閑話:クラウスの悩み④
リオが、倒れた。
その知らせを蒼天の軌跡から受けたクラウスは、ダンジョンへ向かう予定を取りやめて、大急ぎで治療院に来ていた。
手には、見舞い品の果物。
よく考えれば、まだ意識がないというリオに果物は良くなかったかもしれない。そんなたわいもないことを考えながら、病室に案内されたクラウス。
治療師さんに聞いたところでは、身体は完全に回復している筈なのに、なぜか目覚めないということだった。
「リオ……」
昔のパーティメンバー。浅層、中層と一緒に探索した仲間。もっとも、そのころは今の姿ではなかったが。
治療院特有の、冷たく白い壁に囲まれた殺風景な部屋に一つだけ置かれた白いベッド。そこに眠るリオのすぐ横に腰かけ、眠っているその顔をじっと見つめる。
……眠っていても無茶苦茶可愛い。
よく見ると、治療師さんが脈でもとったのか、布団から手が出ている。クラウスは無意識にその手を取り、握りしめていた。
「リオ……」
再び声をかけるが、当然反応はない。
「起きてくれよ。せっかく見舞いにきたんだぜ。……お前、六十階層の階層主にやられたんだって?……凄いな……俺はまだ深層に入ったばかりのところをうろちょろしてるだけだ」
そんなことを話しかけながらクラウスは、リオの顔を見つめる。
……可愛いなぁ。
少し不謹慎かなと思いながらも、そんな風に考えてしまうクラウス。リオの中身は自分の元パーティーメンバーだが、今はすっかり変わってしまっている。
キラキラと輝く銀色の髪。彫刻のように完璧なまでに整った顔立ち。美しく整った長い睫毛。陶器のようになめらかな頬と、少しだけ冷たさを帯びた耳の輪郭。そして、今は静かに閉ざされたその瞳。
今は治療院で化粧っけはほとんどないが、それでも十分に可愛い。最後に会った時は、美容室帰りだと言っていたリオ。あの時の衝撃は今も忘れられない。
自分が夢に描いていた理想の女の子がそこにいて、微笑んでいた。
「何を考えているんだ、俺は」
クラウスは、治療院で寝たままの元親友を前にして不謹慎なことを考えている自分に腹を立てた。
「果物買って来たんだ。バカだよな。寝たきりって聞いてたのに」
そうリオに話しかけながら、そっと手を離して布団をかけ、立ち上がる。
「リオ、起きたら果物食べてくれ。あと、今度また、飲みに行こうぜ」
そう言った後、少し考えて続けた。
「できたらいつもの酒場じゃなく、今のおまえに似合いそうなもっと高い店でな」
そこまで言って、クラウスは自分の言葉に気づいたように、少し顔を赤くした。
「……また来る」
小さくそう残して、病室を後にした。
※挿絵はAIで製作したイメージ画です。
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