第60話 王都観光②
翌日。
「ふっふふーん」
ミアは朝からご機嫌だった。
そして、リオは、自分の今の姿に戸惑いながらも、ミアとの観光を楽しんでいた。
昨日、ミアに連れられ美容院に行った後は服飾店、装飾品店でミアと一緒に着飾ることになった。
正直ずっと逃げたかったが──
結局は最後までミアの言うがままに付き合うことになってしまった。
我ながら優柔不断だとも思うが、ミアの幸せそうな顔を見るのは好きだ。
そして今。
王都の中央大通りをミアと歩いている。
そう、歩いているのだが、なんか周囲の反応がとても気になる。
通り過ぎる人々がちらちらとこちらを見ているのだ。
特に男性の視線が多い。
「……なんか俺たち、見られてないか?」
「そりゃねー」
ミアはどこか満足そうだった。
「今のリオ、凄く目立つもん」
「目立ちたくないんだけど……」
そんなことを言いながら歩いていると。
「ねぇねぇ君たち~。どこいくの?」
昼間から顔を赤くした男たち数人が、リオ達の前に現れ、声をかけて来た。
「女の子二人じゃ危ないよ~。俺たちが護衛してあげるよ」
その中の一人、腰に長剣をぶら下げたリーゼントの男がそんなことを言ってきた。
「俺は男だ!」
リオがいつもの調子で声を上げると、男たちは全員で声をあげて笑った。
「じゃあその胸はなんなんだ~?嘘をつくならもう少しうまくつきな」
そういって男たちはリオの肩に手を回そうとする。
――だが、リオ達は一瞬で男たちの目の前から消えていた。
◇
数分後、路地裏では。
「なんなんだ、あいつら……」
全力の身体強化でミアを抱き上げて路地裏に一瞬で移動したリオが、ミアを抱き上げたまま、呟いていた。
「リ、リオ……」
御姫様抱っこの体勢で抱き上げられたミアは顔を真っ赤にしたままリオに話しかける。
「お、おろしてくれない?」
「あ、ああ。ミア、ごめん」
そう言って、ミアを地面に降ろしたリオは、相変わらず路地裏の陰からナンパ男たちを睨んでいた。
「ミアが可愛いからって俺が横にいるのにからんでくるなよ」
そう呟いたリオに、ミアが内心で呟く。
(リオ……多分リオがあいつらのターゲットだったよ。皆リオを見てたもん……)
◇
それからしばらくして二人は王都中央広場へ到着した。
巨大な白い噴水。
周囲では大道芸人が芸を披露している。
子供達が楽しそうに走り回り、観光客達が写真用の魔導具を構えていた。
「わぁ……!」
ミアの目が輝く。
「ここ好きなんだよねー!」
「ここ、確かにいい雰囲気だな……」
歴史ある建物が立ち並び、広場はごみ一つないほど美しく整えられていた。
リオも、素直に感心した。
その後も。
二人は王都を歩き回った。
王都英雄広場。
巨大な探索者ギルド本部。
空へ伸びる白亜の魔法学院。
王都最大市場。
行く先々でミアが楽しそうに説明し、リオは素直に感心していた。
◇
昼頃。
「次これ食べよ!」
ミアが屋台へ突撃した。
「まだ食べるのか?」
「王都観光といえば食べ歩きです!」
既にリオの手には色々な食べ物が持たされていた。
串焼き。
果物飴。
香辛料の効いた揚げ物。
王都名物らしい。
「ほら、リオも!」
「あ、ああ」
リオも食べようかと考えた瞬間。
「これ、美味しいよ。はい。あーん」
「……は?」
手がふさがっているリオに、ミアが当然のように自分の串を差し出していた。
それを見て、近くの屋台の店主がニヤニヤしていた。
「お、仲良いねぇ!」
「ち、違っ……!」
リオが一気に赤くなる。
ミアも途中で自分の行動に気づいたらしい。
「~~~っ!?」
「ち、違うの!」
「これは、その、勢いで……!」
二人揃って真っ赤になっていた。
店主が豪快に笑う。
「若いねぇ!」
「だから違いますって!!」
◇
その後。
二人は王都中心部へ向かって歩いていた。
不意に。
ミアが足を止める。
「……ねぇ、リオ」
「ん?」
ミアは少し照れたように笑った。
「今日のリオ、本当に綺麗だよ」
「……っ」
リオの動きが止まる。
真正面から言われると、反応に困る。
しかも。
言った本人であるミアも、どんどん顔が赤くなっていく。
「な、なんか改めて言うと恥ずかしいねこれ!!」
「だったら言うなよ……」
「だ、だって本当に綺麗なんだもん!」
「それに」
「凄くかっこいい」
リオは視線を逸らした。
綺麗といわれるのは複雑だが、ミアにかっこいいといってもらえるのは正直嬉しい。
つい、ミアに本音で返してしまう。
「ミ、ミアだって」
「すごく綺麗だ」
ミアは顔を真っ赤にした。
「ま、真顔でそういうこと言うの禁止!」
リオは笑いながら言い返す。
「ミアが最初にいったんじゃないか」
◇
そして夜。
ライトアップされた王都の街並みを歩きながら。
ミアが小さく呟く。
「今日は楽しかったね」
「ああ」
リオも静かに頷く。
最初は戸惑うことばかりだった。
だが。
こうして歩いてみると、悪くない。
王都の景色も。
賑やかな空気も。
だけど、それ以上に──隣で嬉しそうに笑うミアを見るのが楽しかった。
「ミア、今日はありがとう」
「ミアと過ごせてホントに楽しかった」
その言葉を聞いた瞬間。
ミアがぱっと笑顔になる。
「ほんと!?」
「リオが楽しんでくれたならよかった!」
その笑顔を見て。
リオも微笑むのだった。




