第67話 ウォー・オーク・エンペラー②
必ず見つけてやる――!
リオはさらに感知範囲を広げていく。
ウォー・オーク・エンペラー。
その周囲。
足元、上空。
なにもない。
守護者の間全体。
空間を満たす魔力の流れ。
違和感はないか。
セレナさんの言う通り、何かあるはずだ。今もウォー・オーク・エンペラーの体内では魔力が膨れ上がっては消えていく。
あの魔力が、ウォー・オーク・エンペラーの耐久力・強さの秘密であることは間違いない。だが、自分自身であの巨大な魔力の渦を生み出し続けているとは思えない。
そんなことができるなら、ウォー・オーク・エンペラーはまさに無敵ではないか。
感知を広げる。広げる。広げる。
そして。
「……っ!?」
リオの表情が変わる。
これか!!
ウォー・オーク・エンペラーが最初に立っていた玉座の後ろ側。
最初は壁で気づかなかったが、その内部にかすかに魔力の揺らぎを感じた。
リオは、そこへ感知を集中させる。
「玉座の壁の裏にわずかな魔力反応があります!そちらを集中感知します!」
セレナはリオの言葉に驚き、だが、確かな希望をもって答える。
「お願い!リオ!」
その声にこたえるように、リオは壁の裏、壁の内部までを明らかにすべく、感知を集中する。
すると、そこには。
周囲の魔力が集まっている場所があった。
そして。その魔力が、一点へ収束し。
――消える。
次の瞬間、ウォー・オーク・エンペラー内部の魔力渦が膨れ上がった。
「これだ……!!間違いない!」
リオが叫ぶ。
「セレナさん!!玉座の後ろです!!」
「壁の内部に何かあります!!ウォー・オーク・エンペラー体内と連動しています!!」
セレナが即座に反応した。
「リオ、良くやってくれたわ……!」
レオルが叫ぶ。
「リオ、いいぞ!ドルク!もう少しの間押さえろ!!」
「……うむ!!」
ドルクが気力を振り絞り、全力でウォー・オーク・エンペラーを押し止める。
だが、ウォー・オーク・エンペラーも気づいたのだろう。
「グオオオオオオオッ!!!」
凄まじい咆哮と共に、魔力が膨れ上がる。
そして、初めて、ウォー・オーク・エンペラーが後方、玉座の方に動こうとする。
セレナが目を細める。
「間違いないわ……!リオ!壁を破壊するわよ!!共鳴魔法!」
「はい!!」
「ドルク、レオル、ウォー・オーク・エンペラーをそのまま抑えていて!」
「うむ!」
「おう!」
セレナとリオは玉座の後ろの壁に向け、魔力を集中する。
「――時は燃え尽き、影は焼かれ、万象は紅蓮の炉へと沈みゆく」
「――時は止まり、声は失われ、万物は白銀の棺へと収められる」
空気が震える。
「光なき深淵より噴き上がるは、命なき者たちが奏でる滅火の調べ」
「光なき深淵より響くは、命なき者たちが捧げる終焉の調べ」
魔力が収束を開始する。
「荒れ狂う劫火よ、世界の形を奪い、すべての執念を灰燼へと帰せよ」
「吹き荒ぶ吹雪よ、世界の体温を奪い、すべての未練を凍てつかせよ」
魔力が炎と氷の力に変換され、周囲を包み始める。
「逃れる術なき絶対の灼熱よ、迷える子らに終焉の裁きを与えん」
「逃れる術なき絶対の静寂よ、哀れな子らに永遠の眠りを与えん」
紅蓮と白銀。
「――轟き渡れ、『炎魔の鎮魂歌インフェルナル・レクイエム』!!」
「――響き渡れ、『氷魔の鎮魂歌ニブルヘイム・レクイエム』!!」
二つの超級魔法が混ざり合い、共鳴しあう。
ミアが息を呑む。
「……!」
レオルも叫ぶ。
「やれっ、セレナ、リオ!!」
紅蓮と白銀の奔流が壁へ直撃する。
轟音と共に守護者の間そのものが揺れた。
玉座が粉々になり、玉座裏の壁も砕け散ると、その内部に、青く輝く巨大な宝珠が姿を現した。
宝珠は魔力障壁で覆われ、いまだ健在。周囲の魔力を集めては、ウォー・オーク・エンペラーにその魔力を転送している。
リオが目を見開く。
「セレナさん!もう一発です!魔力障壁ごと宝珠を破壊しましょう!!」
「了解よ!!」
セレナがさらに魔力を解放する。
「――時は燃え尽き、影は焼かれ、万象は紅蓮の炉へと沈みゆく……」
リオもそれに合わせる。
「――時は止まり、声は失われ、万物は白銀の棺へと収められる……」
二人の魔力がさらに強く重なり合い。
青い宝珠へ、共鳴魔法の奔流が直撃した。
甲高い破砕音が鳴り響き、次の瞬間、魔力障壁を突破し、宝珠にその威力が届く!
青い宝珠が砕け散ると同時に、リオは感知した。
ウォー・オーク・エンペラー内部の魔力渦が急激に弱まったことを。
リオが叫ぶ。
「止まった!!ウォー・オーク・エンペラーの体内の魔力渦が止まりました!!」
レオルが笑う。
「ようやく本番だな!!」
ウォー・オーク・エンペラーが怒り狂ったように咆哮を上げる。
だが、違う。先ほどまでの圧倒的な力は感じられない。
ドルクの戦斧がうなりを上げ、セレナが杖を構える。
「ここからは総力戦よ!!」
「今度こそ――倒す!!」




