第61話 帰路
王都観光を終えた翌日。
リオとミアは、迷宮都市ベルグランへ戻るため、馬車で移動していた。
王都の巨大な城壁が霞んでいく。
「うーん」
ミアが残念そうな表情を浮かべたまま伸びをする。
「楽しかったねー、王都観光」
「ダンジョンはかなり大変だったけど、最後にリオとのいい思い出ができて良かった~」
「そうだな。楽しかった」
リオも目を細め、頷いた。
最初はセレナの代理ということで気負いもあったし、緊張していたのを思い出す。
何よりも、王都のAランクパーティとの共同戦だ。
蒼天の軌跡の代表として、失敗は許されない。
そんな緊張感があった。
だが、終わってみれば、大成功といってもよいだろう。
アレクシアからも感謝の言葉をもらえ、さらには特別報酬ともいえる王都フリーパス。
いつでも王都に来てくれという言葉ももらっている。
銀翼の剣の各メンバーとも仲良くなった。
そして。
カイゼルさんの剣技習得。
アレクシアさんとの連携による共鳴魔法。
目的であった王都ダンジョン、聖紋の迷宮の五十階層突破。
どれも最高の結果と言って良い気がする。
そして、個人的には、ミアとの王都観光も素晴らしかった。
昔憧れていた相手と二人きりですごした時間は特別楽しかった。
そして、昨晩――
蒼天の軌跡の次の目標のヒントとなるものも見つかった気がしていた。
◇
「なぁ、ミア」
「なぁに? リオ」
「セレナさんへのお土産、買い忘れた?」
ミアがくすくす笑う。
「それはない」
リオも笑い返した後、急に真面目な顔になり、話し始めた。
「ちょっと真剣な話だ」
ミアもすぐ表情を切り替えた。
「……何の話?」
リオは思い出すように口を開く。
「聖紋の迷宮五十階層の戦いのことなんだけど」
「最初の戦いでは、『いくら削っても削り切れず』撤退しただろ?」
「うん」
「それがどうかしたの?」
リオはミアの目を見つめて続ける。
「昨晩、ふと思ったんだ。どこかで聞いたような話だなって」
「それで思い出した」
「ミア」
「同じような状況に覚えはないか?」
「同じような状況……?」
ミアは下唇に手を当て、考え込む。
そして。
「あっ!」
勢いよく顔を上げた。
「アグレス坑道五十五階層!!」
「ウォー・オーク・エンペラー!!」
リオは頷く。
「そう」
「この前セレナさん、レオルさんに聞いた話と重なるなって」
「ってことは……」
ミアの顔が真剣になる。
「同じような仕組みで守られてるってこと!?」
「確証はないけど、可能性は高いと思う」
リオは自分の考えを説明した。
「聖紋の迷宮では、大理石から魔力供給されてた」
「だから、あのウォー・オーク・エンペラーにも、似たような仕組みがあるんじゃないかって思ったんだ」
「ミアは実際戦闘に参加してたんだから、何か覚えてないか? 例えば……同じような大理石の台座があったとか」
ミアは腕を組み、真剣に考え込む。
「うーん……」
「同じような大理石の台座は無かったと思う。さすがにそれなら私も覚えてるかな」
「でも、戦闘に集中してたし、似たような仕組みがあっても気づかなかった可能性はあるかな」
「……そうか」
リオは考えこむように下を向く。
そこで馬車が大きく揺れ、二人の間に沈黙が続いた後。
ミアが興奮した様子で続ける。
「でも!」
「もし本当に同じような仕組みだったのなら、攻略できるかもしれないってことだよね!?」
「ああ」
リオの目にも、期待の感情が宿っていた。
「帰ったらセレナさん達にも伝えてみよう」
「うん!」
ミアが力強く頷く。
その表情には、期待と興奮が浮かんでいた。
次なる攻略への道筋が。
少しだけ見え始めていた。
◇
数日後。
迷宮都市ベルグラン。
蒼天の軌跡が滞在している宿へ戻ったリオとミアを、セレナ達は暖かく迎え入れた。
「リオ、ミア」
「二人とも無事でよかったわ」
セレナは安堵したように微笑む。
レオルも腕を組んだまま頷いた。
「大まかな話は手紙で読んだが」
「無事、聖紋の迷宮五十階層を突破したんだってな」
ドルクも笑う。
「うむ」
レオルが続けて言う。
「詳細はわからないが、アレクシアさん、お前のことをべた褒めだったらしいじゃないか」
「リオがいなければ攻略は難しかったかもしれない・・だったか」
「い、いえ」
リオは慌てて首を振る。
「俺は得意なところで力を貸しただけです」
「銀翼の剣の皆さんが強かったからですよ」
ミアが横から笑う。
「でも確かに」
「リオがいなかったら突破できなかったと思うよ?」
「ミアまで……」
セレナは口元に笑みを浮かべて頷いた。
「詳しく聞かせてもらえる?」
「五十階層で、何があったのか」
リオは表情を引き締める。
「はい」
「それについては大事な話があります」
「かなり特殊な階層主でした」
「ホワイト・ダイア・ガーディアンは、単に硬くて耐久力が高かっただけじゃなかったんです」




