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【毎日更新】亡霊の罠で女になった万年D級探索者、拾われた先で頭角を現す ~灯火の輪のリオ~  作者: アサトン


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第38話 ギルド

翌日。


蒼天の軌跡の面々は、迷宮都市ベルグランの探索者ギルドを訪れていた。


目的は二つ。


リオの情報更新と、B級昇格試験の申請だ。


受付へ向かうと、一人の女性職員が笑顔で迎える。


フェリシア。


ベルグラン探索者ギルドでも人気の受付嬢だ。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


セレナが前に出た。


「探索者登録情報の確認と、昇格試験の申請をお願いしたいのですが」


「かしこまりました」


フェリシアは笑顔で頷く。


「探索者名をお願いします」


リオが答えた。


「リオです」


「はい。少々お待ちください」


フェリシアは資料を確認する。


しばらくして顔を上げた。


「あ、ありました」


「リオ。D級探索者。ソロ活動中。浅層を中心に活動」


そして続きを読む。


「男性。二十歳」


フェリシアは頷いた。


「こちらですね?」


リオも頷く。


「あ、それです」


フェリシアは不思議そうな顔をした。


「それです?」


そしてリオを見る。


「失礼ですが、あなたはどなたですか?」


「え?」


「昇格試験を申請したいリオさんはどちらにいらっしゃるのでしょうか?」


リオは慌てた。


「俺です!」


フェリシアは目を瞬かせる。


「はぁ?」


そして改めて資料とリオを見比べた。


「ですが、登録情報では男性となっています」


「あなたは女性ですよね?」


リオは言葉に詰まった。


「そ、それは……色々ありまして」


フェリシアはさらに困惑した表情になる。


その時。


セレナが口を開いた。


「少しよろしいでしょうか」


フェリシアが視線を向ける。


「私はAランクパーティ、蒼天の軌跡のセレナです。リオの言っていることは事実です。蒼天の軌跡のメンバー全員が保証します」


レオル達も頷く。


フェリシアはしばらく考え込んだ。


やがて頭を下げる。


「少々お待ちください。ギルド長に確認して参ります」



十分ほど後。


戻ってきたフェリシアは先程より真面目な表情をしていた。


「お待たせいたしました。ギルド長ヴァルドールに確認いたしました」


リオは身を乗り出す。


「どうでしたか?」


「現在、ギルドも人手不足です」


フェリシアは資料を見ながら続ける。


「Aランクパーティ蒼天の軌跡のメンバー全員が保証する実力があるのであれば、リオさんのB級昇格試験については、ギルド長権限で受理するそうです」


リオの顔が明るくなる。


「本当ですか!?やった!」


ミアも笑顔になる。


「良かったね~。リオ」


だが、そこでフェリシアは咳払いをした。


「ただし」


リオの笑顔が止まる。


「条件があります」


「条件?」


フェリシアは事務的に告げた。


「女性探索者として新規登録していただきます」


一瞬の沈黙の後、


「なんでそうなるんだ!」


ベルグラン探索者ギルドにリオの声が響いた。


フェリシアは首を傾げる。


「何か問題がありますか?」


「問題しかない!」


「俺は男だ!」


フェリシアは不思議そうな顔のままだった。


「ですが、現在の性別は女性ですよね?」


リオは固まる。


フェリシアはさらに続けた。


「それとも、身体検査を受ければ男性であると証明できるのですか?そうであれば、そのように手続きを進めますが」


リオは言葉を失った。


「う……」


フェリシアは淡々と説明する。


「申し訳ありませんが、性転換したという話を、ギルドとして承認することはできません」


「ですので、登録されている男性探索者リオの情報を、現在こちらにいらっしゃるリオさんの情報で更新することはできません」


「現在の性別で新規登録してください」




その夜、リオは宿の自室に戻っていた。


1週間後にミアの付き添いでB級昇格試験を受けることになった。


セレナさんが付き合ってくれるものと思っていたが、なんでもセレナさんは王都に用事があるらしい。


B級昇格試験を受けられるのは素直に嬉しい。


ついこの前までD級探索者だったのだ。


蒼天の軌跡に出会わなければ、こんな話は考えられなかっただろう。


だが、ベッドに腰掛けたリオは頭を抱えていた。


「女性探索者……」


呟く。


「女性……」


頭を抱える。


「うがーっ!!」


思わず叫んだ。


どう考えてもおかしい。


俺は男だ。


なのに、探索者登録は女性。


ギルドの受付嬢も当然のように女性扱い、蒼天の軌跡の面々も誰も反対しなかった。


いや、ミアに至っては面白そうに笑っていた。


「なんなんだよもう……」


その時だった。


左腕の腕輪が輝き、聞き覚えのある声が響く。


「やっほー!!」


リオは嫌な予感しかしなかった。


振り返ると、案の定、亡霊が満面の笑みで浮かんでいる。


「B級探索者おめでとう!!」


リオが眉をひそめる。


「うるさい!試験はこれからだ!まだB級じゃない!」


亡霊は気にしない。


「そこかい?今の君の能力で落ちるわけないじゃん!」


「そして何より」


「女性探索者!!」


「最高だよね!!」


リオの額に青筋が浮かぶ。


「うるさい!」


亡霊は腹を抱えた。


「あっははははははは!!今日は笑ったよー!」


「本当は今日現れるつもりはなかったんだけど!」


リオは嫌そうな顔をする。


亡霊はさらに笑った。


「あまりに面白かったんで!」


「来ちゃった!」


「あはははははは!!」


「笑うな!」


リオが怒鳴る。


亡霊は涙を拭きながら言った。


「だってさー、女性探索者として登録してください、だよ?」


「あははははは!」


「うるさい!」


リオは枕を投げつけたが、当然亡霊には当たらない。


亡霊はまだ笑っていた。


「それにさー」


亡霊はニヤニヤした。


「もう男に戻せとは言わないんだねー」


リオは固まった。


「そ、それは……」


言葉に詰まる。


頭の中に蒼天の軌跡の顔が浮かんだ。


セレナ。


ミア。


レオル。


ドルク。


今日の会話も思い出す。


ようやく恩を返せると思った。


ようやく仲間として役に立てると思った。


もし今、男に戻ったらその全てがなくなる。


「……」


亡霊は何も言わず、ただニヤニヤしている。


リオは顔を真っ赤にした。


「えーい!!」


勢いよく立ち上がる。


「今はまだ!」


「今はまだ、お前に会えてないからだ!」


亡霊が首を傾げた。


「ふーん?」


リオは指を突きつける。


「覚悟しろ!」


「迷宮を攻略して!」


「絶対お前のところまで行ってやる!」


「その時は男に戻してもらうからな!!」


亡霊は少しだけ目を細めた。


だが。


次の瞬間にはまた笑顔になっていた。


「待ってるからねー」


リオが眉をひそめる。


亡霊は楽しそうに続けた。


「早く来てねー」


そして。


わざとらしく区切りながら言った。


「B級女性探索者の」


「リ・オ・ちゃ・ん」


一瞬の沈黙。


「あはははははははははは!!」


大笑いしながら亡霊は消えていった。


部屋に静寂が戻る。


その後もリオはしばらく固まっていた。


そして。


「なんなんだ、あんちくしょー!!」


宿中に響きそうな声で叫んだ。

【お知らせ】明日はちょっと久々の閑話ありの日。

朝06:10(閑話)と夜19:10(メインパート)の「1日2回更新」をお届けします!ぜひ朝の通勤・通学時間と、夜のゴールデンタイムにお楽しみください!(前は 7:10でしたが、6時から見てくださる方もいるようですので変更しました)


読んでいただきありがとうございます。面白いと思っていただけたら、ページ下部の【☆☆☆☆☆】の評価や、ブックマークで応援していただけると執筆の励みになります!m(_ _)m



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