閑話 レオル&ドルク
「はっ!」
鋭い踏み込み。
レオルの槍が唸る。
だが。
直後。
横から振り下ろされたドルクの大斧によって軌道を弾かれた。
「ちっ!」
後ろへ飛び退く。
土埃が舞う。
蒼天の軌跡が普段使っている訓練場。
王都へ向かったリオとミアが不在の中、レオル達は普段通り訓練を続けていた。
ドルクが大斧を肩へ担ぐ。
「……鈍ったか?」
「馬鹿言え」
「むしろ最近調子いいくらいだ」
「だがすまん。確かにちょっと考え事をしていた」
レオルは肩を回しながら苦笑する。
本音を言えば、焦ってはいる。
リオ。
あいつの成長速度がおかしい。
このままだとすぐに追い抜かれる気がする。
最初に会った時。
正直、まず目に入ったのは見た目だった。
可愛い女の子。
そんな印象。
だが。
まとっていた魔力は普通じゃなかった。
なんだこいつ。
最初はそう思った。
しかも話を聞けば。
元D級探索者。
灯火の輪所属。
しかも男。
意味が分からなかった。
今でもたまに分からなくなる。
だが。
一緒にいると、あいつは妙に面白い。
……いや。
面白いって言うのは失礼かもしれないが。
「あいつ、俺は男だ!」
とか言いながら。
どんどん今の女の身体を使いこなして強くなっていく。
最初は身体強化すらまともに理解してなかったくせに。
今じゃ超級魔法だ。
フレアストーム連打だ。
感知能力も化け物。
しかも本人に全く自覚がない。
「……ほんと意味わかんねぇよな」
思わず漏れた呟き。
ドルクが短く答える。
「……ああ」
「あいつは化け物だ」
「うちの要になるかもしれん」
レオルは苦笑した。
間違いない。
もう誰もリオを馬鹿にできない。
総合力なら。
既に蒼天の軌跡の中心、いやトップといった方がいいのかもしれない。
特に。
四十五階層。
あのサイクロプス・ギガント戦。
さらに乱入してきたブルー・サイクロプス・ギガント。
普通なら全滅していてもおかしくなかった。
だが。
リオが一人で立て直した。
「お前の相手は俺だ!!」
あの時の姿は今でも覚えている。
正直、かなり格好良かった。
……まぁ、本人に言ったら調子に乗りそうだから言わねぇけど。
いや。
あいつの場合。
逆に「そんなことないです!」って全力否定しそうか。
レオルは苦笑する。
そして。
ふと思ってドルクの意見も聞いてみる。
「あいつ」
「このまま深層下部まで行ける実力を身につけたとして」
「本当に男に戻るつもりなのかね?」
まぁ、本人は戻る気みたいだが。
間違いなく周囲が黙ってない。
苦笑しながら続ける。
「皆絶対止めるよなぁ」
俺も止めるだろうしな。
「特にミアのやつは」
あいつは絶対やばい。
最近のミアを見てると分かる。
リオを見てる時、時々顔が赤い。
完全に恋する乙女だ。
「……女同士でどうするんだか知らねぇけどな」
レオルが肩を竦める。
ドルクがぼそりと呟いた。
「……まぁ、ミアは止めるな。間違いなく」
「だろ?」
「戻る方法壊しかねねぇぞ、あいつ」
二人は思わず苦笑した。
だが。
おかしいのはミアだけじゃない。
セレナもだ。
四十五階層。
リオが無茶をした時。
セレナは確かに言った。
『あなたまで失ったら』
『私は立ち直れないかもしれない』
あれは本気だった。
間違いなく。
先生。
あるいは姉みたいな感情だと思っていたが。
どう考えてもそれだけじゃない。
まぁ。
本人は自覚ないかもしれねぇけど。
「……ま、あいつらのことはあいつらの問題だ」
レオルは訓練用の槍を肩へ担ぐ。
「どうでもよくはねぇが」
「なるようになったら、その時祝福してやりゃいい」
ドルクも静かに頷いた。
「……ああ」
レオルは再び槍を構える。
それより。
今は。
リオに置いていかれないことの方が大事だ。
あいつがどんどん強くなるなら。
自分達もより強くならなければならない。
「よし、続けるぞドルク!」
「……来い」
再び槍と大斧がぶつかり合った。
ミア、セレナときたらやはりレオル編も・・と思ったんですが
ドルク編で1話書ける気がしないためレオル&ドルクの抱き合わせです(笑)
お楽しみいただければ幸いです。
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