閑話: ミア
最近、なんだかおかしい。
王都の街を歩きながら、ミアはそんなことを考えていた。
周囲には沢山の人。
露店。
貴族風の馬車。
迷宮都市ベルグランとは比べ物にならないほど大きな街並み。
だが。
気が付くと考えているのは、いつも同じ相手だった。
リオ。
「……はぁ」
思わずため息が漏れる。
最初に出会ったのはアグレス坑道のセーフティエリア。
意識を失って倒れているところを私が発見した。
最初に見た時は。
(かわいい!)
って思った。
危うく口に出しかけたくらいだ。
その時は名前も知らなかった。
その時のリオは何故かすぐに逃げる様に去っていった。
なので、その後会えるとも思ってなかった。
次に出会ったのは中層。
リオはその可愛い顔や華奢に見える身体に似合わずすごく強かった。
ソロで中層の魔物を圧倒していた。
ただ、とても危なっかしい感じがした。
それは今でもそうだ。
まぁそれは一旦おいておくけど。
話してみれば妙に礼儀正しい。
真面目。
優しい。
戦闘以外でも気配りができる。
一緒にいて嫌なところが全然ない。
その上。
中層攻略祝いの時。
リオは言った。
「……男だった頃、ミアに憧れてたんだよ!」
あれは正直かなり嬉しかった。
セレナじゃなくて、私。
セレナが多くの探索者に憧れられているのは知っている。
でも、リオは私に憧れていた。
その事実が、妙に胸に残っている。
その後もリオと関わっていくのは色々面白かった。
リオは服とか下着に全くの無頓着だった。
……以前は男性だったらしいからしょうがないかもしれないけど。
だから。
一緒に買い物へ行った時。
私が色々選んであげた。
可愛い服。
可愛い下着。
リオの服装を。
下着に至るまで。
私の好みで固めちゃった。
リオはあまり気付いてないみたいだったけど。
(……すごく似合ってた)
思い出すだけで少し頬が緩む。
そして。
ミアの足が止まった。
脳裏へ浮かぶのは。
四十五階層。
サイクロプス・ギガント戦。
予定外に乱入してきたブルーサイクロプス・ギガント。
あの絶望的な状況。
私も何かしなければいけない。
そういう思いはあった。
でも、身体が動かなかった。
そんな中。
リオが前へ出た。
「お前の相手は俺だ!!」
あの瞬間。
心臓が大きく跳ねあがった。
かっこよかった。
本当に。
見惚れてしまうくらいに。
そして。
たぶん。
あそこからだ。
おかしくなったのは。
気が付けば。
最近私はいつもリオを目で追っている。
訓練してる時も。
ご飯を食べてる時も。
誰かと話してる時も。
気になる。
放っておけない。
一緒にいると楽しい。
もっと話したいと思う。
「……これって」
そこまで呟き。
ミアは顔を赤くした。
そして誤魔化すように頭を振る。
「いやいやいや……」
「落ち着け、私……」
だが。
最近気になることがもう一つあった。
セレナだ。
セレナの様子がおかしくなったのも、あの四十五階層からだった。
それまでは。
リオを見守るお姉さん。
あるいは魔法と魔力制御を教える先生。
そんな感じだった。
でも。
あの時。
リオが無茶をした時。
セレナは震える声で言った。
「あなたまで失ったら……」
「私は立ち直れないかもしれない」
あれは絶対本気だった。
あんな状況で冗談なんて言えるわけがない。
「……むぅ」
ミアは小さく頬を膨らませる。
セレナのことは好きだ。
優しいし。
頼れるし。
ずっとお世話になってきた。
でも。
だからって。
リオの一番を譲る気はない。
元々。
リオは私に憧れていた。
セレナじゃなくて。
私に。
これからも。
リオの一番は私であってほしい。
だから。
私は王都までついてきたんだ。
セレナには悪いけど。
王都で。
もっとリオと仲良くなる。
それが今回、王都へ来た私の一番の目的。
「……よしっ!」
ミアはぱんっと両手で自分の頬を叩いた。
そして。
少しだけ照れたように笑う。
「リオ」
「ずっと仲良くしようね」
本日から4日間、閑話ありの日が続きます。
6:10 の閑話と、19:10の本編、どちらもお楽しみいただければ幸いです。
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