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灯火の輪のリオ ~亡霊の罠で女になったD級探索者の迷宮譚~  作者: アサトン


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第18章 必要な装備

翌日。


「だから俺は別に困ってないんだが……」


王都の大通りを歩きながら、リオは心底嫌そうに呟く。


その隣では、ミアが機嫌良さそうに歩いていた。


「困ってるの!」


「服!」


「下着!」


「最低限必要!」


「探索用なら足りてるだろ……」


「足りてないの!」


即答だった。


少し前を歩くセレナが、小さくため息をつく。


「諦めてください」


「ミアは止まりません」


今日は女性陣だけだった。


レオルは「さすがに俺達いたら邪魔だろ」と笑い、ドルクと共に別行動になっている。


リオとしては、その判断だけは正しいと思った。


「セレナさんまで……」


逃げ道がない。


そして。


到着した先を見て、リオは完全に足を止めた。


「……いや待て」


「なんで女性服専門店なんだ」


ミアが不思議そうに首を傾げる。


「今のリオちゃんが着るんだから当然でしょ?」


「当然じゃない!」


「はいはい、行くよー!」


ミアがぐいぐい背中を押してくる。


逃げたい。


本気で逃げたい。


だが、セレナまで静かに頷いていた。


「今の服、動きづらそうでしたから」


「……気づいてたんですか」


「当然です。見てましたから」


さらっと言われた。


逃げ道がなかった。


店へ入った瞬間。


店員がにこやかに近づいてくる。


「いらっしゃいませ」


完全に女性客への対応だった。


リオは少しだけ顔をしかめる。


その反応を見て、ミアが笑った。


「ほらもう慣れないと!」


「慣れる気はない……」


数十分後。


リオは完全に疲弊していた。


「これは?」


「こっちは?」


「こっちの色かわいい!」


「だからなんでそんなに増やすんだよ……」


「最低限だよ!」


「絶対違うだろ……」


ミアは楽しそうだ。


セレナも実用性重視で何着か選んでいる。


「こちらの方が探索向きですね」


「動きやすそうです」


「だからなんでそんな真面目に選んでるんですか……」


そして。


問題はその後だった。


「で、下着は?」


ミアの一言で、リオの動きが止まる。


「……は?」


「今どんなの使ってるの?」


リオは露骨に嫌そうな顔をした。


「……前から持ってたやつ」


一瞬、空気が止まる。


ミアがぱちぱちと瞬きをした。


「……え?」


「それってまさか、男物を今でも使ってるってこと!?」


「別に問題ないだろ……」


「あるよ!?」


ミアが信じられないものを見る顔になる。


「じゃあ胸はどうしてるの!?」


「……どうって」


「下着は!?」


リオは露骨に嫌そうな顔をした。


「軽鎧つけてるんだから別にいらないだろ……」


数秒、沈黙。


「いらないわけないでしょ!!」


ミアの叫びが店内へ響いた。


周囲の視線が集まる。


リオは思わず顔をしかめた。


「声がでかい……」


「でかくもなるよ!」


ミアはそのままリオの腕を掴む。


「ほら! ちゃんと測るから!」


「いや待て、測るって何を――」


「サイズ!」


嫌な予感しかしなかった。


セレナが静かにため息をつく。


「諦めてください」


「その状態のまま探索を続ける方が問題です」


「セレナさんまで!?」


店員がにこやかに近づいてくる。


「では、こちらへどうぞ」


「いや、だから俺は――」


ミアがぐいぐい背中を押した。


「ほら行く!」


完全に包囲されていた。


その後。


リオは人生で初めて、下着のサイズを測られた。


「少し腕を上げてくださいねー」


「肩紐はこちらで調整しますので」


「はい、苦しくないですか?」


店員は終始丁寧だった。


だが。


丁寧すぎた。


慣れた手つきで、素早く、当然のように進んでいく。


リオには抵抗する隙すらない。


「……なんでこんなことに」


小さく呟く。


ミアは後ろで満足そうだった。


「やっぱりちゃんとした方がいいじゃん!」


「……」


「ほら、動きやすくなったでしょ?」


実際。


少し動きやすいのが悔しかった。


探索用軽装の下でも、妙な圧迫感が減っている。


リオは本気で嫌そうな顔をした。


「……認めたくない」


セレナが静かに頷く。


「必要な装備です」


「装備扱いなんですね……」


「探索者ですから」


妙に納得してしまった。


ミアがびしっと指を突きつける。


「次会った時に着けてなかったら、その場で私が着けさせるからね!」


「なんでそこまで本気なんだよ……」


リオは本気でげんなりしていた。

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