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【毎日更新】亡霊の罠で女になった万年D級探索者、拾われた先で頭角を現す ~灯火の輪のリオ~  作者: アサトン


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第59話 王都観光①

翌朝。


銀翼の剣の屋敷。


「よし!」


「今日は王都観光だよ!!」


朝からミアはやたらとテンションが高かった。


銀翼の剣から貰った王都フリーパス。


それを嬉しそうにひらひら振っている。


一方。


リオも楽しみにしていた。


五十階層攻略後の休養期間。


王都をゆっくり見て回れる機会など、そうそうない。


しかも。


ミアが案内してくれるらしい。


「王都ってそんなに広いのか?」


「広いよー!」


「美味しいお店もいっぱいあるし、面白いところもいっぱいあるし!」


「絶対楽しませてあげるからね!」


ミアは自信満々だった。


リオも苦笑する。


「じゃあ今日は頼りにしてる」


「うん!」


ミアは嬉しそうに頷いた。


そして。


二人は王都中央区へやって来た。



「すごいな……」


リオは周囲を見回しながら感心していた。


大通りには人波が続いていた。


高級店の並ぶ街並みに、屋台の声が彩りを添える。


貴族の馬車がゆっくりと通り過ぎていく。


「でしょ?」


「ベルグランも賑やかではあるけど、王都はやっぱり華やかさが違うよね」


そんなことを言いながらしばらく歩いた後。


ミアが不意に立ち止まった。


「よし!」


「まずはここ!」


「……?」


リオが顔を上げると、そこは。


白を基調とした高級感溢れる建物だった。


入口には綺麗な女性達が出入りしている。


「……ミア?」


「ここ、何の店なんだ?」


ミアは満面の笑みで答えた。


「美容室!」


リオの動きが止まった。


「…………え?」


「観光は明日から!」


「まずはちゃんとお互いを磨きましょう!」


「いや、待ってくれ」


「なんでそうなるんだ?」


リオは戸惑う。


だが。


ミアは当然のように続けた。


「今後はリオも外へ出ること増えるんだから」


「ちゃんとしたお店に行く時は、それなりの準備が必要なの!」


「これ、ベルグランでミアに選んでもらった服だぞ?」


「恥ずかしくないんじゃないのか?」


リオは自分の服を見下ろす。


以前、ベルグランでミアが選んでくれた服。


リオとしてはかなりまともな格好をしているつもりだった。


だが。


ミアはびしっと指を突きつけた。


「そういうことじゃないの!」


「それは普段着!」


「ちょっとおしゃれなお店に行く時には、それなりの服装、それなりの事前準備が必要なんだから!」


「そ、そういうものなのか……?」


「そういうものです!」


ミアは胸を張った。


その顔は妙に自信満々だった。


「まぁ私に任せて!」


「今日はリオを磨き上げてあげる!」


「王都観光は明日から!」


「磨き上げるって……」


リオはちょっと不安になる。


だが。


ミア自身も今日はいつもより気合いが入っているように見えた。


髪も、服も、どこか普段より丁寧に整えている気がする。


そんなミアを見ていると。


強く拒否する気にはなれなかった。


「……なあ、ミア」


「ん?」


「俺もミアとは楽しみたいし、言うこと聞くのはやぶさかではないんだが……」


リオは店を見上げながら、困ったように続ける。


「さすがに、女性専門のこういう店には抵抗がある」


ミアは一瞬きょとんとした後。


「あー……」


どこか納得したように頷いた。


「まぁ、リオはそういう反応するよね」


「するだろ……」


リオは遠い目になる。


「俺、見た目はともかく中身は男だぞ?」


「こういう場所、どう考えても場違いだろ」


だが。


「リオ、どうしても嫌?」


「本当にどうしても嫌なら無理にとは言わないよ?」


「でもさ」


「私はリオに綺麗になって欲しい」


「そんなリオと王都を回りたい」


「どうしてもだめかな?」


「今のままのリオももちろん良いんだけど」


「王都という特別な場所で、完璧に整えた特別なリオと過ごしてみたいの」


「ダメなら諦めるけど」


リオは言葉に詰まる。


そう言われると弱かった。


ミアは本気で今日を楽しみにしていた。


それは朝からずっと伝わってきている。


しかも。


支援魔法の件だけじゃなく、蒼天の軌跡に加入して依頼、こちらが一方的に世話になっている負い目もある。


リオは大きくため息を吐いた。


「……わかった」


「そこまで言うなら付き合うよ」


その瞬間。


ミアの顔がぱっと明るくなった。


「ほんと!?」


「ありがとう、リオ!」



店内へ入る。


受付の女性が二人を見た瞬間。


丁寧に頭を下げた。


「いらっしゃいませ」


だが。


ミアが銀翼の剣の黒いカードを見せた瞬間。


空気が変わる。


「――っ」


「こちらへどうぞ」


「特別室へご案内いたします」


リオが小声で聞く。


「な、なんかすごい反応なんだけど……?」


「銀翼の剣のカードだもん!」


ミアは当然のように言った。


そして。


案内された特別室。


ふかふかの椅子。


落ち着いた香り。


静かな音楽。


どう考えても自分には似つかわしくない場所だった。


その時。


数人の女性スタッフが入室した。


「お二人とも、全身を磨き上げるトータルリファインコースでよろしいですね」


「お一人ずつ個室で施術を始めさせていただきます」


「施術……」


リオはどうにも落ち着かない。


だが。


ミアは隣で嬉しそうに笑っていた。


「大丈夫だよ!」


「すぐ慣れるから!」


「女の子って大変なんだな……」


リオが小さく呟く。


ミアはくすっと笑った。


「ふふっ」


「そうだよー」


「じゃ、あとでねー」


そう言ってミアは店員に連れられて奥の部屋へ消えていく。


リオも別の店員に案内され、個室へ入った。


「では、施術を始めますね」


「まずはこちらへどうぞ」


言われるまま、リオはベッドへ横になる。


次の瞬間。


「ひゃっ!?」


冷たいオイルが背中へ触れ、思わず変な声が出た。


店員がくすりと笑う。


「ふふっ。皆さま最初は驚かれるんですよ」


「そ、そういうものなんですか……?」


「はい♪」


そのまま丁寧に施術が始まる。


肌を撫でられ。


髪を整えられ。


顔へ何かを塗られる。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


「顔にも何か塗るんですか!?」


「お肌の手入れですよ♪」


「女の子ってホントに大変なんだな……」


リオは遠い目になった。


正直逃げたい。


だが、ミアと約束した手前逃げるわけにもいかない。


そんなことを考えながらもベッドに横になっていると。


静かな音楽と落ち着いた香りの中で、少しずつ身体の力が抜けていく。


(……なんか……疲れが…)


その時、店員が優しく声をかけた。


「お疲れでしたら、そのままお休みいただいても大丈夫ですよ」


「……え?」


「皆さま途中で眠られることも多いんです」


リオは目を見開く。


だが。


たしかに。


五十階層攻略からここ数日。


ずっと気が張っていた。


静かな空間。


暖かな手。


心地よい香り。


気づけば。


まぶたが少しずつ重くなっていく。


(……眠い……)


店員が小さく微笑む。


「ふふっ」


「どうぞ、ごゆっくり」


そしてリオは、抗う間もなく静かな眠りへ落ちていった。



「……ん」


リオがゆっくり目を開ける。


どうやら眠ってしまっていたらしい。


ぼんやりしたまま身体を起こす。


その瞬間。


「……え?」


鏡へ映った自分を見て固まった。


肌。


髪。


爪。


全身。


明らかに以前と違う。


髪には艶があり。


肌は驚くほど滑らかになっている。


「な、なんだこれ……」


思わず自分の頬を触る。


すべすべしていた。


その時。


「起きた?」


隣の部屋からミアがやって来る。


そして。


リオを見た瞬間。


ぱっと顔を輝かせた。


「わぁ……!」


「やっぱりすごい!」


「リオ、めちゃくちゃ綺麗になってる!!」


「き、綺麗って……」


リオは複雑そうな顔になる。


だが。


自分でも分かる。


明らかに変わっていた。


ミアは満足そうに頷く。


「うん!」


「素材がいいから絶対こうなると思ったんだよねー♪」


そして。


ミアはくすっと笑った。


「それにしても、リオ」


「よく逃げなかったねー」


「私はまた、“俺は男だー!”とか言って逃げるかと思ってたよ」


「うっ……」


リオは思わず口を閉ざす。


否定できなかった。


実際のところ、逃げたかった。


だが。


ミアと約束したこともあり、逃げられないでいるうち、疲れで眠ってしまったのだ。


「……途中で眠った」


ミアが吹き出した。


「あははっ!」


「まぁ、リオは疲れてるよねー」


「それ、すごくリオらしいー!」


そう言って笑うミア自身も、いつも以上に綺麗になっていた。


艶のある髪。


磨かれた肌。


ほんのり施された化粧。


いつもの可愛らしさがさらに引き立っている。


リオは思わず見つめてしまった。


「……ミア、すごいな」


「えっ」


ミアが声を上げる。


「そ、そう?」


「うん」


「なんか……綺麗だ」


その瞬間。


ミアの顔が一気に赤くなった。


「~~~っ!?」


「そ、そういうのサラッと言うの禁止!!」


「え?」


「もう!!」


ミアは真っ赤なままリオの背中を軽く叩く。


だが。


その表情は、とても嬉しそうだった。

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