閑話:セレナとアレクシア
作戦会議の翌日夜。
セレナの部屋の前に一つの影が近づいた。
「セレナ、アタシだ。今いいか?」
「もちろんよ、姉さん。私も話したかったわ」
そう言って、セレナはアレクシアを自分の部屋に迎え入れた。
「まぁ、座って」
「ああ」
そう言って二人は椅子に腰かける。
「先に姉さんの話は何?」
「お礼に決まってるだろう」
アレクシアが肩をすくめ、躊躇いがちに続ける。
「ホントに助かった。ありがとうな。しかし、エリクサーか。いったいどこで手に入れたんだ?」
セレナは微笑む。
「アグレス坑道五十五階層、ウォー・オーク・エンペラーのドロップよ」
「お前なぁ……そんな貴重なものをリオに持たせるんじゃねーよ。『回復役だ、飲め』と言われて飲んじまったじゃねーか」
「でも、効いたんでしょ?」
「まぁな。魔力も体力も、気力まで完全回復しやがった。噂には聞いていたが飲んだのは初めてだからな。正直驚いた」
「ならいいじゃない」
「お前なぁ……」
アレクシアは呆れたようにセレナを見つめた。
「それよりも、姉さん。どうかな?」
「どうかなって何がだ」
「新生・蒼天の軌跡についてよ」
「それはアタシも聞きたかったところだ。リオは相変わらず滅茶苦茶だが、あのアレッタってのはなんなんだ? 錬金術師? 戦闘もできて、迷宮の謎にも詳しい? 魔力の流れを阻害する魔道具を三日でつくるだぁ?」
アレクシアは呆れたように言いながら続ける。
「お前んところの新人は皆化け物か」
「そうよね。私もそう思うわ」
セレナが微笑む。
「それに、フィエルだ。あいつは右足を失って引退したんじゃなかったか? なんで五体満足でしれッと復帰してる?」
「霊薬を手に入れたのよ。リオのおかげでね」
「またリオか。あいつ、うちにくれ」
真剣な顔でアレクシアが言う。
「馬鹿なこと言わないで」
セレナが肩をすくめる。
「王都の方がいろんな依頼もあるし、あいつはもっと活躍できるぞ?」
「本人が望んでないわ」
「ま、それは冗談だがな。あいつを手放すリーダーがいたらそいつはただの馬鹿だ。しかし、ベルグランでお前達と別れてからそれほど経ってないってーのに、お前んところのパーティは無茶苦茶強くなってやがるな」
「そう言ってもらえると嬉しいわ」
「迷宮ではミアにも助けられた。あいつも小さいのに凄いな」
「ミアに伝えておくわ。多分喜ぶと思う」
「ところで」
アレクシアが話題を変えて続けた。
「二日後の戦闘だが、基本はセレナ、お前が総指揮をとってくれ」
「え?」
セレナは少し驚くが、アレクシアは真面目な顔のまま、静かに言葉を重ねる。
「アタシたちはお前らに助けられた身だ。しかも、迷宮の地図作成、階層主を倒すための魔道具の作成、作戦の主導は明らかに蒼天の軌跡の側にある。皆にもアタシから話はしておく。今回はお前の指揮に全員従う。もちろん、終わった後に救出と階層主討伐のお礼もする。
そういうことでいいな? 話はそれだけだ」
「姉さん……」
セレナは決意したように続ける。
「分かったわ。全力で期待に応えて見せる。クリスタル・アイアン・モノリス、必ずあの階層主を討ち倒しましょう」
※挿絵はAIで製作したイメージ画です。
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