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【毎日更新】亡霊の罠で女になった万年D級探索者、拾われた先で頭角を現す ~灯火の輪のリオ~  作者: アサトン


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第55話 攻略への対話


シルバー・リザード・センチネル討伐後。


銀翼の剣の屋敷へ戻ったリオ達は、その日の探索を終えていた。


四十階層の階層主討伐直後ということもあり、夕食後は比較的静かな空気が流れている。


そんな中。


アレクシアがテーブルへ地図を広げた。


「さて」


「そろそろ本題に入るか」


リオも表情を引き締める。


アレクシアが指差したのは、聖紋の迷宮五十階層。


「ここだ」


「ホワイト・ダイア・ガーディアン」


「これが今、我々の攻略を止めている階層主だ」


リオは地図を見つめる。


アレクシアは続けた。


「以前も話した通り、あいつは水・氷属性への絶対耐性を持つ」


「つまり私の水・氷魔法はほぼ通じん」


「さらに物理耐性も異常だ」


「ロガーナやカイゼルの攻撃ですら決定打にならん」


ロガーナが腕を組んだまま鼻を鳴らす。


「硬ぇんだよ、あのデカブツ」


「削れてる感じはあるんだが」


「いくら削っても削り切れねぇ」


カイゼルも静かに頷いた。


「そうだな」


「斬れてはいる」


アレクシアはリオを見る。


「そこでお前だ」


「最初はセレナの炎魔法で突破できるか試す予定だったが」


「おまえにその代理をしてもらう」


リオは小さく頷く。


インフェルナル・レクイエム。


既に自分はセレナの超級魔法を使用できる。


上級魔法のファイア・ランスも取得済だ。


炎魔法が有効ならば、かなりのダメージを与えることはできるだろう。


だが。


アレクシアはさらに続けた。


「だが、お前にはもう一つ試してもらいたいことがある。」


「セレナの代わりにおまえに来てもらった最大の理由だ」


「……え?」


セレナさんの代わりを務めるのが役割だとばかり思っていたリオは驚く。


「お前の感知能力だ」


アレクシアの視線が鋭くなる。


「お前と魔法訓練していた時に感じたことだが」


「おまえにはほかの人間には見えないものまで見えている」


「でなければ私の魔法をたった三回見ただけで再現などできるはずもない」


「あの階層主とは何度も戦っているんだが」


「違和感がある」


「ただ硬いだけじゃない気がする」


「今のままではいくらダメージを与えても倒せないんじゃないか?」


「そんな気がしている」


「なんでもいい」


「戦闘中あいつをお前の全力の感知能力で感知してくれ」


リオは静かに頷いた。


「分かりました」


「俺の力が役に立つなら、望むところです」


アレクシアは笑う。


「よし」


「では全員一日休養」


「その後、再び迷宮へ向かう」



翌日。


銀翼の剣の屋敷裏にある訓練場。


乾いた金属音が響く。


リオは木剣を握り、何度も剣を振っていた。


脳裏へ浮かぶのは、シルバー・リザード・センチネル戦。


カイゼルの剣。


あの一閃。


剣へ纏わせた魔力を、斬撃の瞬間、一点へ叩き込む技術。


全力の感知能力によって、魔力の流れも、圧縮も、解放の瞬間も理解できている。


だからこそ。


できる気がした。


「――っ!」


リオが踏み込む。


木剣を振り抜く瞬間。


魔力を一点へ収束。


そして叩き込む。


――バンッ!!


空気が弾けた。


木剣の先端から衝撃が走る。


「……できた?」


だが。


違う。


威力が低すぎる。


カイゼルの一撃のような威力がでない。


「ホントにお前は化け物だな」


後ろから声がした。


振り返る。


カイゼルだった。


「カイゼルさん!」


カイゼルはリオの木剣を見る。


そして小さく息を吐いた。


「確かに盗めとはいったが」


「……え?」


「一日で盗む奴があるか」


「あきれてものが言えん」


本当に呆れているような声音。


だが、少しだけ笑っているようにも見えた。


リオは慌てる。


「い、いえ! まだ全然です!」


「カイゼルさんみたいな威力が全然出ません!」


カイゼルは訓練場へ入りながら言う。


「当然だ」


「お前のはまだなじんでない」


「……なじんでない?」


「ああ」


カイゼルは木剣を拾う。


そして。


リオにその剣技を見せた。


その瞬間。


――ズンッ!!


重い衝撃音。


訓練用の鉄板に深い亀裂が走った。


リオは息を呑む。


違う。


同じ技術なのに。


威力がまるで違う。


「お前の再現能力は大したもんだ」


「曲がりなりにも俺の剣を再現できている」


「だが」


「身体強化」


「踏み込み」


「振り抜き」


「それらを全て正確に合わせ、一連の技にできなければ威力はでない」


カイゼルは短く言った。


リオは真剣な表情で頷く。


「やってるつもりではあるんですが」


カイゼルが答える。


「そうだろうな」


「だから再現能力はたいしたもんだと言っている」


「だが」


「俺から見ればまだコンマ何秒かずつずれが発生している」


「それが威力が出ない原因だ」


確かに、魔力操作に意識が向きすぎていたのかもしれない。


「……なるほど」


リオは木剣を握り直す。


今度は。


身体強化。


踏み込み。


振り抜き。


全身の連動。


それらを意識した上で、技に魔力を載せる。


そして。


振る。


――バンッ!!


先ほどよりも重い衝撃。


地面へ浅く亀裂が走った。


カイゼルが目を細める。


「……本当に飲み込みが早いな」


「いや、まだ全然です!」


リオは即座に否定した。


「もっとちゃんとカイゼルさんの剣を理解したいです」


そこでカイゼルが口を挟む。


「いや」


「そこまでできれば」


「あとは積み重ねだ」


「何千、何万と繰り返せ」


「そうすれば、身体へ馴染む」


「もっとも」


「お前はそれを何十、何百でやってしまうのかもしれんがな」


静かな声。


リオは木剣を見つめた。


確かに。


自分は見れば理解できる。


再現もできる。


だが。


カイゼルの剣には、積み重ねた時間がある。


そこが違う。


「……はい」


リオは強く頷いた。


「もっと鍛えます!」


カイゼルは小さく鼻で笑う。


「好きにしろ」


そのまま訓練場を去っていく。


リオは再び木剣を構えた。


(カイゼルさんの剣を……)


(自分のものにする……!)


その目には、強い闘志が宿っていた。


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