ってくれ。その子の説得がなければ飲む気はなかった」


「じゃあいくぞ?」


フィエルが霊薬へ手を伸ばそうとした、その時だった。


「ま、待ってください!」


アレッタが慌てたように声を上げる。


全員の視線が集まり、アレッタは少し緊張した様子で口を開く。


「えっと……僕からもお願いがいくつかあります。」


「まず、義足は外していただいた方がいいですね。もし本当に欠損再生が起きるなら、邪魔になる可能性がありますので」


フィエルは苦笑した。


「それはそうだな。俺も気が急いていたようだ」


そして慣れた手つきで義足を外していく。


やがて、膝下から先を失った右脚が露わになり、アレッタは真剣な表情でその脚を見つめていた。


「あ、あと一つお願いがあるのですが……」


少し言いづらそうに視線を逸らす。


「フィエルさん、下着姿になっていただけませんか?身体を流れる魔力の変化や再生過程を、可能な限り細かく記録したいので……」


「ごめんなさい!これ、本当に重要なので!」


「お師様から可能な限り記録するように言われてますし、本当に欠損の再生がおこるのであれば体全体の魔力の流れも記録する必要があります!」


「分かった分かった」


アレッタの真剣さにフィエルが苦笑しながら手を振る。


「そこまで言われるとしょうがないな……ったく、錬金術師ってのは皆こうなのか?」


「お師様ほどじゃないです!」


アレッタは即答し、フィエルは小さく笑った。


そして、フィエルは下着姿になると、静かに霊薬の小瓶を手に取る。


虹色の液体が、光を受けてゆらりと揺れた。


「……さて。今度こそいくぞ」


そう呟き、フィエルは、霊薬を一気に飲み干した。


次の瞬間だった。


「――っ!?」


フィエルの表情が変わる。凄まじい魔力が、身体から一気に溢れ出した。


虹色の光が全身を包み込む。


「こ、これは……!」


アレッタが目を見開く。


身体を巡る魔力の流れが、目に見えるほど活性化していた。


そして、その光が、失われた右脚へ集中していく。


「すごい……」


リオが呟く。


膝下の断面から、まるで時間を巻き戻すように、肉体が再生し始めていた。


骨。


筋肉。


血管。


神経。


失われていたはずの右脚が、虹色の光の中で形を取り戻していく。


誰も言葉を発せなかった。


ただ、目の前の奇跡を見つめることしか出来なかった。


やがて、光が静かに収まっていく。


フィエルは呆然と、自分の右脚を見下ろしていた。


そこには、失われたはずの右脚が、完全な形で存在していた。


「……戻ってる」


フィエルが、震える声で呟く。


ゆっくりと。


恐る恐る。


右足へ力を込める。


動いた。


感覚がある。


フィエルの表情が崩れる。


「……動くぞ!」


セレナは涙をこらえきれず、震える声で「よかった……」と呟いた。


レオルは何かを堪えるように拳を握りしめていた。


リオも、思わず笑みを浮かべていた。


そして、アレッタだけは。


「す、凄い……!」


「本当に欠損再生が……!これが創世の雫……」


と、目を輝かせながら猛烈な勢いで可能な限りすべての情報を記録していたのだった。

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