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【毎日更新】亡霊の罠で女になった万年D級探索者、拾われた先で頭角を現す ~灯火の輪のリオ~  作者: アサトン


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第42話 ニブルヘイム・レクイエム

翌日。


アレクシアは朝食を終えると、リオへ声をかけた。


「行くぞ」


「どこへです?」


「超級魔法の訓練だ」


アレクシアは肩をすくめる。


「訓練場じゃ無理だ」


「被害が大きすぎる」


「実際にダンジョンへ行く」



二人が向かったのは二十五階層。


中層の中でも比較的広い空間が多い階層だ。


リオは感知能力を広げる。


探索者の反応。


魔物の反応。


周囲を慎重に確認する。


しばらくして。


「大丈夫です」


「近くに探索者はいません」


アレクシアが頷いた。


「なら始めるか」


その時だった。


感知の先に複数の反応が現れる。


リオが報告する。


「前方」


「オーガが八体です」


アレクシアがニヤリと笑った。


「ちょうどいい」


「的にしてやる」


二人は広場へ移動する。


やがて。


巨大な棍棒を持ったオーガの群れが姿を現した。


普通の探索者なら警戒する相手だ。


だが。


アレクシアは動かない。


杖をゆっくり構えた。


「よく見ておけ」


その瞬間。


リオの表情が変わった。


膨大な魔力。


上級魔法とは比較にならない。


魔力の量だけではない。


質が違う。


周囲の空気そのものが変化していく。


温度が下がる。


地面に白い霜が広がる。


オーガ達も異変を感じたのか、警戒したように足を止めた。


アレクシアが静かに詠唱を始める。


「――時は止まり、声は失われ、万物は白銀の棺へと収められる」


リオは感知能力を全開にした。


魔力の流れを追う。


だが。


見えない。


いや。


見えているのに理解できない。


膨大すぎる。


複雑すぎる。


「光なき深淵より響くは、命なき者たちが捧げる終焉の調べ」


空気が震える。


温度がさらに下がる。


遠くの岩肌が凍り始めた。


リオは息を呑む。


魔力の圧縮。


魔力の循環。


詠唱との同期。


どれも上級魔法を遥かに超えていた。


「吹き荒ぶ吹雪よ、世界の体温を奪い、すべての未練を凍てつかせよ」


オーガ達が駆け出す。


だが。


遅い。


既に周囲はアレクシアの支配領域だった。


「逃れる術なき絶対の静寂よ、哀れな子らに永遠の眠りを与えん」


リオは必死に感知する。


一つも見逃すまいと。


だが。


追いつかない。


理解が追いつかない。


魔力の流れ、圧縮、展開。


表面上の、わかりやすい流れは理解できる。


しかし、奥深いところの理解ができない。


そして。


アレクシアが杖を振り下ろした。


「――響き渡れ」


「『氷魔の鎮魂歌ニブルヘルム・レクイエム』」


世界が白く染まった。


轟音すらない。


ただ。


絶対的な静寂。


吹雪が広場を飲み込む。


次の瞬間。


オーガ達は動きを止めていた。


全身が氷に覆われている。


まるで最初から氷像だったかのように。


一歩。


また一歩。


そして。


砕けた。


氷の彫像となったオーガ達が、粉雪のように崩れ落ちていく。


リオは呆然と立ち尽くした。


「どうだ?」


アレクシアが振り返る。


「見えたか?」


リオは正直に答えた。


「何が起きているか、表面上の魔力の動きは見えました」


「でも」


「深い部分が理解できません」


アレクシアは笑った。


「そうだろうな」


「さすがに一度で理解されたりしたら、私の努力は何だったんだって話だな」


「まぁ今日は三度見せてやる」


「今理解できなかった部分を補いながら、三度でなんとかしてみろ」


「私もさすがに超級魔法は三,四度打つのが限界だ」


「四度目を撃てば、マナ切れで地上に帰るのもおぼつかなくなる恐れがある」


「だから、三度だ」


「いいな」



二度めのアレクシアの詠唱。


「――時は止まり、声は失われ・・・」


リオは前回の感知能力でとらえられた表面部分より深い部分。


そこに感知を集中する。


深い部分の魔力の複雑な流れのような見えた気がした。


必死でその流れをとらえる。


「今度はどうだ?」


アレクシアの質問に、リオも答える。


「一度目よりはよさそうです」


「深い部分の魔力の流れのようなものが見えた気がしました。」


「じゃあ、いけそうか?」


リオは答える。


「はい。まだ少しわからない部分がありますが、やってみます。」


リオの魔法詠唱。


アレクシアと一見寸分たがわないように聞こえるその詠唱をリオは唱えた。


しかし途中で崩壊する。


霧散。


アレクシアは黙って見ていた。


そして三度目。


大きく息を吐く。


顔色が少し悪い。


「これが最後だ」


リオが驚く。


「大丈夫なんですか?」


「大丈夫じゃねえな」


アレクシアは苦笑した。


「さすがに超級魔法は何発も撃てるもんじゃない」


そして。


真剣な目でリオを見る。


「二回目までで見落とした部分を探せ」


「深く見ろ。上級魔法をさらに深く、強く、鋭く練り上げないと超級魔法は完成しない」


「その部分を見逃すな」


リオは黙って頷いた。


感知能力を極限まで高める。


一回目。


見えなかった部分。


二回目。


取りこぼした部分。


それらを補うように。


さらに深く。


さらに奥へ。


アレクシアの魔力へ意識を向ける。


そして。


三度目の


『氷魔の鎮魂歌ニブルヘイム・レクイエム


が発動した。



魔法が終わる。


しばらく沈黙。


アレクシアが尋ねた。


「どうだ?」


リオは目を閉じたまま答える。


「……掴めた」


「ような気がします」


アレクシアが眉を上げる。


「マジか」


リオは静かに頷いた。


そして。


訓練場の中央へ歩き出す。


「やってみます」


周囲の空気が震えた。


膨大な魔力が集まり始める。


アレクシアの目が見開かれる。


「いけるのか?」


リオはゆっくりと口を開いた。


「――時は止まり、声は失われ、万物は白銀の棺へと収められる」


「光なき深淵より響くは、命なき者たちが捧げる終焉の調べ」


「吹き荒ぶ吹雪よ、世界の体温を奪い、すべての未練を凍てつかせよ」


「逃れるすべなき絶対の静寂よ、哀れな子らに永遠の眠りを与えん」


「――響き渡れ、『 氷魔の鎮魂歌ニブルヘルム・レクイエム』」


瞬間。


世界が白く染まった。

読んでいただきありがとうございます!

今日はアレクシアの超級魔法の訓練回でした。

リオもいよいよ超級魔法使い!まずは魔導士として誰からも一目置かれる存在になっていきます。

楽しんでいただけたら嬉しいです。

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