第58話 報酬
◇
聖紋の迷宮五十階層。
ホワイト・ダイア・ガーディアン討伐から数日後。
銀翼の剣の屋敷には、久しぶりに穏やかな空気が流れていた。
長年攻略を阻まれていた五十階層。
その突破は王都でも大きな話題となっているらしく、銀翼の剣には各所から祝辞や依頼が殺到していた。
もっとも。
当の本人達はというと。
「いやぁ~、久しぶりに何も考えず酒飲めるな!!」
ロガーナが昼間から豪快に笑っていた。
リュザードも珍しく苦笑している。
ミレティアはソファへ寝転がりながらぐったりしていた。
「もうしばらく戦いたくないわぁ~……」
そんな中。
アレクシアがリオへ視線を向ける。
「そういえばリオ」
「はい?」
「お前のおかげでかなり余裕を持って五十階層を攻略できた」
「本来なら、一ヶ月はかかる想定だったからな」
リオは首を振る。
「いえ、俺なんて――」
「謙遜するな」
アレクシアは即座に遮った。
「実際、お前がいなければ突破は難しかったと思う」
「特に」
「お前が大理石からの魔力供給を発見してくれなければ、いくら削り切ろうとしても徒労に終わってた可能性は高い」
静かな口調。
だが。
その言葉には本気の評価が込められていた。
「礼を言う」
「ありがとう」
リオは少し照れくさそうに頭を掻いた。
「さて……と」
「報酬の件だ」
アレクシアが封筒をテーブルへ置いた。
「これはセレナとの契約通りの報酬だ」
「そして、こっちはおまけだ」
「銀翼の剣からのささやかな礼だ」
「使ってくれ」
「おまけ……?」
リオは封筒を開く。
中には二枚の黒いカードが入っていた。
金色の紋章が刻まれている。
「なんですか? これ」
アレクシアが答える。
「まぁ簡単に言えば王都フリーパスだ」
「王都のほとんどの店で使える」
「支払いは銀翼の剣持ちだ」
リオが固まった。
「えっ」
「お、王都フリーパスなんて」
「おまけどころじゃないじゃないですか!!」
「受け取れませんよ!」
ロガーナが笑う。
「安心しろ!」
「お前はそれだけのことをしてくれたんだ!!」
ミレティアもひらひらと手を振る。
「そうそう~」
「遠慮しないで使っちゃいなさいよぉ~」
アレクシアはニヤリと笑った。
「せっかくだ」
「ミアと王都観光でもしてくるといい」
隣で話を聞いていたミアの目が輝いた。
「王都観光!?」
「しかもフリーパス付き!?」
アレクシアは面白そうに続ける。
「アタシの目は節穴じゃない」
「リオを連れて王都観光するつもりだったんだろう?」
「最大限に楽しめるよう、銀翼の剣からのプレゼントだ」
ミアは満面の笑みを浮かべて答える!
「アレクシアさん!最高です!!」
「ありがとうございます!!楽しんできます!!」
「ねぇ、リオ」
「これを断っちゃ失礼だよ!!」
「そ、そういうものなのかな」
リオは戸惑いながらも素直に頭を下げた。
「アレクシアさん、銀翼の剣の皆さん、ありがとうございます」
「楽しませてもらいます」
アレクシアは笑いながら答える。
「いいってことよ」
「王都を好きになってくれ」
「こっちに引っ越してくれるならいくらでも歓迎するぞ」
「どうせ一週間ほど休養だ」
「好きに遊んでこい」
「王都は広いぞ」
「美味い店も多い」
「リオ」
「前から約束してたでしょ」
「私がいろんなところ連れて行ってあげる」
「一緒に楽しもうね!」
リオは戸惑いながらも、ミアとの王都観光を楽しみにするのだった。




