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【毎日更新】亡霊の罠で女になった万年D級探索者、拾われた先で頭角を現す ~灯火の輪のリオ~  作者: アサトン


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閑話: フィエル

「ふぅ」


蒼天の軌跡が借り上げている宿の裏の訓練場。


フィエルは今日も訓練を重ねていた。


右足を取り戻してからは以前の剣技を取り戻すべく、朝から数時間訓練場で汗を流すのはフィエルの日課だ。


だが。


「どうも調子が出ないな……」


その言葉の通り、剣の型の確認、木人を使っての連続技の確認、どれもがいつもに比べて精彩を欠いていた。


「リオ……」


頭に浮かぶのは、今も意識が戻らない蒼天の軌跡の仲間。


外見は可愛いお嬢ちゃん。


だが、誰より強力な感知能力、無尽蔵の魔力、自分に勝るとも劣らない剣技の持ち主。


そして――


何よりも、自分の右足を取り戻し、蒼天の軌跡への復帰に尽力してくれた恩人。


「フィエルさんの力が必要なんです」


真っ直ぐに自分を見て、そう言ってくれたリオ。


いつかリオに恩を返す。そう誓ったはずだった。


それが、実際はどうだ。


探索でリオに頼り切り、階層主に魔法を反射されたときにも何もできなかった。


魔法を反射された瞬間に結界を張っていれば防げたかもしれなかった……


だが、あの時の自分はすっかり油断しきっていた。


リオを守れる位置に立つこともせず、後ろから眺めていたのだ。


それが何よりも許せない。


不意に、フィエルは聖盾の縁を地面へ突き下ろした。


聖域の檻サンクチュアリ・ケイジ!」


その瞬間、フィエルを中心に約十メトル四方に固有結界が展開された。


「二度と失敗はするな。フィエル」


自分自身に言い聞かせるように、フィエルが呟く。


「恩人を守れないようなら何のためにお前はここにいる」


そう言って意識するのは、アグレス坑道、六十階層の階層主。


ノーブル・リザードマン。


今のままではだめだ。


最初からリオを守る位置取りをしていたとしても、展開速度が遅い。


フィエルの固有結界は、魔法ではないため、詠唱は必要ない。


だが、瞬時に展開できるほど便利な能力でもない。


魔法と同様、一定時間の精神の集中が必要だ。


フィエルは聖域の檻を解除し、再び聖盾の縁を地面へ突き下ろし、発動する。


聖域の檻サンクチュアリ・ケイジ!」


聖盾を地面に突き立ててから結界が発動するまで約3秒。


これまではこの速度で十分だと思っていた。


だが、もしも同じことがあった場合、これではリオを守れない。


フィエルの持つ聖盾は、固有結界を発動するための触媒だ。


それを地面に突き立てることで聖域の檻を発動する。


だが、本当にその動きは必要なんだろうか?


そんなことを考えながら、次は聖盾を構えたまま、精神集中し、発動を試みる。


聖域の檻サンクチュアリ・ケイジ!」


だが、今度は固有結界が発動しない。


リオがいることを想定し、仮想のリオの前に位置取り、試行錯誤を重ねる。


何度も、何度も。


「先に聖盾を構え、精神集中だけをしておくのはどうだ?」


そう考えたフィエルは、盾を地面に立てて構え、精神集中を先に行う。


仮想のリオが魔法を発動した瞬間、結界を発動する。


聖域の檻サンクチュアリ・ケイジ!」


スキル名を唱えると同時に、固有結界が展開された。


「お? 今のは早かったんじゃないか?」


フィエルは、その後も何度も何度も練習を繰り返し、仮想のリオを守る動きを模索する。


1秒でも早く。


リオを守るために。


「フィエルさん!訓練中でしたか。」


その時、フィエルを探しにアレッタがやって来た。


「お昼になってもフィエルさんが食事に来ないので、セレナさんが心配してますよ?」


「あぁ。もうそんな時間だったか。すまんが一つ、手伝ってくれないか?」


いいことを思いついたとばかりに、フィエルは汗をぬぐおうともせず、アレッタに話しかけた。


「え?何をでしょう?」


「簡単な話だ。15メトルの距離から、俺を狙って通常矢を放ってほしい」


「え?え?危ないですよ?なんでそんなことを?」


アレッタはフィエルの要求が理解できず、戸惑う。


「瞬時に固有結界を展開し、誰かを守るための訓練だ」


「なるほど。じゃあフィエルさんを狙う代わりに、そこの木人を狙うのではダメですか?」


フィエルの説明を聞いて、リオの事に思い至ったアレッタが小さく微笑んで答えた。


「フィエルさんはそのすぐ横に立つ形で。それなら、僕もフィエルさんの心配をせずに撃てますから」


「分かった。それでいい」


フィエルはそう言って、訓練用の木人をリオに見立てて、その横に立つ。


「では、いきますよ!」


そういってアレッタは通常矢を木人に向けて放つ。


聖域の檻サンクチュアリ・ケイジ!」


矢が放たれると同時に展開される固有結界。


だが、矢は木人に突き刺さっていた。


アルカナ・コアクロス ―― アレッタ特製の強力なボウガン ―― の矢が五メトル進むのに約0.1秒。


フィエルの結界の発動が早くなったとはいっても、1秒近くはかかっており、矢を防げる道理はなかった。


「ダメか……」


そう呟くフィエルに、アレッタは興奮した様子を隠そうともせず、声をかける。


「凄いじゃないですか!以前よりも大幅に結界の展開速度が上がっています」


「だが、これでは反射された魔法からリオを守れない。もし同じことが起きたら……」


「そんなことはないんじゃないですか?詠唱とアルカナ・コアクロスの攻撃を一緒にするのがおかしいんですよ」


「どういうことだ?」


「アルカナ・コアクロスには詠唱はありません」


アレッタは微笑みながら説明する。


「リオさんの詠唱が終わってから、魔法が相手に届くまでの時間に合わせて結界を展開すればいいだけですよ。もちろんリオさんと一緒に練習する必要があるから、今は難しいかもしれないですが」


「そうか……確かにそうだな」


「アレッタ、ありがとう。今はセレナかミアに詠唱してもらって試してみよう」


フィエルは、満面の笑みを浮かべてアレッタに告げた。


(リオ、帰ってきたら特訓させてもらうぞ。今度は絶対にリオを守る)


そう、内心で決意しながら。


挿絵(By みてみん)


※挿絵はAIで製作したイメージ画です。

いつも読んで頂いてありがとうございます。

今日からまた三日間、朝に閑話、夜にメインストーリーを公開します。


よろしければ、ブックマークまたは☆評価を頂けると大変ありがたいです。

よろしくお願いします。m(_ _)m

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