第49話 銀翼の剣
「まぁ、自己紹介はこれくらいでいいだろう」
アレクシアが立ち上がる。
「我々は探索者だからな」
「本当の自己紹介はダンジョンでだ」
ロガーナが豪快に笑う。
「違いねぇ!」
「口で説明するより見せた方が早い!」
アレクシアは頷いた。
「準備ができ次第出発する」
「リオ、お前も準備しろ」
「はい」
◇
翌朝。
リオとミアは銀翼の剣と共に王都近郊にある迷宮へ向かっていた。
聖紋の迷宮。
王都を代表する迷宮の一つ。
アレクシアさんによると、王都近辺には迷宮が三つ。
後は比較的最近発見された古代遺跡なんかがあるそうだ。
古代遺跡といっても古代遺物が数個見つかった以外は何も発見されず、最近は人もあまり訪れないらしいが。
そして、この聖紋の迷宮はアグレス坑道とは違い、罠や仕掛けが数多く存在することで知られている。
巨大な石造りの入口を前にして、リオは思わず見上げた。
「これが……聖紋の迷宮」
「そうだ」
アレクシアが頷く。
「今日は三十階層まで向かう」
「ちょうど三十階層と四十階層の階層主が再出現しているはずだからな」
「まずは肩慣らしだ」
肩慣らし。
その言葉にリオは少し苦笑した。
三十階層の階層主など、蒼天の軌跡でも油断できる相手ではない。
だが銀翼の剣にとっては違うらしい。
◇
迷宮へ入ってしばらく。
先頭を歩いていたリュザードが不意に手を上げた。
「止まれ」
全員が足を止める。
リオは周囲を見回した。
何もない。
少なくともそう見えた。
「どうしたんですか?」
「床を見ろ」
言われて目を凝らす。
すると石畳の一部が、僅かに沈んでいた。
「罠だな」
リュザードは腰の道具袋から細い金具を取り出す。
カチリ。
小さな音が響いた。
「進んでいいぞ」
それだけ言って歩き出す。
ミアが感心したように口を開く。
「さすがだね」
「私は全然気づかなかった」
「これくらいは基本だ」
リュザードは振り返りもしない。
「聖紋の迷宮ではな」
そういいながら、振り返りもせず、
リュザードは風魔法を放った。
気が付くと。
リュザードの背後では二体の魔物が切り裂かれていた。
◇
さらに進む。
今度は通路の奥から頭が犬、体が人型の魔物が現れた。
五体のコボルド・ファングの群れだ。
それを見たロガーナが一歩前へ出る。
「おっ」
「ここは自分にまかせろ!」
巨大なハルバードを肩から降ろす。
次の瞬間。
コボルド・ファングたちが一斉に飛び掛かった。
ロガーナの突きが先頭の一体を吹き飛ばす。
さらに横薙ぎ。
三体まとめて壁へ叩きつけた。
そのあまりの威力に、一匹が逃げようとする。
その瞬間。
ハルバードの鉤がそいつの脚を引っ掛けた。
コボルド・ファングが盛大に転倒する。
「どこ行こうとしてんだ」
ロガーナが笑う。
「お前の相手は自分だ!」
リオは目を見開いた。
守るだけではない。
敵を自分へ向ける。
敵の動きを支配している。
そんな戦い方だった。
◇
さらに奥へ進む。
今度は骸骨兵の群れだ。
スケルトン・ソルジャー。
全部で五体。
リオが剣へ手を伸ばしかけた時だった。
「あらあらあら~」
ミレティアが前へ出る。
「私も少し、いい所を見せようかしら~?」
杖を軽く掲げた。
「バニッシュ・ライト~」
白い光が迷宮内を駆け抜ける。
次の瞬間。
五体のスケルトン・ソルジャーが一斉に崩れ落ちた。
悲鳴すら上げられない。
そのまま灰となって消滅する。
リオは驚いてミレティアを見る。
「え……」
「うふふ~♪」
ミレティアは嬉しそうに笑った。
◇
その後も探索は続く。
そしてリオの視線は自然と一人へ向いていた。
カイゼル。
黒髪の剣士。
彼は派手なことをしない。
魔法も使わない。
だが。
一歩踏み込む。
剣が閃く。
それだけで魔物が倒れる。
硬い甲殻、硬い鎧を持つ魔物ですら例外ではない。
まるで最初からそこに弱点が見えているかのように。
無駄がない。
速く。
美しく。
甲殻も鎧もものともせず。
一刀のもとに切り裂く。
気が付けばリオは戦闘そのものではなく、カイゼルの動きばかりを目で追っていた。
(すごい……)
(これが王都のAランクパーティーを代表する純剣士……)
そして。
元々が剣士であるリオは心の底から思った。
この剣を学びたい、と。
読んでいただきありがとうございます。面白いと思っていただけたら、ページ下部の【☆☆☆☆☆】の評価や、ブックマークで応援していただけると執筆の励みになります!m(_ _)m




