第53話 作戦会議
その日の夕方には、銀翼の剣とリオ達は聖紋の迷宮四十階層最奥へ到達していた。
銀翼の剣の面々は、少しあきれながら呟く。
「ほんとに夕方には四十階層に着いちまったよ」
「とんでもないな」
「ああ」
「リオちゃん、すごいわねぇ~」
そして。
巨大な石造りの扉。
その前でアレクシアが振り返る。
「さて」
「階層主戦の作戦確認だ」
全員の視線が集まる。
アレクシアはいつも通りという口調で続けた。
「まずリオ」
「開幕でニブルヘイム・レクイエムを撃ってくれ」
「はい」
リオは素直に頷いた。
ロガーナが思わず口を挟む。
「おい」
「ここまでフレアストームを撃ちまくってきただろ」
「さらに超級魔法なんて撃って、マナは大丈夫か?」
リオは首を傾げた。
「ええ。問題ありません」
数秒の沈黙。
ロガーナが額を押さえる。
「そうかよ……」
ミレティアが苦笑した。
「あらあら~♪」
「やっぱり感覚がおかしくなるわねぇ~」
アレクシアは笑った。
「その辺は諦めろ」
「こいつはそういう奴だ」
「まぁここでは私が撃ってもいいんだが」
「ここでは五十階層のリオとの連携を意識してるからな」
「五十階層ではリオにセレナのインフェルナル・レクイエムを撃ってもらい、取り巻きを殲滅してもらうつもりだ」
「その予行演習も兼ねている」
リオは頷いて答える。
「わかりました」
アレクシアは話を戻した。
「取り巻きを片付けた後はいつも通りだ」
「ロガーナが前を抑える」
「ミレティアが光魔法での支援」
「私とカイゼル、リュザードで削り切る」
そして。
「リオ」
「お前も前衛に参加してくれ」
「今回は他の前衛の邪魔だけはしないように気をつけろ」
「いいな」
「はい」
リオは真剣な顔で頷いた。
その横で。
カイゼルは無言のまま腕を組んでいる。
リオは思わず視線を向けた。
昨日の訓練場。
『勝手に盗め』
そう言われた。
ならば。
戦いながら見るしかない。
邪魔にならない位置。
戦闘へ参加できる位置。
そして。
カイゼルさんの剣、身体制御、魔力制御、技の発動のタイミング。
その全てを把握できるように意識する。
アレクシアは今度はミアへ視線を向ける。
「ミア」
「お前は……見ててくれてもいいんだが」
「支援中心に頼む」
「光以外の身体強化、防御強化を皆に」
「それと弱体魔法」
「階層主へ叩き込んでくれ」
「任せて」
「私だって蒼天の軌跡のA級探索者だってところを見せちゃうからね」
ミアが頷く。
アレクシアは全員を見回した。
「質問はあるか?」
誰も口を開かない。
十分に慣れた役割。
十分に理解した作戦。
アレクシアは満足そうに頷いた。
「よし」
そして巨大な石扉へ向き直る。
「行くぞ」
重厚な石扉がゆっくりと開き始めた。
その先には。
銀色の金属光沢を持つ巨大なリザード。
シルバー・リザード・センチネル。
その周囲にはスレート・リザード。
クイック・リザード。
さらに数体のシルバー・スケイル・リザードが控えている。
アレクシアが口元を歪めた。
「まぁ、銀翼の剣だけで十分対処可能な連中だ」
「肩慣らしといこう」
「リオ、開演の鐘を鳴らしてくれ」
リオは静かに前へ出る。
ニブルヘイム・レクイエムの詠唱を開始するために。
【お知らせ】明日も閑話ありの日。 朝06:10(閑話)と夜19:10(メインパート)の「1日2回更新」をお届けします!ミア編の次はセレナ編の閑話ですので、ぜひ朝の通勤・通学時間と、夜のゴールデンタイムにお楽しみください!
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