第98話 勝利の後
「私たちの勝利よ!」
セレナが勝利宣言をした後。
全員がしばらくその場を動かなかった。
戦闘中、最後までクリスタル・アイアン・モノリスをその場に固定し続けたロガーナは、アレクシアを見つめると笑って言った。
「やったな、アレクシア」
アレクシアも即座に反応する。
「ああ。これでお返しができたってもんだ!」
その様子を見て一息つけたのか、ようやく全員が動き始める。
「リオ、良い機転だったぞ」
聖域の檻でクリスタル・アイアン・モノリスの激しい遠距離攻撃を防いだフィエルがリオを称える。
「賭けがうまくいってよかったです」
「セレナよりも先に気づいて回復の指示を出した。たいしたもんだ」
「たまたまです」
リオは笑っていつもの調子で言う。
「はははは!謙遜も過ぎると嫌味だぞ!」
それを聞いたアレクシアは豪快に笑いながら突っ込む。
「蒼天の軌跡のみんな。アタシたちを助けに来てくれてホントに助かった」
重ねるように銀翼の剣のメンバーもお礼を言う。
「ありがとう。セレナ、良い指揮だった」
セレナを見つめながらアレクシアが続ける。
「アレッタの魔導装置に素早い動き、リオの機転、フィエルのとっさの判断による防御。アタシたちも王都のAランクパーティだとかいってうかうかしてられねーな。
今回のことは完全にお前たちへの借りだ。かかった費用、救援費、転移迷宮の地図作成代、全てアタシたちに請求してくれ。
それとは別に当然お礼もする。
ただ、エリクサーだけは待ってくれ。
返したいが、入手手段がない。入手でき次第、現物で返すことを約束する。
それでどうだ」
「それはもらいすぎよ。エリクサーもこっちが勝手に使ったものだから返却はいらないわ」
苦笑しながらセレナが答える。
「そんなわけに行くか。アタシに恥をかかせる気か。受け取れ」
「わかった。わかったわ。姉さんの気のすむようにして頂戴」
姉妹がそんな会話をしている時に、クリスタル・アイアン・モノリスの亡骸の一部が消えた。
通常、ダンジョンで階層主が倒れた後にその亡骸は完全に消え、魔石と、たまに何らかのドロップが残る。
だが、クリスタル・アイアン・モノリスはその身体の大半が残ったままだ。
魔石は落としたものの、通常のダンジョン階層主ではこんなことは起きない。
「クリスタル・アイアン・モノリスは通常の魔物とは違って、もともとあった何らかの防衛機構が変異したのかもしれませんね」
アレッタが呟く。
「敵を別の迷宮に転移させるクリスタルなんかはいかにも誰かが作った防衛機構って感じでしたし、もともとあった防衛機構の部分が残ったんでしょう」
「なるほど」
リオが呟く。
「であれば次から現れる階層主はクリスタル・アイアン・モノリスとは別物の可能性もあるってことですかね」
「そう思います。確証はないですが」
「あの……」
アレッタは少し言いづらそうに続ける。
「クリスタル・アイアン・モノリスの残った身体ですが……頂いてもかまいませんか?持ち帰って是非研究したいです」
「かまわんぞ。アタシたちは別にそんなもの欲しくはないからな」
アレクシアが腕を組んだまま答える。
「かまわんが……そんな大きなものどうやって運ぶ気だ?」
(あれ、アレッタ、スキルのこと銀翼の剣にも言うつもりなのかな?)
リオがそんな風に考えていた時。
アレッタは答えた。
「あ。大丈夫です。この鞄があるので。お師様にお借りしてきた亜空間収納鞄です。なんとかこの大きさならギリギリ収納可能だと思います」
「なんだと?亜空間収納鞄??」
アレクシアは目をむいた。
「噂には聞いたことがあるが……そんなもの、どこで手に入れたんだ」
「あ、僕のものじゃないです。お師様にお借りしてきたもので」
「お師様?」
「あ、元王宮お抱え錬金術師のエルディオンです。僕のお師様です」
「なるほど……すごいものを持ってるんだな」
「では、頂きますね」
そう言ってアレッタが鞄の口をクリスタル・アイアン・モノリスの残った身体に向けた瞬間。
その大きな体が一瞬にして消え失せた。
「ありがとうございます。何かわかったら銀翼の剣の皆さんにもお知らせします」
「助かる」
アレクシアが小さく首を縦に振る。
「とりあえずそんなところか。外に出よう」
静まり返った守護者の間を見渡し、アレクシアは小さく息を吐いた。
激戦の痕が残るその広間を後に、一行は地上へ向けて足を進めた。
※挿絵はAIで製作したイメージ画です。




