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【毎日更新】亡霊の罠で女になった万年D級探索者、拾われた先で頭角を現す ~灯火の輪のリオ~  作者: アサトン


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第104話 叱咤と激励と

ミアが治療院で亡霊と会話をした翌日、ミアの胸に残った不安を取り払えないまま、亡霊の言葉を共有した蒼天の軌跡は取るものもとりあえず王都にある銀翼の剣の屋敷を訪れていた。


「リオが大変だそうだな」


銀翼の剣の豪華な屋敷の客間で、一行を迎えたアレクシアがいきなり核心の話題に入った。


「ええ。リオは……」


声を震わせながら、俯き加減にセレナは説明を始めた。


「フレアストームを反射され、炎に包まれてもう少しで死ぬところだった。幸い……かどうかはわからないけど命は助かったわ。賢者カスパルによると、身体は完全に回復している筈……だそうよ」


セレナは唇をかみながら、つらそうに続けた。


「でも、目覚めない。ミア、続きをお願いできる? 直接亡霊と話したあなたから説明してもらった方が良いと思うわ」


「うん」


ミアもまた、直接話を受けた自分が説明するべきだ。そう覚悟して話を引き継いだ。


「昨晩、リオの病室に付き添っている時、リオの腕輪が光って亡霊が現れた。亡霊によると、リオはいま定着した魂が不安定になっているらしいの」


内心の不安からか、声を震わせてミアが続ける。


「定着した魂を安定させるためには、亡霊の研究室に残っているもう一つの腕輪が必要だっていってたわ。その腕輪は、亡霊の昔の研究室、今は古代遺跡のダンジョン六十階層の隠し部屋にあると……そういってたの」


「なるほど」


腕を組んだまま瞼を閉じて話を聞いていたアレクシアは確信したように小さく答えた。


「聞きたいことは色々あるが、要するに六十階層の探索を手伝えばいいってことだな? なーに、あの化け物みたいなリオがそうそうどうにかなるわけがない。アタシはそう思う」


蒼天の軌跡の面々を見渡した後、安心させるように小さく笑ってアレクシアは続けた。


「アタシで良ければ喜んで手を貸そう。ただ、銀翼の剣のメンバーはリュザードを除いて出かけていて、今はいない。手伝えるのはアタシとリュザードだけだ。それでもいいか?」


「もちろんよ。ありがとう、姉さん」


質問を受けて少し安心したようにセレナが答える。


「焦る気持ちもわかるが、王都までの馬車の旅も疲れただろう。皆は部屋で少し休んでくれ。アタシはセレナと話がある」


ミアは何かを言いかけたが、セレナの姉であるアレクシアの言葉に反論はせず、素直に頷いた。


「アレクシアさん、できるだけ早く出発しましょう」


部屋を出るときに、そう一言だけ言い残して。


蒼天の軌跡のメンバーがいなくなり、セレナと二人になった後、アレクシアが口を開いた。


「それで、具体的には何があったんだ? 意識が戻らないというのは聞いたが、なぜそうなったかは何も聞いていないぞ」


その質問を予想していたのか、セレナは下を向いたまま、言葉を選ぶように小さく話し始める。


「私が悪いの。作戦を考える時に、フレアストームで雑魚を減らしましょうかと相談されて、あまり何も考えずに同意した」


姉妹だからか内心の苦悩を隠しもせず、俯いたまま小さくセレナは続ける。


「もっと悪いのは」


その言葉を口にした瞬間、セレナの肩が小さく震えた。


「光り輝く盾を持っていたことに気づいたのに、リオを止めるのが遅れてしまったの」


セレナは唇をかんだ。


「リオはフレアストームを作戦通り発動し、ノーブル・リザードマンはそれを光る盾で反射し、リオは炎で包まれたわ」


「リオは自分の異常に強力なフレアストームを自分自身で味わったわけか」


アレクシアは小さく言う。


「良く生きてたな」


「姉さん!」


怒りとも悲しみともつかない声が、客間に響いた。


「事実だろう。それに、お前が自分だけを責めるのも違うだろ? まぁ確かに、光る盾、光る剣、そういった装備を持つ魔物が魔法を反射するのを知っていたのに共有していなかったお前にも非はある」


そう言った後、セレナを見つめ、アレクシアは続けた。


「だが、それはパーティ全体の問題だ。お前だけが責任を感じる話でもない」


「でも、姉さん。正直なところ、私は油断していたの」


セレナは再び強く唇をかみしめた。


「六十階層に到達する前のいくつかの階層。普通なら何日もかけて一層ずつ攻略していくはずの階層を、リオの感知能力であっという間に攻略してしまった。リオがいれば、大丈夫。そんな気持ちになってしまった」


目を閉じ、振り絞るようにセレナは続ける。


「私は、リーダー失格よ」


しばらくの沈黙の後、アレクシアは言う。


「まぁ、あいつの異常な能力にずっと触れていればそんな風に思うのも無理ないんじゃないか? アタシはそのおかげで今も生きてるんだがな」


アレクシアは自分がリオに助けられたことを思い出しながら小さく笑う。


「セレナ」


表情を引き締め、アレクシアはセレナを見つめる。


「目をつぶるな。前を見ろ。アタシの目を見ろ」


アレクシアの瞳は、いつもの強さとは違う、深い真剣さを宿していた。


「お前は、凄い奴だ。自覚しろ。いつもお前を見てきたアタシが言うんだ。間違いない。今回、たまたまお前は失敗したかもしれない。だが、リオが生きて戻って来たことに、お前が貢献してるんじゃないのか?


アタシはそこにいなかったが、リオが炎に包まれた後、お前なら最善を選んだんだろう。アタシはそう信じてる。それに、お前がリーダー失格なら、誰がリーダーとしてリオを助けるんだ? どうやって六十階層にいく?


アタシは喜んで手伝うとはいったが、リーダー不在のパーティに参加する気はないぞ?」


「姉さん……」


何かを振り払うように、決意した表情でセレナは続ける。


「ありがとう。そうね。私がいま落ち込んでいる場合じゃない。何としても亡霊の研究室に行ってリオを助ける。そのために、姉さんたちの力を貸してちょうだい」



挿絵(By みてみん)


※挿絵はAIで製作したイメージ画です。

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