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灯火の輪のリオ ~亡霊の罠で女になったD級探索者の迷宮譚~  作者: アサトン


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第16章 連携②

その日の探索は、前回より奥まで進んでいた。


「この辺りから、中層でも危険度が上がります」


先頭を歩くセレナが静かに言う。


通路の空気が、少し違う。


湿っている。


魔力の流れも重い。


壁には古い爪痕のようなものまで残っていた。


リオは周囲を見回す。


以前の自分なら、絶対に近づかなかった区域だ。


「中層後半って感じだねー」


ミアが軽い口調で言う。


だが、その視線はちゃんと周囲を警戒していた。


レオルが肩を竦める。


「まあ、D級だと普通はこの辺来ないな」


「下手なパーティだと普通に死人出るし」


さらっと恐ろしいことを言う。


リオは少し顔をしかめた。


「……そんな危険なんですか」


ドルクが短く答える。


「中層からは、連携ミスが致命傷になる」


「浅層とは別物だ」


リオは小さく息を吐く。


以前の自分なら。


多分、この空気だけで引き返していた。


だが今は、不思議と恐怖だけではなかった。


緊張はある。


だが同時に、周囲が見える。


気配。


魔力。


通路構造。


以前よりずっと、頭へ入ってくる。


セレナが足を止めた。


「来ます」


直後。


横穴から巨大な影が飛び出した。


オーガ


通常種より一回り大きい。


しかも二体。


ドルクが即座に前へ出る。


轟音。


オーガの突進を、大盾が正面から受け止めた。


地面が揺れる。


だがドルクは下がらない。


レオルが側面へ走る。


槍が閃く。


オーガの肩を深く裂く。


「うわ、そういやこいつ妙に硬かったな!」


だがレオルは止まらない。


その瞬間。


もう一体がミアへ向かう。


リオの身体が反射的に動いた。


踏み込み。


割り込む。


剣閃。


オーガの腕が逸れる。


ミアが目を丸くした。


「リオちゃん!?」


「下がって!」


リオは短く叫ぶ。


オーガが咆哮した。


重い。


だが。


以前ほど、怖くない。


動きが見える。


重心。


踏み込み。


攻撃の流れ。


全部、分かる。


オーガが腕を振り下ろす。


リオは半歩ずれる。


最小限。


そのまま足を払う。


体勢が崩れる。


そこへ。


レオルの槍。


セレナの魔法弾。


オーガが崩れ落ちた。


直後。


ドルク側も決着する。


巨大な盾がオーガを壁へ叩きつけた。


そこへ再びセレナの魔法弾が直撃する。


爆音。


オーガが倒れた。


静寂。


リオはゆっくり息を吐いた。


以前なら。


今の戦闘にはついていけなかった。


だが今は違う。


少なくとも。


何をすればいいのかは分かる。


ミアが駆け寄ってくる。


「大丈夫!?」


「……大丈夫です」


「びっくりしたよー!」


レオルが苦笑した。


「いや、今の割り込みかなり良かったぞ」


「完全にタイミング合ってた」


リオは少し視線を逸らす。


「……たまたまです」


セレナが静かに首を横へ振った。


「違います」


「今のは、周囲を見ていないとできません」


ドルクも低く頷く。


「ちゃんと連携に入れてる」


その言葉に、リオは少しだけ黙った。


連携。


以前の自分には、縁が薄かったもの。


ソロの方が、生き残りやすかったから。


だが今は。


自然に身体が動いていた。


気づけば、《蒼天の軌跡》の動きに合わせていた。


レオルがにやっと笑う。


「いやー、もう普通にパーティメンバー感あるな」


リオは即座に首を横へ振った。


「……まだまだです」


レオルが吹き出す。


「そこは否定なんだな」


ミアもくすくす笑っている。


セレナだけは静かだった。


だがその表情は、少しだけ柔らかかった。


「ですが」


「少なくとも、ちゃんと周囲を見て戦えています」


リオは少しだけ目を見開く。


その言葉が、妙に胸へ残った。

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