第27話 属性魔法訓練①
中層攻略祝いから数日後。
蒼天の軌跡の拠点。
朝食を終えたリオが席を立とうとした時だった。
「はい、これ!」
ミアが数冊の本をテーブルへ置いた。
「ん?」
リオは首を傾げる。
表紙には、
『初級魔法入門』
『属性魔法基礎理論』
『探索者のための実践魔法』
などの文字が並んでいた。
「魔法の本?」
「うん!」
ミアが笑顔で頷く。
「私が昔使ってたやつ!」
「もう全部覚えちゃったから!」
リオは思わず本を見下ろした。
探索者向けの専門書だ。
決して安いものではない。
「いいのか?」
「使わないし!」
ミアはあっさり答える。
「本棚で埃かぶってる方がもったいないよ」
リオは苦笑した。
「……ありがとう」
「どういたしまして!」
その時。
セレナが静かに口を開いた。
「ちょうど良いですね」
リオが顔を向ける。
「ちょうど良い?」
「はい」
セレナは頷く。
「属性魔法の訓練です」
リオは少し身構えた。
魔法適性を調べてから数日。
そろそろそういう話が来る頃だと思っていた。
セレナはテーブルの本へ視線を向ける。
「明日までに『初級魔法入門』には一通り目を通しておいてください」
「え?」
「今日はリオは探索へ来なくて構いません」
思わず目を瞬かせる。
探索へ同行しなくて良い。
蒼天の軌跡へ加入してから初めてだった。
「基礎知識がない状態では訓練になりませんので」
淡々とした説明だった。
だが本気なのは伝わる。
「わ、分かりました……」
ミアも少し驚いていた。
「おおー」
「セレナさん本気だ」
それから申し訳なさそうに笑う。
「ごめんねー」
「教えてあげたいけど私は探索行くから」
「いや」
リオは首を振った。
渡された本を持ち上げる。
「本ありがとう」
「明日までに頭に入れてみる」
ミアは嬉しそうに笑った。
「うん!」
「頑張ってねー!」
その日の午後。
リオは自室の机へ向かっていた。
『初級魔法入門』
を開く。
最初は軽く読むつもりだった。
だが。
「……難しいな」
思わず呟く。
魔力循環。
属性変換。
魔力圧縮。
詠唱補助。
思っていた以上に理論的だった。
身体強化や感知とは全く違う。
あちらは感覚だった。
気付けば使えていた。
だが属性魔法は違う。
理論があり。
技術があり。
体系化されている。
「なるほど……」
ページをめくる。
意外だったのは面白いことだった。
元々勉強は嫌いではない。
知らない知識を覚えるのは好きだった。
しかも以前は使えないと最初からあきらめていた属性魔法が使えるかもしれない。
期待感でわくわくしている自分に気が付いた。
だから気付けば夢中になっていた。
いつの間にか外は暗くなっている。
「もうこんな時間か」
肩を回す。
疲れた。
だが。
不思議と読み込んだ本の理論が身体に入ってきた感覚があった。
翌日。
蒼天の軌跡は訓練場へ来ていた。
「昨日はどうでしたか?難しいところはありましたか?」
セレナが聞く。
リオは笑って首を振った。
「難しかったです」
「でも、自分なりには理解できた気がします」
ミアが笑う。
「へー。すごいね」
「私なんて読んでもよく分かんなかったもん」
リオは慌てて首を振った。
「いや。あくまでも自分なりにだよ」
「そもそも、魔法ってもっと感覚的なものだと思ってた」
「私も最初そう思った!」
ミアが勢いよく頷く。
その横でレオルが肩を竦めた。
「俺は途中で投げた」
「だから属性魔法は槍にまとうことしかできないんですよ」
セレナが即答する。
「おい」
ミアが吹き出した。
ドルクの肩も少し震える。
リオも思わず笑った。
セレナも微笑んでいたが、その表情が急に真剣になった。
「では始めましょう」
訓練場の空気が変わった。
「まずは火属性魔法です」
リオも表情を引き締める。
「本に書いてあったことを覚えていますか?」
リオは緊張しつつ答える。
「はい。火属性魔法のイメージは炎」
「心の中で炎をイメージして、体内の魔力を掌の一点に集め、圧縮して体外へ放出する……でしたか」
セレナは微笑んで答える。
「よく勉強してきたようですね。その通りです」
「では、やってみてください」
体内を流れる魔力。
その一部を集める。
圧縮する。
すると。
掌の前へ赤い光が現れた。
「ほう……」
レオルが声を漏らす。
セレナは黙って見ていた。
「そのまま標的へ向けて放出してください」
リオは頷く。
標的へ向けて手を伸ばした。
そして放つ。
次の瞬間。
轟音が響いた。
ドォォォォン!!
訓練用標的が吹き飛ぶ。
破片が周囲へ散る。
沈黙。
リオが振り返った。
全員固まっていた。
「……あれ?」
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