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【毎日更新】亡霊の罠で女になった万年D級探索者、拾われた先で頭角を現す ~灯火の輪のリオ~  作者: アサトン


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第30話 深層の洗礼②

リザードマン達が武器を構えた。


盾。


槍。


弓。


三体は互いを守るように陣形を維持している。


リオは思わず息を呑んだ。


先ほどまでセレナ達から聞いていた話が、目の前で現実になっている。


ただ群れているだけではない。


明らかに連携していた。


その時だった。


「リオ」


セレナが静かに声を掛ける。


「はい」


「今回は積極的に参加してください」


リオは思わず目を瞬かせた。


「俺がですか?」


「ええ」


セレナは当然のように頷く。


「既に必要な説明はしたつもりです」


「後は実際に経験してください」


リオは少し戸惑った。


正直なところ、今日は学ばせてもらう気持ちになっていた。


深層は初めてだ。


まずは蒼天の軌跡の戦い方を見て覚える。


そんなつもりでいたのが、セレナにはお見通しだったのかもしれない。


「もちろん無理は禁物です」


セレナは続ける。


「ですが我々はあなたを保護するために連れてきたわけではありません」


「戦力として連れてきています」


その言葉にリオは僅かに目を見開いた。


ミアが笑う。


「大丈夫だよー」


「危なくなったら助けるから自由に動いて」


ドルクも頷く。


「思うようにやれ」


レオルも槍を構えながら言った。


「皆のいう通りだ」


「ただし、よく見ろ」


リオはゆっくりと剣を抜いた。


「……分かりました」


ならばやるしかない。


深層の戦いを。


自分自身で。


リザードマンの弓兵が矢を放った。


真っ直ぐミアを狙った一撃。


「おっと」


ミアは慣れた様子で躱す。


同時に盾役が前へ出た。


槍役も後ろから続く。


間違いなく三体が連携して動いている。


(まずは弓だ)


リオは即座に判断した。


後衛を放置するのは危険。


それは中層でも同じだ。


風魔法を発動する。


身体が軽くなる。


一気に側面へ回り込んだ。


だが。


盾役が動く。


まるで最初から予測していたかのように進路を塞いだ。


「っ!」


さらに槍役が鋭く突きを放つ。


リオは慌てて回避した。


その隙に弓役が後退する。


距離が開く。


(速い……!)


「なら……」


習得した炎魔法で弓役を狙う。


当たれば倒せるはずだ。


だが結果は同じだった。


盾役が動き、魔法を防ぐ。


その間に弓役が逃げる。


届かない。


リオは歯を食いしばった。


判断は間違っていないはずだ。


弓役は厄介だ。


だから狙う。


だが、その正しい判断が通用しない。


敵も同じことを理解しているからだ。


(これが深層……!)


敵は三体しかいない。


だが中層のリザードマンとは完全に別の存在だった。


その時。


「リオ、待て」


レオルの声が響く。


「はい!」


「いいぞ。考え方は間違ってない」


リオは思わず振り返る。


「弓役を先に潰そうとした判断も正しい」


レオルは続けた。


「だが、一人でやるのが難しいことは分かっただろう」


リオは唇を噛んだ。


確かにその通りだった。


敵は中層よりはるかに強く、そのうえ連携している。


一人で崩すのは難しい。


「一度引け」


リオは素直に後退した。


レオルは小さく笑う。


「蒼天の軌跡の戦い方を見せてやる」


セレナは苦笑した。


「リオ、わかりましたか?」


「深層でのソロの困難さを」


「そして」


「あなたはもう一人ではありません」


「蒼天の軌跡のメンバーなのです」


四人の空気が変わる。


リオは思わず言葉を失った。


「レオル、ミア」


セレナが微笑みながら言う。


「リオに見せてあげてください」


レオルは肩を竦めた。


「仕方ないな」


ミアも笑う。


「いいよー。やっちゃおうー」


ドルクが眉をひそめる。


「俺は?」


「お休み」


ミアが即答した。


「見学してて」


ドルクは肩を竦めて一歩下がった。


次の瞬間。


ミアの杖から小さな風の刃が放たれる。


威力は低い。


だが牽制には十分だった。


リザードマンの盾役が風刃を防ぐ。


そして、その瞬間。


レオルが消えた。


そう錯覚するほど速かった。


「なっ――」


リオは言葉を失う。


盾役は風刃の処理の後で反応できない。


槍役が援護へ動く。


だが間に合わない。


弓役が距離を取ろうとする。


しかし既にレオルにまわり込まれていた。


一閃。


弓役が倒れる。


振り返りざまの二撃目。


槍役が崩れ落ちる。


最後に残った盾役は孤立していた。


ほんの数秒前まで整っていた陣形は完全に崩壊している。


レオルの槍が閃く。


勝負は終わった。


静寂が戻る。


リオは目を見開いたまま立ち尽くしていた。


(瞬殺……?)


確かに見ていた。


だが理解が追いつかない。


自分が苦戦していた相手だった。


それを。


二人で。


いや。ミアも最初に魔法でけん制しただけだ。


その隙を逃さず、余裕を残したままあっという間に倒してしまった。


ミアが笑う。


「はい、おしまーい」


レオルは槍を肩に担ぐ。


「深層の魔物は強い」


「だが」


「対処法が分かっていれば怖くない」


リオは何も言えなかった。


その言葉を否定出来る要素が一つも無かったからだ。


セレナがリオを見る。


「どうでしたか?」


リオは少し考えた。


そして正直に答える。


「全然、通用しませんでした。色々教えてもらったのに」


セレナは首を横に振る。


「そんなことはありません」


「弓役を狙った判断は正しい」


「深層では後衛を潰すことは重要です」


リオは黙って聞く。


「ですが」


「敵だけを見ていました」


「常に、味方との連携を意識しなさい」


その言葉にリオは苦笑した。


反論できない。


確かにその通りだった。


「今のあなたに求めているのは遊撃です」


「敵をかき回すこと」


「隙を見つけること」


「機会を作ること」


「今はそれで十分です」


セレナは続ける。


「ですが常に我々との連携を意識してください」


「自分が何が出来るのか」


「どこへ入ればより有効なのか」


「常に考えてください」


「必要な時には、サポートを要求してください」


「それが出来るようになれば、あなたはもっと前に進めます」


リオは深く頭を下げた。


「はい」


敵だけを見ていた。


だが蒼天の軌跡は違った。


敵を見て。


仲間を見て。


戦場全体を見ていた。


だからあれほど自然に連携出来るのだ。


(まだ遠いな……)


蒼天の軌跡。


深層を攻略するA級クラン。


その背中は、思っていた以上に遠かった。


(もっと学ばないと)


そうしてリオの最初の深層戦闘は終わった。

ここまで読んでくださって本当に感謝です。

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よろしくお願いします!



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