第17章 装備?
中層探索を終えて王都へ戻った頃には、空は赤く染まり始めていた。
《蒼天の軌跡》の宿へ戻る道中。
リオは小さく息を吐く。
疲労感はある。
だが以前ほどではない。
身体強化。
感知。
連携。
少しずつだが、自分でも変化を感じ始めていた。
「ねえ」
不意に、隣を歩いていたミアが声を上げた。
「リオちゃん、服それしかないの?」
「……は?」
突然の話題転換だった。
リオは思わず自分の格好を見る。
探索用の軽装。
動きやすさ重視。
最低限。
「別に普通だろ」
「普通じゃないよ!?」
ミアが目を丸くする。
「だってずっと同じじゃん!」
「探索者なんてこんなもんだろ」
レオルが苦笑した。
「いや、男ならまあ分かるけどな?」
「今のお前、どう見ても女だから」
「うるさい」
即答だった。
ミアはまだ納得していない顔だった。
「しかもサイズ合ってなくない?」
「……分からないから適当に買った」
「だめだよそれぇ!」
ミアが頭を抱える。
セレナも静かにリオを見た。
「確かに、少し身体にあってませんね。」
「今まで気づかなかったんですか……?」
「いや、探索優先だったし」
リオは少し眉をひそめる。
「そんなことより、迷宮の方が大事だろ」
空気が少し静かになった。
リオはそのまま続ける。
「早く探索進めないといけないんだ」
「俺は――」
そこで言葉が止まる。
元に戻る方法。
隠し部屋。
亡霊。
全部、頭にはある。
だが。
ミアはむっと頬を膨らませた。
「でもずっとそんな感じだと疲れちゃうよ?」
「……疲れてる暇なんか」
「あります」
今度はセレナが静かに言った。
リオがそちらを見る。
「焦る気持ちは分かります」
「ですが、消耗した状態で深層へ向かっても意味がありません」
ドルクも短く頷いた。
「長く潜るなら、休息も装備管理も必要だ」
「服もその一部だな」
「いや、服は別に――」
「別じゃない!」
ミアが即座に割り込んだ。
「女の子なんだから!」
「俺は男だ……」
レオルが吹き出す。
「まだ言ってる」
リオは本気で嫌そうな顔をした。
だがミアは完全にやる気だった。
「よし!」
「明日は買い物!」
「は?」
「服買いに行くよ!」
「行かない」
「行くの!」
「なんでだよ……」
ミアがぐいぐい迫ってくる。
逃げる。
追ってくる。
完全に圧が強い。
セレナが小さくため息をついた。
「……最低限は必要です」
「探索中に動きづらそうでしたし」
リオは少し固まった。
「……見てたんですか」
「ええ。当然です」
さらっと言われた。
レオルがにやにやしている。
「まあ確かに、今の服ちょっと無理してる感じあるな」
「胸周りとか」
「言うな!」
リオが反射的に叫ぶ。
ミアがぱっと反応した。
「やっぱり気にしてるんじゃん!」
「気にしてない!」
「いや絶対気にしてるだろ」
レオルが笑う。
リオは深くため息をついた。
なんでこんな話になっているのか。
迷宮探索の話をしていたはずなのに。
だが。
蒼天の軌跡の面々は、妙に楽しそうだった。
それが少しだけ、理解できなかった。
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