閑話: リオの勘違い闇魔法特訓③(完)
リオ視点の閑話 リオの勘違い闇魔法特訓②の続きです。
シリアス少なめ、ギャグ寄りのシリーズになり、これで完結です。
本編の流れを考えて良いタイミングで公開したかったのですが、
閑話を挟み込む良いタイミングがなかったのでここでの公開になりました。
リオが妙な方向へ努力しますので、軽い息抜き回として楽しんでいただければ幸いです。
リオは迷宮都市ベルグランに戻ってからも密かに闇魔法の研究を続けていた。
深夜。
リオは机へ大量のメモを並べながら、真剣な表情で唸っていた。
「……うーん」
《暗幕ダークカーテン》
《静寂領域サイレント・ゾーン》
どちらも成功している。
視界遮断。
音遮断。
術式としては成立している。
だが。
「足りない……」
リオは王都の図書館で名前だけを確認できた《無名の帳ブラインド・ベイル》について考えていた。
超級魔法。
名前しか残っていない魔法。
中級。
上級。
段階を踏んで研究した今なら、少しだけ分かる。
『帳』。
つまり、覆い隠す魔法。
しかも、超級魔法。
ならば、単に視界や音を消す程度では終わらないはずだ。
リオは静かに目を閉じた。
闇属性魔力。
視界。
音。
感知。
気配。
それら全てを遮断するイメージ。
世界から切り離す。
孤独。
絶対的な孤立。
その瞬間、リオの闇属性適性、そして感知能力が、リオの真剣さに反応した。
そして、無意識のうちに術式構築を補助し始めていったが、本人は気づかない。
本人の認識では、『努力による自力研究中』である。
「――よし」
リオは立ち上がった。
◇
翌日。
人気のない訓練場。
リオは自分自身を実験台に、闇魔法の開発を行っていた。
「いくぞ……!」
闇属性魔力が広がる。
黒い霧のような魔力。
だが、それは単なる闇ではない。
空間そのものを侵食するような異質な魔力。
リオは術式を起動する。
次の瞬間、世界が黒く染まった。
「――っ!?」
リオ自身ですら思わず息を呑む。
音が消える。
風が消える。
気配が消える。
感知能力すら鈍る。
まるで、世界に自分一人だけ取り残されたような感覚。
「……これ、は……」
リオは額へ汗を浮かべる。
想像以上に魔力消費が激しい。
だが、手応えはあった。
ゆっくりと術式解除。
黒い闇が霧散する。
光が戻る。
風が戻る。
音が戻る。
リオは大きく息を吐いた。
「……できた」
そして、その顔へゆっくり笑みが浮かぶ。
「できたぞ……!」
超級闇魔法。
《無名の帳ブラインド・ベイル》
リオは達成感に満ちた顔で拳を握った。
「よし……!」
「これなら深層攻略でも役立つはずだ!!」
本気で喜んでいた。
◇
数日後、蒼天の軌跡の訓練場。
「それで?」
「新しい魔法ってのは何なんだ?」
レオルが腕を組みながら聞く。
リオは少し得意げだった。
「闇魔法です!」
その瞬間、セレナが少し驚いた顔をする。
「闇魔法?」
「いつの間にそんなもの研究してたの?」
リオは胸を張る。
「頑張りました!」
セレナが嫌な予感を覚えた。
「……ちなみに、誰に教わったの?」
「誰にも教わってません!独学です!」
嫌な予感がさらに強くなる。
「文献を調べて自分で研究しました!」
「皆と同じように自分で努力してみました!!」
誇らしげにリオがいう。
「……は?」
セレナが固まった。
一方、リオは自信満々だった。
「やってみますね」
「体には害はないですし、すぐ解除しますので」
「実際に体験してみてください!」
「超級闇魔法――」
その瞬間。
セレナの顔色が変わる。
「ちょっと待っ――」
遅かった。
「《無名の帳ブラインド・ベイル》!!」
黒い闇が空間を侵食した。
視界が消える。
音が消える。
気配が消える。
魔力感知すら消える。
完全な暗闇。
完全な孤独。
「――っ!?」
「な、なんだこれ!!?」
レオルが叫ぶ。
だが、自分の声すら遠い。
ドルクが即座に距離を取ろうとするが、感知できない。
何も、分からない。
ミアが半泣きになる。
「こ、怖いぃぃぃぃ!!」
「リオ、やめてー!!」
セレナ一人だけ反応はなく、一見冷静だった。
完全にやせ我慢だったが。
数秒後、闇が解除された。
全員が息を呑む。
沈黙。
そして、セレナが真顔で口を開いた。
「……リオ」
「はい!」
「今の魔法、何?」
リオは誇らしげに答えた。
「超級闇魔法《無名の帳ブラインド・ベイル》です!」
セレナが静かに首を振る。
「違うわ」
「……え?」
「《無名の帳ブラインド・ベイル》はそんな魔法じゃないわ」
「たしかに」
「光を完全に遮断するところはあってる」
「でも、音も、気配も、魔力感知さえできなくなるなんてあなたのはすごすぎよ」
「おかしくなるかと思ったわ」
リオが固まる。
「え?」
セレナは頭を押さえながら説明した。
「闇魔法の文献は欠損が多いの。あなた、名前だけ見て独自解釈したでしょ……」
「結果、別物になってるわ」
「しかも、とんでもなく危険な方向へ」
リオが慌てる。
「で、でも!」
「これなら深層攻略でも役立ちますよね!?」
「たとえば階層主にこの魔法をかければ、階層主は何もできません!」
その瞬間、セレナの表情が微妙になった。
「……リオ」
「あなた、闇魔法についてどこまで勉強したの?」
「はい!王都の図書館であるだけの資料を読みました」
「まさか読み落としたなんてことはないと思うけど、基本、魔物の大半は闇属性よ」
リオの笑顔が止まる。
「……え?」
「深層の階層主なんて、闇耐性や無効持ちばかり」
「つまり――」
セレナは少し言いづらそうに続けた。
「ダンジョンではほぼ役に立たないと思っていいわ」
沈黙。
リオが固まる。
「……え?」
「いや、でも」
「え?」
「これ、頑張って覚えたんですけど……?」
セレナはリオの悲しそうな顔を見て思わず取り繕う。
「そ。そうね!」
「人間相手ならすごく強いわよ!」
「こんなのくらったら絶望するわ!」
「リオ、すごいわ!」
ミアも負けじとリオを励ます。
「そ。そうだよ!」
「これからひょっとしたら対人戦がないとは限らないし!」
「可能性は低いかもしれないけど!」
「リオ、すっごーい!!」
リオは遠い目をしていた。
「それって……」
「蒼天の軌跡の探索では無駄ってことですよね……?」
セレナが視線を逸らす。
「あれ?」
「わかっちゃう?」
リオは膝から崩れ落ちた。
その後。
リオは一週間ほど立ち直れなかった。
閑話で何かこうかなぁと思ってたらこんな感じになりました。
ちょっとふざけすぎと思われた方はそっと忘れていただければ助かります・・・
メインルートにはほとんど影響しない…筈
面白いと思った方も、ふざけるなと思った方も、
ページ下部の【☆☆☆☆☆】の評価や、ブックマークで応援していただけると執筆の励みになります。
本気で怒っておられる方がいらっしゃったら感想等に書いてもらえても作者は大喜びです。
よろしくお願いします。




